日々是雑感

アニメや映画の感想を中心に雑多に述べていきます

深掘りミュークルみっくす!特別編第27話「ようこそ!お空の上のお城へ」

2024-03-14 05:56:03 | アニメ

はじめに

「ミュークルドリーミー」の物語としての転回点は26話「おさななじみにはわかるの?」だという事は以前紹介した。アニメコンテンツとしての「ミュークルドリーミー」の転回点はこの次の27話「ようこそ!お空の上のお城へ」ではないかと思う。そして今にして思えばこれが「女児向けコンテンツにおけるトレンド」の先駆けとなったのではないか。今回は「深掘りミュークルみっくす!」特別編としてそんな27話を深掘りしていきたい。

 

いつものみんな

この回からオープニングが最終バージョンに切り替わる。ただこれは今回の趣旨としてそれほど重要な要素じゃない。バージョンアップ自体はここまで何度か行われているし、もともとこのオープニングは最初から完成度が高く、物語との乖離はそれほどでもないからだ。重要なのはむしろこの話の冒頭だ。 「テストも終わった事だし、ドリーミーメイトみんなで一五山へハイキングに行こう」 これがこのエピソードの始まりとなる。ドリーミーメイトみんなとは当然ゆめちゃん、まいらちゃん、ことこ先輩、ときわちゃん、そして朝陽君の5人の事だ。そう、この回こそ「いつものみんな」が成立したエピソードなのだ。その後、いくつかの例外はあるものの基本的にはこのフォーマットで物語が展開する事となる。

 

ドリームコスチューム

色々あって、女王さまからお空の上のお城に招待される一同。妖精さんからミュークルステッキを受け取り(注)、ドレスアップしてお城へと行く事となる。その時朝陽君に女の子用の衣装があてがわれる。恥ずかしがる朝陽君(注2)に妖精さんは「ごめん、ごめん。男の子用もあるよ」と改めて衣装をあてがう。それを朝陽君は「これでもちょっと恥ずかしいけど、これなら」と受け入れる。これこそまさに前回「レギュラー男子プリキュア」を阻む壁としてきた

・他の女の子が「女の子らしい」可愛らしさを全開にした上で

・チームとしての一体感を維持しつつ

・男の子として受け入れ可能なコスチューム

そのものだった。朝陽君に最初女の子用の衣装をあてがったのには三つの効果があったと思う。一つはやはりネタとして、今一つは受け入れ不可能なものを先に提示してハードルを下げた事、最後に朝陽君が女の子用の衣装を恥ずかしがるメンタリティを持っている男の子(注3)であることを示したことだ。

このドリームコスチュームの真価が発揮されるのは「みっくす!」からだが、もしこのドリームコスチュームがなかったら、「みっくす!」の朝陽君はもっと違った形になったのではないかという推測はできる。

 

エンディング

お城で女王さまに謁見し、お城の中でおやつ探しゲームをしてみんなでお茶する。まいらちゃん、ことこ先輩、ときわちゃんの「ミュークル・スパークル・クルクル・ドリーミー」等の見どころはあるが、この回の話ははっきり言ってこれだけだ。だがこの回、ついにエンディングがアップグレードされる。ときわちゃんが、そして後ろで応援しているだけだった朝陽君の加えた5人によるCGダンス。

ここまで見てくると、一部の人たちが「プリキュア」であれこれ言ってるような事象の源流を見ることができる。しかし放映当時ほとんど話題にならなかった。こんなことを言っている私ですら「今にして思えば」なのだから。 ではこれをなしえた背景とはどんなものなのだろう。

 

背景の考察

「女の子向けコンテンツ」においては「戦う美少女」にしても「アイドル」にしても現在はチームとして一体となるか、ライバルとして切磋琢磨するというのが主流になっている。主人公だからといって他を圧倒するような特別な力が与えられるわけじゃない。ほぼ「男性」は異物として扱われるか、その存在が排除される。

ゆめちゃんだけがユメシンクロできる「ミュークルドリーミー」の特性はそんな現在の主流から少し外れている言って良い。この主人公が他を圧倒する力を持ち、それが物語をけん引するやり方は「セーラームーン」や「プリキュア」以前に主流だったものにより近い。

この手法では「そのほかのおともだち」の中に男の子がいる事は別に珍しい事じゃない。その上でこの27話は販促を軸にしたお遊び回だった。

販促といってもミュークルステッキやお空の上のお城が対象であって、ドリームコスチュームは少なくともこの時点においてはその場限りのお遊びだった。お遊びだからこそできた。でもネタに走った訳じゃ無い。だからこそより現在の主流に近づいた「みっくす!」で花開いた。

これが「サンリオアニメ」だったことも大きいだろう。サンリオは「カワイイ男の子」に多くの実績を持つ。朝陽君の存在自体がその流れの一環でしかない。そこにドリームコスチュームという新しい流れが加わったのだ。

 

まとめ

「ミュークルドリーミー」の方向性を完全に決し、ともすれば「現在のトレンド」の先駆けとなったこの回にどこまでそんな意識があったのかはわからない。だがこの回は壁を超えるためのちょっとしかきっかけにはなったと思う。次回は「現在のトレンド」をもう少し深く考えてみたい。

 

以下注釈

注:持って帰ろうとして断られた時のことこ先輩の顔がすごく印象的。その後、その後継機たる「チアふるステッキ」のメンテナンスを担当するのですが。

注2:他のみんなの反応は(7話の)「アレよりまし」だった。ま、ネタだからね。

注3:だからこそ42話の女装という決断がどれだけの覚悟をもとになされたのか分かろうというものだ。