<金融アトラス/a>

金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

なぜ限界代替率は限界効用の比と等しくなるのか

2つの財(財A、財B)の選択を考えるとき、限界代替率は限界効用の比と等しくなる。

限界代替率とは、「財Aを1単位増やした時、同じ効用水準を維持するために、財Bを何単位あきらめなければならないか」を示している。消費量をXとすると、△X_B/△X_A

の絶対値として表せる。

 

一般的なケースにおいては、財Aの消費量が少ないうちは、追加的に1単位財Aを消費したときの限界効用(平たく言えば追加的なありがたみの大きさ)のは大きいので、効用を維持するためには財Bをかなりの量あきらめる必要があるが、財Aを比較的たくさん消費している段階でさらに追加的に1単位財Aを消費したとき、追加的なありがたみは小さくなるので、効用を維持するにしても財Bをそれほどあきらめなくてよい、ということになる。これは、無差別曲線が原点に向かって凸である(凸性)理由である。

 

限界効用は、上述のとおり、平たく言えば追加的なありがたみの大きさを示していると言ってよいだろう。この限界効用の増加は、消費量をおおきくするにつれて次第に減少していく(限界効用逓減の法則)。身近な例でいえば、ビールの1杯目はとてもおいしく感じるが、2杯目3杯目、、と飲み進めていくうちに次第に飽きてきてしまう。

 

2つの財の消費からなる効用を考えた時、限界的な効用の変化は、以下の数式で表される。

それぞれの財(A,B)が1単位上昇したときの効用の変化に消費量の変化をかけあわせたものが、トータルの限界効用となる。無差別曲線(線形ではない)であったとしても、微小な財の変化であれば上記のように限界効用を線形の式に近似することができる。

 

ここで、財Aの消費量の上昇と財Bの消費量の減少を同時に行い、両者の効果を相殺して、限界効用を0にする場合を考える。このとき、左辺のduは0になるので、これを式変形すると、

となる。

上記の式が成り立つのは、「限界効用を0としたとき」すなわち効用の水準を一定に保った場合である。効用を一定に保つような財Aと財Bの比率(左辺)は、限界代替率に他ならない。

 

右辺は限界効用の比になっていることが分かる。

右辺にマイナスがついているが、左辺の限界代替率は通常マイナスなので、左辺の絶対値は限界効用の比に等しいと解釈することができる。

 

以上より、限界代替率は限界効用の比と等しくなる。

 

(参考)

神取道宏(2014)「ミクロ経済学の力」日本評論社