ドメーヌ・デ・ランブレイが大きく変わる

2022年6月末、フランス、ブルゴーニュ地方、モレ・サン・ドニ村のドメーヌ・デ・ランブレイ Domaine des Lambrays は、YOU TUBEで、新しい醸造所の映像を公開。話題となっている。

ドメーヌ・デ・ランブレイはモレサンドニ村にある歴史的なドメーヌであり、グラン・クリュ「クロ・デ・ランブレイ Clos des Lambrays」の大部分の畑を所有する。単独所有化された1890年頃から1970年代まで、クロ・デ・ランブレイのワインを生産していたのはこのドメーヌのみだった。2014年、LVMH(ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー)グループにドメーヌは買収され、2019年クロ・ド・タールを離れたジャック・ドヴォージュが着任。大規模な変革に着手した。

まず、ブドウ畑で2019年から有機栽培BIO、2020年からビオディナミを開始。25度にもなる傾斜面にブドウ樹の畝が水平方向並ぶランブレイの畑は機械化が難しく、これまで行われてこなかった。そして最も大きな変化は新しい醸造所と地下カーブである。以前は大型のステンレス・タンクのみが並んでいたが、新しい醸造所では小型の温度調整機能付きの木製発酵槽が並び、細かいパーセル毎の仕込みができるようになった。そしてブルゴーニュでは珍しいステンレス・タンク・エレベーターを2基設置。タンクが上下階に移動可能で、収穫からボトリングまで重力による作業ができるようになった。これによりポンプの使用を排除することができる。そして地下カーブも大きく拡張された。

木製のオークファーメンターが並ぶドメーヌデランブレイの新しい醸造所
温度調節機能がついた木製発酵タンクが並ぶ

醸造所の建設そのものも環境に配慮された設計になっている。70㎝の厚さの壁や40㎝の厚さの屋根は断熱性が高く、冷房等の使用を抑えることが出来る。建材も環境に配慮されており、特別なコンクリート材、ドメーヌの古い建物の石材、地元コート・ドール県の石材を使用。屋根の木材はコートドール県の北部にあるシャティヨン産とこだわっている。ユネスコ世界遺産となったブルゴーニュの銘醸ブドウ畑と環境的に調和した建物となっている。

今回建設を行ったSociété Nouvelle Entreprise Prost (SNEP)は、ニュイ・サン・ジョルジュにあるドメーヌ・フェブレイ Domaine Faiveley の新醸造所も手掛けた。

LVMHのグループとなったドメーヌ・デ・ランブレイのもう一つの大きなニュースは、ブドウ畑の拡張だ。既に1993年ピュリニー・モンラッシェの2つの1級畑クロ デュ カイユレとフォラティエールを買収しているが、2021年に大きくブドウ畑を増やしている。ヴォーヌ・ロマネ・プルミエクリュ・ボーモン(0,45ha)、ニュイサンジョルジュ・プルミエクリュ・リシュモンヌ(0.89ha)、ニュイサンジョルジュ・プルミエクリュ・ミュルジェ(0.18ha)、 ニュイサンジョルジュ・プルミエクリュ・レ クラ(0.08ha)の計1.6haである。ドメーヌ・ペロ ミノから畑が移ったようだ。同時に別のドメーヌからリュショット・シャンベルタンのブドウ畑0.5haも入手。但し、これは現在の生産者が2030年頃まで耕作し、ブドウの一部をオーナーであるドメーヌ・デ・ランブレイに納める。ドメーヌ・デ・ランブレイのリュショット シャンベルタンは約2樽分のワインができる計算だが、2021年は150Lのワインしかできなかったという。

クロデランブレイのリュショットシャンベルタン 2021年
ドメーヌ・クロデランブレイのリュショット・シャンベルタン2021

一連の大規模な変革は、「クロ・デ・ランブレイの評価・価格を、隣のクロ・ド・タール以上にしたいというLVMHグループの野心によるもの」と考えて差し支えない。クロ・ド・タールは長きに渡ってクロ・デ・ランブレイよりも高い評価・価格を得てきた。そしてクロ・デ・ランブレイは2014年にLVMHグループに買収。クロ・ド・タールは2017年にフランソワ・ピノー率いるアルテミス・グループ(シャトー・ラトゥールやシャトー・グリエ所有)に買収。この2つのグループが様々な分野で激しく競争するライバルであることはよく知られている。クロ・デ・ランブレイとクロ・ド・タールは同じモレサンドニ村で隣り合っており、いつも比較される立場にある。LVMHグループとしては「ここで負けるわけにはいかない」という感じだろう。今後どうなっていくのか、非常に興味深い。

ピュリニーモンラッシェ フォラティエール 2001 ドメーヌ・デ・ランブレイ

参照:Bourgogne Aujourd’hui No162

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