「DAO」とは?~会社に縛られずに働く未来のカタチ

近年、働き方の選択肢が大きく広がっています。パート、アルバイト、派遣といった形に加え、リモートワークやクラウドソーシングが一般化し、副業を認める企業も増え、フリーランスを保護する法整備も進んでいます。
そんな中、これまでとは異なる新しい働き方として「DAO(分散自律型組織)」が注目されています。今回は、DAOについて、その将来性も含めて解説します。
DAOとは?
DAOは「Decentralized Autonomous Organization」の略で、「分散自律型組織」と訳されます。「ダオ」と発音します。
一般的な会社では、社長や経営陣が方針を決め、従業員がそれに従います。一方、DAOでは経営陣が存在せず、メンバーが「トークン」を保有することでDAOに参加し、全員が平等な立場で「投票」によって意思決定を行います。
例えば、以下のようなことも、すべてメンバーの投票によって決まります。
- 商品やサービスの内容
- 資金調達の方法
- 仕事の役割分担や報酬の決定
時間や場所に縛られず、主体的に働くことができるのも、DAOの大きな特徴です。
DAOとブロックチェーン
このようなDAOの運営を支える技術が「ブロックチェーン」です。
ブロックチェーンは、ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産(仮想通貨)で広く知られています。この技術により、取引履歴がネットワーク上で分散管理され、透明性と信用性が保証されます。
DAOでは、メンバーが保有する「トークン」もブロックチェーン上で管理され、DAOへの参加権や投票権の正当性が保証されます。これにより、自由度が高い一方で不安定になり勝ちなDAOの信頼性を担保します。
NFTとスマートコントラクト
DAOが発行するトークンは、個人の活動履歴や貢献度を記録するNFT(Non Fungible Token、非代替性トークン)として管理されることがあります。
これは、暗号資産のように交換を前提としたトークンをFT(Fungible Token、代替可能なトークン)と呼ぶことに対するもので、その個人に特有の(”唯一無二”の)トークンという意味です。
また、「スマートコントラクト」という技術を使えば、契約を自動化できます。例えば、一定の条件を満たせば自動的に報酬が支払われる仕組みを作ることが可能です。これにより、面倒な書面作成や仲介業者なしで迅速な取引や契約が実現できます。
DAOがもたらすメリット(労働者編)
DAOは、働く人々にとって次のようなメリットがあります。「未来の働き方」として注目を集める理由です。
- 会社に雇われずに働ける:企業に属さず自由に働きたい人に最適。
- 仕事を自分たちで作れる:受注ではなく、DAO内で新しい仕事を主体的に生み出せる。
- 上下関係がない:指揮命令系統がなく、ストレスが少ない。
- 意思決定に参加できる:全員が投票で運営に関与できる。
- 複数の仕事を掛け持ちできる:収入源を多様化して安定化できる。
- 趣味やスキルにあった仕事を選べる:生活の質(QOL)が高まる。
DAOがもたらすメリット(組織編)
DAOは、企業・自治体・大学などの組織にとっても有用です。以下、仮想も交えて事例を挙げます。
自治体での活用
新潟県長岡市の旧・山古志村では、「錦鯉」のデジタルアートをNFTとして発行し、購入者を「デジタル村民」としてDAOに参加させる取り組みを行っています。政府による「デジタル田園都市国家構想」でも触れられています。
今後、メタバースを活用したり、ふるさと納税の仕組みを応用したりなどで、地方に人や資金の流れを呼び込む活用が期待されます。
企業での活用
企業が研究開発における「オープンイノベーション」に対して、DAOを活用することも有用です。
主催する企業が、アウトプットやゴールだけを明示して、あとはDAOで運営すれば、
- 外部の多種多様な専門人材との柔軟なコラボレーション
- プロジェクト方針やパートナーの臨機応変で柔軟な組み直し
- 環境貢献などの可視化による透明性や公平性の担保
などにより、プロジェクトの成功確率が高まることが期待されます。
大学での活用
大学にとって永遠の課題とも言える、研究資金の獲得や社会実装への道を探るのに、DAOはマッチしていると考えられます。
具体的には、以下のような展開が期待できます。
- クラウドファンディングを含む柔軟かつ多様な資金調達
- 研究から事業・産業に繋ぐ社会実装を担う人材への幅広いアプローチ
- 大学を跨いだ知的財産の広域活用
DAOの課題
以上のように、DAOは魅力的な取り組みですが、次のような課題もあります。
- 理解が難しい:ブロックチェーンやDAOの概念は一般に浸透しておらず、説明に工夫が必要。
- 実績が少ない:国内でのDAOの成功事例が少なく、企業などの組織的な導入が進みにくい。
- ルールが未整備:DAOの法的な位置づけや税制の整備が進んでいない。
- 収入が不安定:フリーランスと同様、安定収入の確保が課題。
今後、DAOを活用する動きが増えていくことで、こうした課題が少しずつ解決されていくことが期待されます。
まとめ~DAOがもたらす未来
今回は、DAOについて、基本的なポイント、活用事例、メリットと今後の課題について解説しました。
DAOは、働き方や組織の在り方を大きく変える可能性を秘めています。まだまだ発展途上の仕組みですが、今後の展開によっては、より一層、柔軟性・多様性・透明性が高い社会が実現するかも知れませんね。
あなたはDAOについてどう感じましたか?ご意見を聞かせていただければ幸いです。