アイドルになれないなら死にたい

東京ドブ川ストーリー

絵を飾ろう

かねてよりずっと思っていた。結婚したら玄関に素敵な絵を飾りたいなって。
それは決して夢、絵空事なのではなくToDoだった。必ずいつかやらなければいけないことであった。

大学のゼミの教授からも言われた気がするが、
絵は日常には役立たないが、人の心を豊かにするものだと思っている。

私はいつかとびきりお気に入りの絵を見つけようと思っていた。
心を豊かにさせたかったから。
心が豊かになれば、内面から輝くことができ、外見も自然と磨かれ、いつの間にか良き伴侶に出会えると信じて疑っていなかったから。

そして私は、とうとうお気に入りの絵を見つけて、ネットで買った。
松田聖子風に言う「ビビビ」ときた絵を買った。

現在はチンコマンシリーズや豆本シリーズをこつこつと書き続けている石川次郎さんの絵だ。

サブカルかぶれの自分が知っているくらいのお人なのに、まるで、たたき売りかのように、数日生きていくための生活費を稼ぐかのような値段で、
インターネット売り出されていた。
そこで私は3枚の絵を買った。

同じ人が書いているのに作風が全く異なるように思える。
そこがまたいい。
販売サイトには作者のコメントも一部掲載されており、この手錠がされたピアニストの絵には「おのれの弱さにといかけたかった!こんなになっても絵をかきつづける気力はありますか?と。ピアニストは強い。みならいたい。」

中でもお気に入りの絵がこれだ。タイトルは「狂犬」。

インターネットの販売サイトにはおそらくこんな一言が添えてあった。
「ちょっと生きるのがなんとなくイヤになってしまった夜に描いてしまいました。
それからやっぱり10日間位みつめつづけていたら、この絵をゆるせたので出品させて頂きました。」

そのコメントの通り、コピックで狂ったように雑にざざざざと描かれている。
その表情からは現状への怒りが露わになっているように感じられた。
その怒りは内なるものへなのか、周りへのものなのかはわからないが。
私はこの絵を何度も見ては、自分の内なる猛烈な怒りをどげんかして表象しようと思った。
何かあるごとに壁に飾ったこの絵を見ては私もなんとかしなきゃなと思った。
私もいつか許し、許されたい。

そうやって絵は豊かにしてくれる。何かを考えさせてくれる。
心が豊かになって、生活が豊かになって、いつか素敵なライフが送れますように。