本ページでは、繰越欠損金と税効果会計についてまとめたい。
繰越欠損金とは
まず、法人税額は益金−損金で計算される課税所得に法人税率を乗じることで算出される。しかし、益金−損金がマイナスになった場合、この額のことを欠損金という。
一定の条件の下で、この欠損金を将来に繰越して、将来の課税所得と相殺することができる。繰越した欠損金のことを繰越欠損金という。繰越欠損金によって将来の課税所得を低くできるので、法人税額を小さくできるというメリットがある。
将来の法人税額を減少させる効果があるため、繰越欠損金は「税効果会計」の対象であるとされる。税効果会計の基本的な考え方については以下のページを参照されたい。(※繰越欠損金は会計上の数字ではなく、会計上の利益と税法上の課税所得に差異を生じさせるものではないが、将来の課税所得を減少させる効果を持つ点で、将来減産一時差異と同等のものとみなすことができ、よって税効果会計の対象に含まれる。)
会計処理
例えばある年に繰越欠損金100を計上したとする。法人税が20%とすると、繰延税金資産として100×20%=20だけ資産計上し、相手勘定として法人税等調整額を計上する。翌期に黒字転換し、課税所得200が発生した場合、法人税額は200×20%=40となるが、繰延税金資産として計上していた20を切り崩すことで法人税額を20とすることができる。
しかし、そもそも将来において十分な課税所得(要するに黒字)がなければ、繰延税金資産と相殺することはできない。このとき、この繰延税金資産は回収可能性がないという。回収可能性がないとき、繰延税金資産を計上することはできない。
評価性引当額
例えば、将来の課税所得の見通しから予想される法人税額が100だとする。一方で、繰越欠損金は150だとする。そもそも払う税金の見込みが100しかないので、それ以上の額を相殺することはできない。よって、繰越欠損金の全額(150)は繰延税金資産として計上することはできない。この差額を評価性引当額という。
(参考):
わかりやすい解説シリーズ「税効果」 第4回:繰延税金資産の回収可能性 | 解説シリーズ | 企業会計ナビ | EY Japan