同窓会二次会のカフェにて、



その日は来ていなかった、とある同級生の話になった。





「そういえば、あいつすごいことになってたぞ。

 どこかソコソコ大きい会社のCEOになってたぞ」

「おお、本当だ」


スマホで彼の名前を検索すると、

そこには「〇〇社 CEOに、我々は××氏を迎えました」的なプレスリリースと、腕組みをして不敵に微笑む彼の姿が。



※イメージです


記憶の中の彼は、いつでもめちゃくちゃモテる男だった。


「あんたも好きだったんじゃないの?」

と問われると、


「人の懐に入り込むのが

 すごくうまい人でしたので、

 グッと来なかったと言えば嘘になります。

 でも、いつでも彼は

 モテモテなのを見てましたから、

 まあ、やめとこう、と思ってました」


と答えるしかない。


あの頃。

思春期らしく多情で、常にほんのり色んな人に恋をしていたけれど、だいたいが

「まあ、やめとこう。胸に収めておこう」

で収まる範疇だった。


1人の人に入れ込まない、というとまるですごいプレイガールのようだけど、勝手に胸に収めていただけだった。


唯一、好きだと周りに言い散らかしていた相手はいるけれど、それは

「あっ!歩いてる❣️」

みたいな、まあ遠巻きに眺めたいだけと言うか。


こんなころからそんなんだから、

こんなんなっちゃったんだよ。


何も周りに言い散らかす必要はないけど、

もっと素直に、


××くん、今のすごい懐に入り込んできたなあ、

グッと来たわ、


と言えば良かった。本人たちに、その都度。本当に。

(いや、当時ならこんな表現じゃなかった。

 いくらなんでも、もっと女子高生らしい言い方が出来たはず…「今のドキッとした」とかかなあ)


なんと出し惜しみしてきたことだろう。


その話題の前に私が話していた相手が

「〇〇ちゃんめっちゃ可愛かったよなあ」

「俺は昔△△ちゃんに振られてショックで体調崩した」

みたいなことばっかり言ってる、出し惜しみしなさ過ぎる惚れっぽい人だったこともあり

(「相手のためにも、もうちょっと出し惜しみすれば?」と思うほどに…)

余計にしみじみとそう思った。


そして、くだんのモテモテCEOの彼について、

出席者の1人が、


「俺は3年間、

 あいつとかなり仲良かったはずなんだけど、

 あいつという人間はよくわからん。

 人当たりはいいけど、

 最後まで底が見えなかった。

 ただ、当時は、闇が深くてそれを

 誰にも見せないのかと思ってたけど、

 実は闇も何にもなくて、

 全部見せててああだったのかもしれない」


と話していたことに


「ああ、めっちゃわかる。

 なんだか、決して人にこれ以上は

 踏み込ませない、みたいなところあったけど、

 もしかしたらただあのまんまの人だったのかもね」


と心から納得した。


来てなかったからって失礼なこと言ってる気もするけれど、この予測が仮に当たってたとしても、なおのことたいしたもんだなあと尊敬するので許して欲しい。


それはそれとして、これ以上は踏み込ませません、というきっぱりとしたゾーンがあるように見えた(本当にあったのかもしれないけれど)、あの時の彼のそのファンタジー、そしてふとこちらには踏み込んでくるその距離の詰め方には、やっぱり胸がきゅんとした。モテるわけだ。




夢を見せるのがうまいってことだったのかしら。

あの頃、とってもグッと来たよ。

と、今更ながら素直に言っておきます。当時の私のために。



一部フェイクですが、この話、我ながら、あまりにもこの本のまんまだなあ…と驚愕している。







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