カジヒデキ 『Being Pure At Heart』

 

Label: Blue Boys Club/AWDR/LR2

Relase: 2024/04/24

 

 

Review

 

渋谷系の代表的なシンガーソングライター、カジヒデキは「Being Pure At Heart」で明確に「ネオ・アコースティックに回帰してみようとした」と話している。ネオ・アコースティックとは1980年代のスコットランドで隆盛をきわめたウェイブだ。このウェイブからは、ベル・アンド・セバスチャンという後の同地の象徴的なロックバンドを生み出したにとどまらず、Jesus And Mary Chain、Primal Scream等、その後のUKロックの10年を占うバンドが多数登場したのだった。

 

渋谷系は2010年代頃に、海外でもストリーミングでカルト的な人気を獲得したことがある。この渋谷系とは、複数のジャンルのクロスオーバーで、ギターロックはもちろん、小野リサのボサノバ、ラウンジジャズ、チルアウト、そして平成時代のJ-POP等、多数のジャンルがごちゃまぜになり、スタイリッシュでアーバンな雰囲気を持つ独自のサウンドとして確立された。現在のクロスオーバーやハイブリットという時代を先取りするような音楽であったことは疑いを入れる余地がない。渋谷系はかなり広汎なグループに適応され、その象徴的な存在であるサニーデイ・サービス、小沢健二、カジヒデキがこのジャンルをリードした。当時の日本国内でのヒットチャートでも宇多田ヒカルや椎名林檎といったヒップな存在に紛れるようにしてカジヒデキの楽曲も必ず上位にランクインしていたのだった。

 

『Being Pure At Heart』はシンプルにいえば、渋谷系という固有のジャンルを総ざらいするようなアルバムである。そして少なくとも、忙しない日常にゆるさをもたらす作品となっている。北欧でレコーディングされたアルバムであるが、全般的に南国の雰囲気が漂い、トロピカルな空気感を持つ複数のトラックがダイヤモンドのような輝きを放つ。オアシスの「Be Here Now」に呼応したようなタイトル「Being Pure At Heart」は忙しない現代社会へのメッセージなのか。 


アルバムの冒頭を飾るタイトル曲はまさしくネオ・アコースティック/ギター・ポップの王道を行くナンバーといえる。エレアコのイントロに続いて、1990年代と変わらず、カジヒデキは快活なボーカルを披露する。そして、小山田圭吾やスカートの澤部渡のような軽快なカッティングギターを元にして、精細感のあるボーカルを披露する。ギターサウンドは、お世辞にもあたらしくはないけれど、逆に核心を付く音楽的なアプローチの中に迷いがないため、ことさら爽快なイメージを作り出す。そしてThe Pastelsを思わせるメロディーを込め、聞き手を平成時代のノスタルジアの中に誘う。カジヒデキは口ずさめるシンプルなメロディーの流れを意識し、それらを誰よりも軽快に歌う。それにカラフルな印象を付加しているのが、女性ボーカルによるコーラス。

 

続く、「We Are The Border」はコーネリアスのマタドール在籍時代の『Fantasma』のダンサンブルでアップテンポなナンバーを継承し、それにカジヒデキらしいユニークな色合いを加えている。この曲もまた渋谷系のスタンダードな作風となっているが、そこに恋愛の歌詞を散りばめ、曽我部恵一のような雰囲気を加えている。サニー・デイ・サービスと同様にカジヒデキも甘酸っぱいメロディーを書くことに関しては傑出したものがある。それはアルバムのタイトルにあるように、純粋な気持ちやエモーションから作り出される。歌詞の中では、クリスマスや賛美歌について言及されるが、それらが楽曲が持つ楽しげなイメージと見事な合致を果たしている。つまり、カジヒデキのソングライティングの秀逸さがサウンドプロデュースとぴたりと一致している。


「April Fool」ではオープナーと同様に牧歌的なスコットランドのギター・ポップへと回帰している。これらのおおらかな気風はこのアーティストにしか作り出せないもので、甘いメロディーと融合する。手拍子や変拍子のリズムの工夫や移調の工夫を随所に散りばめながら、カラフルなサウンドを作り出す。ギターのカッティングの決めの箇所をリズム的に解釈しながら、最終的にタイトルのサビへ移行する。この瞬間には奇妙な爽快感があり、開放的な雰囲気もある。


続いてカジヒデキは、そらとぼけるように、「エイプリル・フール」と歌った後、「君が好きだよ、それもうそのはずだった」と カジヒデキ節を込め、続くヴィネットへと移行していき、「人生は夏草のように」と松本隆を思わせる抒情を重視した淡麗な歌詞を軽やかに歌いこむ。メロディーやリズム、実際の歌が歌詞の流れとともに音に拠る情景を呼び覚ます。これこそJ-POPにしか求められない要素で、アーティストはそれを誰よりもシンプルにやってのける。

 

「Peppy Peach」はチルアウト/チルウェイヴに舵をとっている。 シンセを中心に作り出したリズムに同じくシンセのテクスチャーでトロピカルな雰囲気を生み出しているが、これは細野晴臣の1973年の「Hosono House」の日本の音楽が未だ歌謡曲とポップスの中間にあった時代の作風を思わせる。歌詞も面白く、ちょっとおどけたようなアーティストの文学性が堪能出来る。他の曲と同じように、''アイスクリーム''等のワードを織り交ぜながら、甘酸っぱい感覚のメロディーを作り出す。その中に、ボサノヴァのリズムを配しながら、コーラスの導入を通じて、多彩なハーモニーを作り出す。「いつもそばで、I Love You、触れた〜」と歌う時、おそらくJ-POPの言葉運びの面白さの真髄とも言うべき瞬間が立ち表れる。”英語を通過した上での日本語の魅力”がこの曲に通底している。ある意味でそれは日本のヒストリアのいち部分を見事に体現させていると言える。

 

「NAKED COFFE AFFOGATO」はYMOのレトロなシンセポップを思わせ、カッティングギターを加え、ダンサンブルなビートを強調させ、モダンな風味のエレクトロに代わる。前曲に続きアーティストしか生み出せないバブリーな感覚は、今の時代ではひときわ貴重なものとなっている。そこにお馴染みの小山田圭吾を思わせるキャッチーなボーカルが加わり、楽しげな雰囲気を生み出す。続く「Looking For A Girl Like You」はギター・ポップとネオ・アコースティックというスタイルを通じて、高らかで祝福的な感覚を持つポップソングを書き上げている。アレンジに加わるホーンセクションは北欧でのレコーディングという特殊性を何よりも巧みに体現している。


 

プレスリリースにおいて、カジヒデキはネオ・アコースティックを重要なファクターとして挙げていた。でも、アルバムの魅力はそれだけではない。例えば、「Don' Wanna Wake Up!」では平成時代に埋もれかけたニューソウルやR&Bの魅力を再訪しており、マリンバのような音色を配し、トロピカルな雰囲気を作り出す。これらのR&Bとチルウェイブの中間にあるようなモダンな空気感を擁するサウンドは、アメリカのPoolside、Toro Y Moi、Khruangbinと比べても何ら遜色がない。そこにいかにもカジヒデキらしいバブリーな歌詞とボーカルはほんのりと温かな気風を生み出すのである。


以後の収録曲「Summer Sunday Smile」と「クレールの膝」は渋谷系のお手本のような曲である。少なくともダンスビートを重視した上で、メロディ性を生かした曲は現在のミュージックシーンの最中にあり新鮮な印象を覚える。それはまたプリクラやビートマニアのような平成時代のゲームセンター文化を端的に反映させたようなエンターテイメント性を重んじたサウンドなのである。 


もうひとつ注目しておきたいのは、このアルバムにおいてアーティストはチェンバーポップやバロックポップの魅力をJ-POPという観点から見直していることだろうか。例えば「Walking After Dinner」がその好例となり、段階的に一音(半音)ずつ下がるスケールや反復的なリズム等を配し、みずからの思い出をその中に織り交ぜる。そして、カジヒデキの場合、過去を振り返る時に何らかの温かい受容がある。それが親しみやすいメロディーと歌手のボーカルと合致したとき、この歌手しか持ちえないスペシャリティーが出現する。それはサビに表れるときもあれば、またブリッジで出現するときもある。これらの幸福感は曲ごとに変化し、ハイライトも同じ箇所に表れることはない。人生にせよ、世界にせよ、社会情勢にせよ、いつもたえず移り変わるものだという思い。おそらくここに歌手の人生観が反映されているような気がする。そしてまた、この点に歌手の詩情やアーティストとしての感覚が見事に体現されているのだ。


カジヒデキの音楽を最初に聴いたのは小学生の頃だった覚えがある。当時はオリコンチャートやカウントダウンTVのような日本のヒットチャートの一角を担うミュージシャンという印象しかなかったが、今になってアーティストの重要性に気がついた。カジヒデキは、誰よりも親しみやすいメロディーを書いてきた。そして、子供でも口ずさめる音楽を制作してきたのだった。そしてこのアルバムでも、それは不変の事実である。これらのソングライターとしての硬派な性質は、むしろ実際の柔らかいイメージのある音楽と鋭いコントラストをなしている。

 

アルバムの終盤でもシンガーソングライターが伝えたいことに変わりはない。それは世界がどのように移り変わっていこうとも、人としての純粋さを心のどこかに留めておきたいということなのだ。「君のいない部屋」では、切ないメロディーを書き、AIやデジタルが主流となった世界でも人間性を大切にすることの重要性を伝える。クローズを飾る「Dream Never End」は日常的な出来事を詩に織り交ぜながら、シンプルで琴線に触れるメロディーを書いている。



85/100
 
 
 
Best Trackー「Dream Never End」 
 

副都心ポップを標榜するニューシングル「One More Chance」を本日4/24にリリースします。

海外でカルト的な人気を誇るCRYSTALが、副都心ポップを標榜する新曲「One More Chance」を本日(4/24)にデジタルリリースします。同時公開されたCM動画を下記よりチェックしてみて下さい。

 

三宅亮太と丸山素直によるシンセ・デュオ”CRYSTAL”は、日本ではそこまでではないが、世界的に知る人ぞ知るデュオだ。フランスの高名なエレクトロデュオ”JUSTICE”にその才能を見初められ、Thundercatの全米ツアーの帯同の他、ブレイン・フィーダーのFlying Lotusの主催するオンラインライブ企画”Brainfeeder THE HIT”に長谷川白紙とともに出演を果たした。

 

ニューシングル「One More Chance」は副都心ポップを掲げるシンセデュオらしく、80sシティーポップをベースに、TRFとNew Orderのシンセポップサウンドを変幻自在にクロスオーバーする。



前作アルバム『Reflection Overdrive』で注目を浴びたCRYSTAL。「AUTUMN STORY 秋物語」のフォローアップとなる「One More Chance」は、過去の想い出にヒントを得て制作されたタイムリープもの。

 

楽曲は、Ikonikaとのコラボで披露されたピアノ・ハウスを進化させ、80年代のイタロハウスやエレポップ、ユーロビートのエッセンスを起点としつつ、アシッドなベース、そして大胆に使用された”Prophet-6”のシンセサウンドが世代を飛び越え90年代のバブリーな空気感を醸し出す。

 

運命や過去の想い出に焦点を当てた情感豊かな歌詞、ダンサブルで刺激的なメロディー、もはや副都心かさえもつかない大橋ジャンクション・・・。ストーリーテリング風の語りに、遂に全貌を現した丸山素直のクリアーなボーカル。新しい挑戦もほどほどに、未来へのサプライズとポジティブなエネルギーが余すところなく凝縮されたクリスタルらしい素敵なトラックに仕上がった。

 

 

 「One More Chance」

 

 

 

CRYSTAL - One More Chance- New Single



 



Label: FLAU
DIGITAL発売日:2024年4月24日



Tracklist:

1. One More Chance

 

 

配信リンク: https://flau.lnk.to/CRYSTAL-OneMoreChance 

 



CRYSTAL:



三宅亮太と丸山素直によるシンセサイザーデュオ。JUSTICEのGaspard Auge、Surkinにより見出され、Ed Bangerと共にフレンチ・エレクトロを牽引した伝説的レーベル”Institubes”からデビュー。

70年代後半から80年代のニューウェーブ、インダストリアル、テクノ、エレ・ポップ、ゲームミュージックに影響を受けたサウンドで注目される。

Teki Latex、Ikonikaとのコラボレーションを経て、2015年には日本の”FLAU”よりファーストアルバム「Crystal Station 64」を発表。

その名の通りクリスタル・カラーな抜群のポップセンス、ジャン・ミッシェル・ジャール、トーキング・ヘッズらへの捻じれたオマージュ満載のシンセサイザー・サウンドが好評を得ている。

過去3度のパリ公演では、Para One、Chateau Marmont、Boys Noizeらと共演、近年はThundercatの全米ツアー、Sonar Festival、Taico Club、Rainbow Disco Clubに出演。Flying Lotus presentsのtwitchプログラム「Brainfeeder The Hit」にスペシャルゲストとして登場。Jessy LanzaのDJ Kicksに楽曲がフィーチャーされ注目が上昇中。一方、三宅亮太はSparrowsとしても活躍し、Fazerdaze、Casey MQらをフィーチャーしたアルバム「Berries」を発表している。



Real Estate(リアル・エステイト)が米国の深夜番組”Jimmy Kimmel Live!”の最新回に出演し、シングル「Water Underground」のパフォーマンスを披露した。比較的落ち着いているが、どっしりとした安定感のある演奏はこのバンドならでは。ライブ・パフォーマンスの模様は以下よりご覧下さい。


テレビで初披露された「Water Underground」は、今年2月にDominoから発売された6枚目のアルバム『Daniel』に収録。シングル「Haunted World」「Flowers」も併録されている。

 

リアル・エステイトは2010年代のオルタナティヴロックの黄金時代を象徴するバンド。最初期のセルフ・タイトル、『Days』、『Atlas』に続いて、ファンにとって力強いカタログ『Daniel』が加わった。

 


「Water Underground」

 



St. Vincentがニューアルバム『All Born Screaming』の最終シングル「Big Time Nothing」を配信した。ムーグ・シンセを導入したダンサンブルなポップナンバーだ。

 

マイケル・ジャクスンの『Thriller』のサウンドに対するオマージュが示されている。勢いを失った商業音楽にもう一度、MTVの全盛期の繁栄を取り戻すべく、クラークは奔走する。一つの反復的なベースラインを元にして、渦巻くようなファンクソウルがエナジーを上昇させ、無から炎を作り出す。それはアーティスト自身の存在性を焦がすような強烈な熱量を包含しているのである。

 

セント・ヴィンセントはファーストシングル「Broken Man」、デイヴ・グロールをドラムに、ジャスティン・メルダル=ジョンセンをベースに迎えたセカンド・シングル「Flea」を公開した。


アニー・クラークはこのアルバムをセルフ・プロデュースし、ミックスはシアン・リオーダンが担当した。このアルバムには、ケイト・ル・ボン、レイチェル・エクロース、ジョシュ・フリース、マーク・ギリアナ、ステラ・モグザワ、デヴィッド・ラリッケも参加している。


クラークは以前のプレスリリースで、アルバムについてややミステリアスに語っている。「感情的には、自分の心が本当は何を言っているのかを知るために、一人で森の中を長く歩かなければ辿り着けない場所がある。このアルバムがリアルに聞こえるのは、それがリアルだからなの」

 

St.Vincentの新作アルバム『All Born Screaming』は今週末、4月26日にVirgin Musicからオンセール。


 

「Big Time Nothing」-Best New Tracks



St.Vincent    『All Born Screaming』


Label: Virgin Music

Release:  2024/04/26


Tracklist:

1. Hell is Near
2. Reckless
3. Broken Man
4. Flea
5. Big Time Nothing
6. Violent Times
7. The Power’s Out
8. Sweetest Fruit
9. So Many Planets
10. All Born Screaming [feat. Cate Le Bon]


Pre-order(INT)

https://link.fans/st-vincent


 


ロンドンを拠点に活動するシンガーソングライター、mui zyu(エヴァ・リュー)は、2ndアルバム『nothing or something to die for』の4作目のシングル「the rules of what an earthling can be」を配信した。

 

「the mould」「everything to die for」「sparky」のフォローアップとなる。リウのダマ・スカウトのバンドメイト、ダニー・グラントが監督したビデオを下記よりチェックしてみよう。


この曲について、リューはこう語っている。「この残酷な世界では、人々の身体は取り締まられ、夢は打ち砕かれる。ありがたいことに、エイリアンは正しいドアを選ぶ手助けをしてくれる」

 


「the rules of what an earthling can be」

 

ロサンゼルスのシンガーソングライター、Marina Allen(マリーナ・アレン)は三作目のアルバム『Eight Pointed Star』の2ndシングル「Swinging Doors」で戻ってきた。インディーフォークを主戦場とするシンガーだが、この曲はロックソング風のアプローチを図っている。

 

「スウィンギング・ドアーズ "は、シックス・フラッグスの行列や初デートの車の中で感じる蝶のような」人生の新たな章の興奮を楽しむものだと、アレンは声明で説明している。「リスクへの頌歌であると同時に、信頼への頌歌でもある。このアルバムでは、これまで以上に愛について書いた。必ずしもロマンチックな愛でなくてもいい。Swinging Doors'は信頼の落下でもある。でも、自己反省の代わりに、その意味を体験的に発見することをテーマにしているんだ」


マリーナ・アレンの新作アルバム『Eight Pointed Star』はFire Recordsから6月7日に発売予定。最初のリードシングルとして「Red Cloud」が先行配信されている。

 

 「Swinging Door」

©Louie Kovatch


今回、DIIVは、斬新なリリース方法に打って出た。ストリーミングで楽曲を配信せず、独自サイトでトラックを公開したのだ。謎のウェブサイトFIBW.orgを通じて、近日発売予定のアルバムのタイトル曲「Frog in Boiling Water」をリリース。

 

この曲は、先行配信された「Brown Paper Bag」「Everyone Out」のフォローアップとなる。試聴はこちらから。


DIIVのニューアルバム『Frog in Boiling Water』は、”茹でガエル”というメタファーがやや自虐的に機能する。しかし、彼らはそれを個人だけではなく、全体的なニュアンスと捉えているらしい。終末の世界をどのように生きるべきなのか。生きるというより、サヴァイヴァルに近い。答えは見つからないが、それぞれが自力で探していくべきなのか。

 

タイトルトラックは、自重作用により崩壊の最中にある世界のスナップショット。「残虐行為の連鎖が、あまりにも茫然自失で無力に見える人々の上に押し寄せてくる。富は引き出され、人々は苦しむ。唯一の明白な解決策は・・・」--と、メッセージの残りは黒く塗りつぶされている」


新作アルバム『Frog in Boiling Water』はファンタジー・レコードから5月24日にリリースされる。


ニューヨークのシンガーソングライター、ミツキがニューアルバム『The Land is Inhospitable and So Are We』 「Star」の新しいビデオを公開した。ビデオの監督はMaegan Houangが手掛けた。ミツキは同時に世界ツアーの日程を発表した。今後のアーティストのツアー日程は以下の通り。


HouangはプレスリリースでMVについて次のように語っている。「ミツキと私が過去に一緒に制作した、より物語的でコンセプト重視のビデオとは異なり、このビデオは、私たち全員が経験する印象的な循環を表現したかった。我々の人生は、光と闇の間で揺れ動き、永久のものは何もない無限のサイクルで繰り返される。最高の瞬間はつかの間だが、悪い瞬間もまたつかの間だ」


ミツキは『The Land is Inhospitable So Are We』の曲を何年もかけて一気に書き上げた。このLPは主にナッシュビルのボム・シェルターでレコーディングされ、パトリック・ハイランドが共同プロデュースした。このアルバムはMUSIC TRIBUNEのアルバムオブザイヤーに輝いたほか、レビューでも⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️を獲得。



「Star」





Mitski 2024 Tour Dates:


Sat. Apr. 27 - Edinburgh, UK @ Usher Hall ✺ 

Sun. Apr. 28 - Edinburgh, UK @ Usher Hall ✺ 

Wed. May 1 - Manchester, UK @ 02 Apollo ✺ 

Sat. May 4 - Dublin, IE @ 3Arena ✺ 

Mon. May 6 - Wolverhampton, UK @ The Civic at the Halls ⁂ 

Wed. May 8 - London, UK @ Eventim Apollo ⁂ 

Thu. May 9 - London, UK @ Eventim Apollo ⁂ 

Fri. May 10 - London, UK @ Eventim Apollo ⁂ 

Sat. May 11 - London, UK @ Eventim Apollo ⁂ 

Tue. May 14 - Brussels, BE @ Cirque Royal ✥ 

Wed. May 15 - Brussels, BE @ Cirque Royal ✥ 

Fri. May 17 - Paris, FR @ Le Grand Rex ✥ 

Sat. May 18 - Paris, FR @ Le Grand Rex ✥ 

Mon. May 20 - Amsterdam, NL @ Royal Theater Carré ✥ 

Tue. May 21 - Amsterdam, NL @ Royal Theater Carré ✥ 

Fri. May 24 - Berlin, DE @ Tempodrom ✥ 

Sat. May 25 - Berlin, DE @ Tempodrom ✥ 

Tue. May 28 - Frankfurt, DE @ Jahrhunderthalle ✥ 

Thu. May 30 - Zürich, CH @ Theatre 11 ✥ 

Sat. Jun. 1 - Barcelona, ES @ Primavera Sound

Tue. Jun. 4 - Madrid, ES @ Noches Del Botanico

Thu. Jun. 6 - Porto, PT @ Primavera Sound

Sun. Aug. 18 - London, UK @ All Points East Festival at Victoria Park [Headline Performance]

Tue. Aug. 27 - Detroit, MI @ Masonic Temple Theatre ★ 

Wed. Aug. 28 - Detroit, MI @ Masonic Temple Theatre ★ 

Fri. Aug. 30 - Columbia, MD @ Merriweather Post Pavilion ★ [SOLD OUT] 

Sat. Aug. 31 - Columbia, MD @ Merriweather Post Pavilion ☾ [SOLD OUT] 

Sun. Sept. 1 - Columbia, MD @ Merriweather Post Pavilion §

Tue. Sept. 3 - Cleveland, OH @ Jacobs Pavilion ★ [SOLD OUT] 

Fri. Sept. 6 - Atlanta, GA @ The Fox Theatre ★ 

Sat. Sept. 7 - Atlanta, GA @ The Fox Theatre ★ 

Sun. Sept. 8 - Atlanta, GA @ The Fox Theatre ★ 

Tue. Sept. 10 - Sugar Land, TX @ Smart Financial Centre ▽ 

Thu. Sept. 12 - Austin, TX @ Moody Center ✦ 

Fri. Sept. 13 - Grand Prairie, TX @ Texas Trust CU Theatre ▽ 

Sat. Sept. 14 - Grand Prairie, TX @ Texas Trust CU Theatre ▽ 

Tue. Sept. 17 - Morrison, CO @ Red Rocks Amphitheatre ✽ 

Wed. Sept. 18 - Greenwood Village, CO @ Fiddler’s Green Amphitheatre ✽ 

Sat. Sept. 21 - Portland, OR @ Moda Center ✽ 

Mon. Sept. 23 - Berkeley, CA @ Greek Theatre ◇ [SOLD OUT] 

Tue. Sept. 24 - Berkeley, CA @ Greek Theatre ◇ [SOLD OUT] 

Wed. Sept. 25 - Stanford, CA @ Frost Amphitheater ◇ 

Sat. Sept. 28 - Los Angeles, CA @ Hollywood Bowl ∞


✺ w/ Richard Dawson 

⁂ w/ Miya Folick 

✥ w/ Iceage 

★ w/ Lamp 

▽ w/ Arlo Parks 

✦ w/ Ethel Cain 

✽ w/ Laufey 

◇ w/ Wyatt Flores 

☾ w/ Alvvays 

§ w/ Sierra Ferrell

∞ w/ Sharon Van Etten


先週、ドキュメンタリーが6月にプライム・ビデオでプレミア上映されることが発表され、2月にはグラミー賞でプレゼンターを務めたセリーヌ・ディオンが、フランス版『VOGUE』2024年5月号の表紙を飾り、再びスポットライトを浴び始めている。


クロヴィス・グーとの幅広いインタビューの中でディオンは、2022年に診断された稀な神経疾患であるスティッフ・パーソン症候群(SPS)への対処について語った。その症状によって数年分のツアー計画のキャンセルを余儀なくされたこと、そしてファンなら誰もが気になる点はいつステージに戻れるのかということだろう。


「それは答えられないわ......。4年間、私は自分自身に、もう戻らない、準備はできている、できていないと言い続けてきたのだから......。現状では、ここに立ってあなたに言うことはできない。現状では、私はここに立って、『はい、4ヵ月後に復帰する』とは言えない」とディオンは説明した。「わからないわ...。体が教えてくれるはずよ。一方で、ただ待っていたくはないの。毎日を生きるのは道徳的に難しい。ハードだし、一生懸命働いているし、明日はもっとハードになる。明日はまた別の日だ。でも、決して止まらないものがある。それは情熱。夢。決意よ」


彼女はまた、治療の一環として、週に5日、運動療法、理学療法、発声療法を受けていると説明した。「私が思うに、私には2つの選択肢がある。アスリートのようにトレーニングに励むか、家で自分の歌を聴き、鏡の前に立って自分に向かって歌うか。"私は医療チームと一緒に、頭からつま先まで、全身全霊で取り組むことを選んだ」


筋肉のコントロールを取り戻すために自分を奮い立たせ続ける回復力とインスピレーションをどこから得ているのかと尋ねると、ディオンは家族、ファン、チームの愛を挙げた。「SPSに苦しむ人たちは、良い医者や良い治療を受けられるほど幸運でもないし、そのような手段を持ち合わせていないかもしれない。私はそのような手段を持っており、これは贈り物なのです」と彼女は認めた。「さらに、私にはこの強さがある。誰にも止められないとわかっています」


オスカー受賞者のアイリーン・テイラーが監督を務める『I Am: Céline Dion』は、6月25日に全世界でストリーミング配信される。既報の通り、この作品は、音楽ドキュメンタリーにありがちな長期にわたるキャリアの概観を避け、筋力のコントロールを妨げ、ツアーのキャンセルを余儀なくされた稀な神経障害に対処するディオンの人生における予期せぬ、極めて重要な瞬間をスナップショットすることに主眼が置かれている。


「この2、3年は私にとって挑戦のようなもので、自分の症状を発見してから、それと共存し、管理する方法を学ぶまでの道のりだった。


「パフォーマーとしてのキャリアを再開するための道のりが続く中、ファンの皆さんにお会いできないことがどれほど寂しかったことか。この不在の間に、同じ診断を受けている人たちを助けるために、私の人生のこの部分を記録したいと思うようになりました」

Pillow Queens 『Name Your Sorrow』

 

Label: Royal Mountain

Release: 2024/04/23



Review



アイルランドの有望株、ピロー・クイーンズはデビュー当初から"クイアネス"という彼らの持ちうるテーマを通じて、真摯にオルタナティヴロック制作に取り組んできた。

 

彼らのサウンドにはモダンなオルトロックの文脈から、Queenのようなシアトリカルなサウンド、そしてシューゲイズを思わせる抽象的なギターサウンドと多角的なテクスチャーが作り上げられる。しかし、いかなる素晴らしい容れ物があろうとも、そこに注ぎ込む水が良質なものでなければ、まったく意味がないということになる。その点、ピロー・クイーンズの二人のボーカリストは、バンドサウンドに力強さと華やかさという長所をもたらす。そして、今回、コリン・パストーレのプロデュースによって、『Leave The Light On』よりも高水準のサウンドが構築されたと解釈出来る。そして、もうひとつ注目すべきなのは、バンドの録音の再構成がフィーチャーされ、それらがカットアップ・コラージュのように散りばめられていることだろう。


アルバムの冒頭に収録されている「February 8th」にはバンドの成長及びサウンドの進化が明瞭に現れている。ドラムのリムショットの録音をサンプリングのように散りばめた強固なビートを作り出し、そこにクランチなシューゲイズギターが散りばめられる。サウンドデザインのようなパレットを作り出し、勇ましさすら感じられるボーカルが搭載される。前作よりもボーカリストとして強固な自負心が感じられ、最終的にはそれがクールな印象をもたらす。トラックの背後に配置されるシンセのテクスチャーも、バンドの多角的なサウンドを強調している。いわば前作よりもはるかにヘヴィネスに重点を置いたサウンドが本作の序盤において繰り広げられる。


二曲目でも同様で、「Suffer」では、内的な苦悩を表現し、それらを音楽として吐露するかのような重厚で苛烈なバッキングギター、その上に乗せられるコーコランとコネリーのダブルボーカルがハードロッキングなサウンドに華やかさをもたらす。そこに、シアトリカルなロックの要素が加わり、時々、”オルトロック・オペラ”のようなワイアードなサウンドに接近する瞬間もある。ヘヴィネスという要素は、ベースラインにも適応され、オーバードライブのかかった唸るようなベースが苛烈なシューゲイズサウンドの向こうから出現した時、異様な迫力を呈する。


本作の序盤では外側に向かって強固なエナジーが放たれるが、他方、「Blew Up The World」では内省的なインディーロックサウンドが展開される。しかし、クイーンズは、それをニッチなサウンドにとどめておかない。それらの土台にボーカルやシンセテクスチャーが追加されると、面白いようにトラックの印象が様変わりし、フローレンス・ウェルチが書くようなダイナミックなポピュラー・ソングに変遷を辿る。これらの一曲の中で、雰囲気が徐々に変化していく点は、バンドの作曲の力量、及び、演奏力の成長と捉えることが出来る。反面、それらの曲の展開の中で、作り込みすぎたがゆえに、”鈍重な音の運び”になってしまっているという難点も挙げられる。これは、レコーディングでバンドが今後乗り越えなければならない課題となろう。

 

しかし、そんな中で、 ピロークイーンズが親しみやすいインディーロックソングを書いている点は注目に値する。「Friend Of Mine」は、boygeniusのインディーロックソングの延長線上にあるサウンドを展開させるが、ボーカリストとしての個性味が曲の印象を様変わりさせている。こぶしのきいたソウルフルなサングについては、従来のピロー・クイーンズにはなかった要素で、これが今後どのように変わっていくのかが楽しみだ。そのなかで、80年代のポピュラー・ソングに依拠したロックサウンドが中盤に立ち現れ、わずかなノスタルジアをもたらす。


続く「The Bar's Closed」ではアイルランドのパブ文化に触れており、閉店間近の真夜中の雰囲気をギターサウンドで表現する。ハードロックなサウンドが目立つ序盤とは対象的に、ピロー・クイーンズのポップセンスや和らいだインディーロックソングが中盤の聞き所。ボーカルの精細なニュアンスは、ナイーブさ、一般的に言われる繊細さという長所に変わり、これらがこの曲にフィル・ライノットの時代から受け継がれるアイルランド的な哀愁と切なさという叙情的な側面をもたらす。これらのエモーショナルな感覚とヒューマニティは、機械的な文化に対するバンドのさりげない反駁ともいえ、ぜひこれからも誰にもゆずってもらいたくないものだ。


ピロー・クイーンズがバンドとしてたゆまぬ努力を重ね、少しずつ成長を続けていることは、「Gone」を聴けば明らかである。ここではノイズロックに近いシューゲイズギターを録音で重ねながら、ボーカルはそれとは対象的にモダンなR&Bに重点が置かれる。一見すると相容れないと思われるこれらのコントラストはむしろ、それが対極に位置するため、強烈なインパクトをもたらす。次いでボーカルに関しては、背後のバンドサウンドに埋もれることはない。これはフロントパーソンとしての強固な自負とプライドがこういった勇敢な印象を形作るのである。




アルバムの後半では、シューゲイズサウンドとインディーポップサウンドが交互に収録され、バンドの両極的な性質が表れる。もうひとつ注目すべきは、ピロー・クイーンズがヴィンテージロックのサウンドの影響を受けている点である。これも以前にはなかった要素で、バンドが新たな境地を切り開きつつある。例えば、「So Kind」は、The Doobie Brothersに象徴されるウェストコースト・サウンドを踏襲し、それらをアイルランドらしいインディーロックソングに置き換えている。カッティング・ギターと抽象的なテクスチャーの組み合わせは、考え方によっては米国的なものと英国的なものを組み合わせ、新しいサウンドを生み出す過程が示唆されている。

 

ただ、新鮮なサウンドが提示されているからとはいえ、前作『Leave The Light On』の頃のバンドのシアトリカルなインディーロックソングが完全に鳴りを潜めたわけではない。例えば、旧来のピロー・クイーンズのファンは「Heavy Pour」を聴いた時、ひそかな優越感や達成感すら覚えるかもしれない。クイーンズを応援していたことへの喜びは、この曲の徐々に感情の抑揚を引き上げていくような、深みのあるヴィネットを聴いた瞬間、おそらく最高潮に達するものと思われる。これは間違いなく、新しいアイルランドのロックのスタンダードが生み出された瞬間だ。

 

アルバムの終盤は、セント・ヴィンセントや、フローレンス・ウェルチのようなダイナミックな質感を持つシンセポップソングをバンドアンサンブルの形式で探求する。「Notes On Worth」では、ネオソウルとオルタナティヴロックの融合という、本作の音楽性の核心が示されている。アイルランドのロックシーンで注目すべきは、Fountains D.C、The Murder Capitalだけにとどまらない。Pillow Queensがその一角に名乗りを挙げつつあるということを忘れてはならないだろう。

 

 

 

84/100

 

 

 

Best Track- 「Heavy Pour」

 

 

 

 


 

 

 

 


Episode of ”Name Your Sorrow”: 

 


どのようなバンドにも、自分たちが地平線上の新しい場所にいることに気づく時が来るはずだ。若さゆえの早熟な唸り声は消え、新人であることの無敵さ--ピロークイーンズは近年最も高く評価されている新人バンドのひとつ-は、今や別のものに取って代わられた。他人がどのように思うかという重荷を下ろした恐れのない感覚。これはバンドのサウンドが軟化したとか、彼らの名を知らしめた音楽を否定したという意味ではなく、むしろ、彼らをシリアスさと脆弱性に開かれた別の領域に基軸を置いている。

 

バンドの時間軸は、アイルランドの大きな社会的・文化的変化と並行しており、クィアネスとアイルランドの国家的なアイデンティティは常に彼らの楽曲の背景を形成してきた。要するに、彼らのようなバンドはアイルランドにはこれまでいなかったのだ。



2016年の結成後、バンドは一連のシングルをリリースし、技術を磨き、ファースト・アルバム『In Waiting』(2020年)に向けて取り組んだ。その過程で、イギリスとアメリカのプレスから称賛を受け、多くのライブがソールドアウトし、ジェームス・コーデンのアメリカのテレビ番組にも出演した。

 

カナダのロイヤル・マウンテン・レコードと契約した後、彼らは2022年にフォローアップ・アルバム『Leave the Light On』をリリースし、テキサス/オースティンのSXSWでの公演やグラスゴーでのフィービー・ブリジャーズのサポートなど、イギリス、アメリカ、ヨーロッパを幅広くツアーした。



3年間で3枚のフルアルバムを制作したことは、真剣な仕事ぶりを示しているが、『Name Your Sorrow』(2024年)では、彼らは厳格なスケジュールにとことんこだわった。


キャシー・マクギネスの説明によると、彼らは毎日9時から5時まで、窓のないダブリンの部屋で、ただ演奏したり、楽器を交換したり、実験を繰り返していたという。そこから、彼らはクレア州の田舎の隠れ家に移り住み、さらにアルバムの制作に没頭した。


「私たちは、ただ楽器を手に取るという、言葉を使わない波長のようなものに乗った。それは本能的なもので、私たちがこれまでに経験したことのない共同作業だった」



サウンドとトーンが明らかに変化したのは、boygenius、Lucy Dacus、Illuminati Hottiesをプロデュースしたナッシュビルのコリン・パストーレという新しいプロデューサーと仕事をした結果だろう。

 

バンドはニューリーにあるアナログ・カタログ・スタジオに3週間滞在し、シーンと人員の変化がレコードに影響を与えていることに気づいた。以前は、レコーディングする前に曲がどう聴こえるかを正確に把握していた。

 

「コリンの時は、録音して聴き返して "思っていたのと違う "と思ったけど、その方が良かった」とレイチェル・ライアンズは認めた。パストーレが来る前、そして9時5時のプロセスと隠れ家のおかげで、バンドがスタジオに着く頃、曲は完全に練り上げられ、レコーディングの準備が整っていた。

1日がかりのセッションの間、彼らは長いレコーディングを曲に分解し、パーツを組み立て直すという、一種のフランケンシュタインのような作業を行っていた。そして、この怪物性-心の痛み、喪失と痛みの肉体性-は、特にアルバムのサウンドにおいて理にかなっている。パメラ曰く、「最初は静かに始めて、後からラウドさが出てきた」そうで、より内省的な雰囲気を持つ「Blew Up the World」や「Notes on Worth」、荒々しいギターの「Gone」や「One Night」などに顕著に表れている。



新たな実験、心に響く歌詞、静寂とラウドを行き来するサウンドが組み合わさった結果、一種のカタルシスがもたられる。破片の中から希望のかけらを探し出す。これまでバンドは、新曲をライブで試聴し、観客に聴かせ、観客の反応を見て作り直してきた。今回は、すでに曲が完全に出来上がっていると感じられるため、そのようなことはしていない。アイルランドのバンドはまた、曲が「ピロークイーンズの曲」に聴こえるかどうかを疑うプロセスを学び直さなければならなかった。前2作とのリンクは確かにあるが、『Name Your Sorrow』は別の方向への勝利の一歩のように感じられる。



「このアルバムは、自分たちの能力をより確かなものにしたものだと思う。曲にも自分たちにも、ただ忠実でありたかった」とレイチェルは説明する。ヴァンパイア・ウィークエンド、バーバラ・ストライサンド、フランク・オーシャン、ラナ・デル・レイなどからの音楽的な影響を明かしている。

 


 4月22日のアースデイに合わせて、サーストン・ムーア(Thurston Moore)はニューシングル 「Rewilding」をリリースした。アース・デイとは環境保護の支援への支持を示すという意味があるのだとか。

 

このニューシングルは、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのデブ・グーゲがベース、ジェイムズ・セドワーズがギター/ピアノ/オルガン、ウォブリー(別名ジョン・ライデッカー)がシンセ/テクスチャー、それから、ジェム・ドールトンがポリリズムのドラムを担当している。


この新曲は、サーストンが『Washing Machine/A Thousand Leaves』時代のソニック・ユースのために書いたようなサウンド、素晴らしい内容となっている。以下から音源をチェックしてほしい。


サーストン・ムーアの次のアルバム『Samurai Walkman: Flow Critical Lucidity』の詳細は、リリース日やアルバムに参加するスペシャルゲストを含め、数週間以内に明らかになる予定だという。

 

 「Rewilding」

 


ドレイクとケンドリック・ラマーが先日、誰がビック3なのかという不毛な闘争を繰り広げたばかり。すでにラップを通じての場外乱闘に近い様相を呈してきている気がするが、今回、この確執に、カニエ・ウェストとして知られていた”Ye”が飛び込むのは時間の問題だったのである。


Yeezyは、週末、フューチャーとメトロ・ブーミンのNo.1ヒット「Like That」のリミックスを非公式にリリースし、ドレイクに狙いを定めた。ウェストはアフィリエイトのジャスティン・ラボイのポッドキャスト「The Download」に出演している。そのクリップが今月22日(月)に公開された。その中で、ヘイトスピーチで批判にさらされているシカゴのモーグルは、ドレイクがラップに照準を合わせている中、スタジオに立つことに「活気」を感じた理由を説明した。


「フューチャーから電話がかかってきて、スタジオに行ってレコーディングした。コードを追加するクリエイティブなプロセスを経て、ロンドンにいるフーリガンズを呼んでジョイントした」とウェスト。「ドレイクがいなくなったことで、みんなとてもとても元気になっていたよ」


Yeはユニバーサル・ミュージック・グループのCEOであるLucian Grainge(ルシアン・グレンジ)と、ドレイクが2022年に画期的な "レブロン・サイズ "の契約でUMGと再契約した際の巨額契約の話を持ち出した。「ルシアンはどこにいるんだ?ご主人様に仕えるんだ、N-A/ご主人様のために小袋を獲ったんだろ?/一生ものの契約、N-Aはかわいそうだぜ/お前たちは、視界から消えたし、心からも消えた/ドレイクのセリフも思いつかない」とラップしている。


LaBoyのインタビューでは、カニエ・ウェストはルシアン・グレンジをドレイクの "Rich Baby Daddy "と呼んでいる。直訳すると、お金持ちのお付きという、ちょっと揶揄的な意味がある。


「"リッチ・ベイビー・ダディ "って言うのは、ドレイクにルシアンやユニバーサルっていうリッチ・ベイビー・ダディがいるみたいなものさ。"パパが手に入れた。パパがスピンをコントロールしてる。パパがDSPを手に入れた。ドレイクにはルシアンという金持ちのベイビー・ダディがいるわけさ」


ドレイクと "Carnival "ラッパーは長年に渡って確執を続けている。2021年のフリー・ラリー・フーヴァー・ベネフィット・コンサートでの一時的な和解さえも水泡に帰したようだ。「Like That」は、ビルボード・ホット100で3週連続首位を獲得しており、ラップ曲としてはドレイクの「Nice For What」以来のヒット・ソング。カニエの「Like That」のリミックスはストリーミング・サービスにはないが、Yeezyのウェブサイトで購入することができる。


 

Kanye West, Future, Metro Boomin- 「Like That(Remix)」


トム・ヨークが、イタリアの作家ドメニコ・スタルノーネの同名小説をダニエレ・ルケッティ監督が映画化した『Confidenza』のオリジナルスコアを担当した。このサウンドトラックは、今週金曜日(4/26)にXL Recordingsからデジタル配信され、フィジカル・フォーマットは7月12日に発売予定(プレオーダー)。トム・ヨークが映画音楽を手掛けるのは2018年の『サスペリア』以来のことである。


ルケッティの新作映画『コンフィデンツァ』でヨークは、ザ・スマイルの『ウォール・オブ・アイズ』を手がけたプロデューサーのサム・ペッツ=デイヴィス、ロンドン・コンテンポラリー・オーケストラ、そして、ロバート・スティルマンとザ・スマイルのバンドメイトであるトム・スキナーを含むジャズ・アンサンブルと再びコラボレーションした。コンフィデンツァ』から2曲を聴くことができる。「Prize Giving」と「Knife's Edge」。下記をチェックしよう。


『コンフィデンツァ』の主演はエリオ・ジェルマーノ、フェデリカ・ロゼッリーニ、ヴィットリア・プッチーニ、ピラール・フォリアーティ、イザベッラ・フェラーリ。

 

 

「Prize Giving」

 

 

 「Knife Edge」

 



Thom Yorke 『Confidenza』-Original Score


Tracklist:

 

The Big City

Knife Edge

Letting Down Gently

Secret Clarinet

In The Trees

Prize Giving

Four Ways In Time

Confidenza

Nosebleed Nuptials

Bunch Of Flowers

A Silent Scream

On The Ledge


テイラー・スウィフトの人気はとどまることを知らない。11枚目のスタジオ・アルバム『The Tortured Poets Department』は、19日(金)のリリース後、24時間以内にスポティファイで複数の記録を塗り替えた。


ストリーミング配信大手のスポティファイによると、『The Tortured Poets Department』はスポティファイ史上、1日で最もストリーミングされたアルバムとなった。また、1日で3億ストリーミングを突破した最初のアルバムでもある。


テイラー・スウィフトは現在、『The Tortured Poets Department』、『Midnights』、『1989 (Taylor's Version)』で、スポティファイ史上1日に最もストリーミングされたアルバムのトップ3を占めている。


テイラー・スウィフトはまた、最新作でスポティファイ史上1日で最もストリーミングされたアーティストとなった。彼女はまた、2023年10月27日に「1989(Taylor's Version)」のリリースで達成したこれまでの記録を更新した。


さらに、ポスト・マローンをフィーチャーしたシングル「Fortnight」は、スポティファイで1日に最もストリーミングされた曲となった。


アルバムのリリースに先立ち、『The Tortured Poets Department』は18日、スポティファイ史上最も事前に保存されたアルバムカウントダウンページとなった。


オフィシャル・チャート・カンパニーによると、『The Tortured Poets Department』の収録曲はUKでトップ3入りを果たすという。


ファースト・ルック・チャートによると、スウィフトは『フォートナイト feat.ポスト・マローン』で4枚目のNo.1シングルを獲得しそうだ。ポスト・マローン。また、アルバム・タイトル曲が2位、『ソー・ロング・ロンドン』が3位にランクインし、トップ3入りを果たしている。


チャートのルールでは、主要アーティストのエントリーは3曲まで。チャートのストリーミングデータに基づけば、The Tortured Poets Departmentの楽曲がトップ20を独占する可能性が高い。


イギリスでは、2022年10月にスウィフトの前スタジオ・アルバム『ミッドナイツ』が記録した初週合計204,501枚の大台を追っている。

NEU! デュッセルドルフのクラウドロックの先駆者 音楽のイノベーションの変遷

 


 

1971年に旧西ドイツに登場した"NEU!"は、以降のデュッセルドルフの電子音楽のシーンの先駆者で、音楽に革新性をもたらしたグループである。クラウス・ディンガーとミヒャエル・ローターによって立ち上げられたこの実験音楽グループは、湯浅譲二と武満徹が制作したテープ音楽に近い趣旨がある。マシンビートを元にしたサウンドは、アンビエントからノイズ、ポスト・パンクに至るまで、その後の数十年の音楽を予見していたと言えるかもしれない。

 

 1970年代、CANやKraftwerkと並んで登場したNEU!の周りには厳然としたシーンと呼ばれるものがあった。産業革命の後の時代、彼らは工業都市の環境音を反映させた音楽を構築した。カン、クラフトヴェルク、そしてノイ!によるデュッセルドルフを中心とした音楽運動は、「Kosmische Music」という名で親しまれていた。日本語で訳すと、”宇宙の音楽”である。実はそのルーツは60年代後半にあり、伝統音楽の規則に対する反抗の意味が込められていた。現代音楽の規則に制約されることを嫌った音楽家たちは、あえてそれらのルールを破ることにしたのだ。

 

上記の3つの主要なグループに共通するのは、多数のジャンルをクロスオーバーしていることである。アヴァンギャルド、エレクトロニックはいうに及ばず、実験的なロック、フリージャズ、そしてイギリスで盛んだったプログレッシブ・ロックを吸収し、それらを独自のサウンドとして構築していく。そんななかに登場したNEU!とはどのようなグループだったのか。

 

当時のことについて、クラウスとローターは次のように回想する。「わたしたちは同じようなヴィジョンを持っていた。初期のバンドは1971年後半に結成され、音楽ジャンルの異なる折衷案を融合させたのです」

 

クラフトワークとの意見の相違、音楽的な感性に関する欲求不満の後、バンドは新鮮な気風を感じていた。それは二人のミュージシャンを活性化せることは明確だった。彼らが完全に同意しなかったのはドイツ語で新しいを意味する「ノイ!」だけ。マイケルはバンドに自然な名前をつけることを望んでいたが、一方のクラウスはこの英語ではない新鮮な音の響きに感激していた。

 

結局のところ、彼らは実験音楽活動の一部としてこのプロジェクトを立ち上げたのだから、この「NEU!」という名前は理に叶っていた。

 

 

NEU!のロゴの誕生

 




 ノイ!の誕生に合わせて、バンドのイメージが必要になった。そこで、テキスタイル風のポップなロゴが作りだされ、著作権の特許を得た。


このロゴにはどうやら意味があるらしく、''現代の消費文化に対する抗議''を意味しているという。使い捨てられるものに対する反抗、音楽は消費されるものではないというロゴの考えは、ある意味では工業化や商業化されつつあるデュッセルドルフの70年代にしか登場しえなかった。


ノイ!は社会的な意見と芸術に関する考えを組み合わせることを躊躇しなかった。それでも、クラフトワークのようにノイ!は当時、裕福な経済力を有していたわけではなかったことは着目すべきか。この中で音楽の再利用を意味するサンプリングという考えも出てくるようになった。

 

 

デビューアルバム『NEU!』の制作

 




 

 

 

ミヒャエルは「わたしたちは貧しいミュージシャンだった」とデビュー当時のことを回想する。1971年、デビュー・アルバムを録音するときも、彼らの念頭にあったのは制作費だった。

 

彼らは12月にウィンドローズ・デュモン・タイム・スタジオを四日間予約した。つまりこれ以上の使用代を支払えなかったのだ。当のスタジオを選んだのも安かったからという単純明快な理由。「それは実用的な髭剃りのようなもの。私はそれについて考えると、無謀で震える気がする。しかし、コニー・ブランクの助けを借り、どうにかわたしたちはメッセージを伝えられた」


驚くべきは、4日間という限られた時間で、ノイ!は六曲をレコーディングした。そして音源を8トラックのレコーダーに落とし込む。マイケルはギターとベース、そしてクラウスはドラムと琴を演奏した。

 

「最初は録音の速度が遅かったけれども、その後、前進するポジティヴなエネルギーを見出した。曲は必要な箇所だけむき出しになるまで削ぎ落とされた。あの時、8トラックのレコーダーしかわたしたちは所有していなかったんだ。6曲のうちの5曲、デビュー・アルバムのために録音されたのは長いトラックが中心となった、その中にはHellogalloとNegativelandが含まれていた」

 

「アルバムが録音され、ミックス作業が終わると、 コニー・ブランクは私にきかせるためのテープをくれた。私はそれを誇りに思い、ガールフレンド、家族、友人の前で聞かせてみました。アルバムの効力は見当もつかなかった。私はアルバムを録音できたことが本当に嬉しかった」

  

デビュー・アルバム『NEU!』は1972年のはじめにリリースが予定されていた。発売当初の評論家の意見は二分されていた。一部の先見の明のある批評家は、画期的なアルバムであるとし、ジャンルという概念を超越するものであると評していた。 少なくとも、このアルバムには、アンビエント、エレクトロニカ、エクスペリメンタル、フリージャズ、インダストリアル、ミュージック・コンクレート、ロックの要素が織り交ぜられていることは事実である。当初、ノイ!の音楽はロンドンで評価され、メロディーメイカー誌の評論家がこの音楽を「クラウト・ロック」と命名した。デビュー作『ノイ!』はドイツでは三万枚の売上を記録する。実験音楽としては驚異的な数字である。しかし、ドイツ以外では商業的な成功には見舞われなかった。


ついでクラウスとミヒャエルはドイツ国内でしか評判を呼ばなかったにもかかわらず、2ndアルバムの制作に着手する。 

 

「Hallogallo」

 

 

セカンドアルバム『Neu! 2』

 



 

 


翌年、 二人はデビューアルバムのプロデューサー、コニー・ブランクと連れ立ってスタジオ入りした。


「わたしたちはレコード・レーベルと契約していなかったからクラウスとコニーと私は制作費を節約しようとした。スタジオにいったとき、10日間録音するための経費を支払った」とミヒャエル。

 

「二度目の録音は作業するときに16トラックのレコーダーがあったので、複数の楽器を多重録音することが可能になった。私はギターを弾いて、それが逆再生され、テンポが意図的に早められ、最終的にエフェクトが追加された。それらの音楽的なプロセスはノイ!の実験性を新しいレベルへと引き上げ、音楽の境界を限界まで押し上げ、すべてを越えたように思えた。すべてが上手く行ったように思えたものの、問題が発生した」

 

「それまでにわたしたちは音のレイヤーを追加し、試行錯誤するのにおよそ1週間を必要とした。私は5つのギターを積み重ね、歪みのような効果を与えようとした。しかし、この作業に一週間かかりましたが、結局、アルバムの収録曲の半分しか録音されておらず、これでは終わらないと思ったので、かなりの混乱に陥っていた。それからわたしたちは解決策を用意しようとした」



さらにセカンド・アルバムについて、ミヒャエルは補足している。「つまり、絶望の結果なんです。わたしたちは色々なことを試した。ターンテーブルでシングルを演奏し、クラウスは演奏中にそれを蹴り上げた。その後、わたしたちは、カセットプレイヤーで曲を演奏し、音を遅くしたりスピードアップしたりというように試行錯誤を重ね、そのプロセスの中でマスタリングを行った。デビューアルバムと同じように、『NEU! 2』はスタジオの使用期間の制限に合わせて制作が完了した。おわかりの通り、それはデビューアルバムとはまったく異なるものだった」

 

 

『NEU!2』は当初、1973年に発売予定だった。アルバムのリリース後の批評家の反応はデビューアルバムよりも好意的だった。彼らのトレードマークのサウンドを洗練させたという評価。批評家は、 特に11分に及ぶ電子音楽の叙事詩と評価する声もあった。しかし、同時に物議を醸すアルバムでもあった。全般的にはそれほど評価が高かったとも言いがたい。批評家たちはNEU!のサウンドをギミックと見なし、レコード・バイヤーを騙しすかそうとしていると指摘した。しかし、ノイ!がこのセカンド・アルバムで試みたのは既存のサウンドの解体だった。

 

「わたしたちは既成の音楽を相手取り、それらを一度ばらばらにすることだった。その後、解体したものを再構築していった。一般的な評論家は、このことを理解できなかったか、理解したくなかった」と、ミュージック・コンクレートの技法を重視していたとノイ!は回想しているのである。

 

しかし、革新的な制作法は一般受けせず、このセカンド・アルバムはイギリスどころか、ドイツ国内でも商業的な成功を収められなかった。現在のサンプリングやコラージュのような手法はあまりにも前衛的すぎるため、一般のリスナーには受け入れられなかったというのが実情である。

  

クラウス・ディンガーと彼の兄弟のトーマスはノイの音楽を宣伝できないかと、画策を始める。イギリスに向かい、DJのジョン・ピールとザ・フーのタウンゼントの妻、カレン・タウンゼントに出会った。ピールはノイ!の音楽をオンエアしたものの、やはり一般的な反応は薄かった。 

 

 

「Casetto」

 

クラウスとミヒャエルは、ノイ!が終わったわけではなく、他の興味やプロジェクトを追求するため、しばらく時間を取りたかったと明言した。クラウスの新しいプロジェクトは『ラ・デュッセルドルフ』だった。一方、ミヒャエルはフォルスト・コミューンへの旅に出ることにした。

 

 

 そこで彼は、クラスターのディーター・メビウスとハンス・ヨアヒム・ローデリウスに出会うことになる。ミヒャエルは、クラスターの2枚目のアルバム『Cluster II』に収録されている「Im Süden」を聴いていた。ディーター・メービウスとハンス・ヨアヒム・ローデリウスがノイ!の拡張ラインナップに加わることに興味を持つのか? それからミヒャエルは、ノイ!とクラスターからなるスーパーグループを検討しはじめた。フォルスト・コミューンで、ミヒャエルはディーター・メビウスとハンス・ヨアヒム・ローデリウスとジャムった。最初のジャムは、後にハルモニアの1974年のデビュー・アルバム『Musik von Harmonia』の収録曲『Ohrwurm』となった。最初のジャム・セッションの後、ミヒャエルはフォルスト・コミューンに滞在し、ハルモニアのデビュー・アルバム『ムジーク・フォン・ハルモニア』のレコーディングに備えた。


一方、クラウスとトーマス・ディンガーはロンドンから戻っていた。彼らは贈り物を携えてやってきたのだ。

 

賜物のひとつは、1972年の大半をコニーのエンジニアだったスタジオエンジニアのハンス・ランペ。もうひとりは、クラウスの弟トーマス。クラウスの提案で、彼らはノイ!のラインナップに加わることになり、その準備のため、ラ・デュッセルドルフとして一連のコンサートを行う。


しかし、ミヒャエルはハルモニアの活動で忙しかった。デビューアルバムのレコーディングだけでなく、レコーディング・スタジオを建設し、ミヒャエルは''ノイ!''の将来のプロジェクトに取り組み、後にソロアルバムのレコーディングも行う予定だった。しかし、それはまだ先のこと。その前に、ハルモニアはデビューアルバム『ムジーク・フォン・ハルモニア』の録音を開始した。

 

 

 

Neu! 75



他のプロジェクトの活動も行う中、ノイ!は三作目のアルバム「Neu!'75」の制作に取り掛かる。ミヒャエル・ローターとクラウス・ディンガーは1974年12月にコニー・プランクのスタジオで再結成した。その頃、コニー・スタジオはドイツのグループのためのレコーディング・スタジオだった。彼らは望んでいた。''天才 "が自分たちのアルバムに魔法をかけてくれることを。


ノイ!の2人のメンバーは変わっていた。クラウスはロックに傾倒し、ミヒャエルはアンビエント・ミュージックへの関心を高めていた。 ミヒャエルが説明するように、「2年も離れていると、僕らは別人になっていた。問題を複雑にしたのは、クラウスがドラムキットの後ろから離れたがっていたこと。彼は自分が隠れていると感じていた。それはわかる。でも、それはクラウスがとても上手くやっていた。しかし、彼はギターを弾きながら歌うエンターテイナーになりたかったんだ。彼は自分の代わりに2人の新しいミュージシャンを迎え入れようとした。その中には、クラウスの弟トーマス、コニー・プランクの元エンジニア、ハンス・ランペも含まれていた」


ミヒャエルはこれが問題だと気づいた。「その頃には、クラウスは一緒に仕事をするのが難しくなっていた。そこで妥協して、2つの全く異なる面を持つアルバムを作ることにしたんだ」 サイド1は、古いノイ! のスタイルを展開させ、サイド2では、クラウスはギターを弾きながら歌った。

 

アルバムは1975年1月に完成し、同年末に発売された。ノイ!は、この三作目でアンビエント風の作風を確立させる。もちろん、その中には「Hero」のような後のパンクのヒントとなる作風もあった。

 

 

「Leb' whol」


昨夜、Rock & Roll Hall Of Fame(通称:ロックの殿堂)の2024年の殿堂入りアーティストが発表された。

 

ロックの殿堂の受賞者に選ばれたのは、オジー・オズボーン、デイヴ・マシューズ・バンド、シェール、ア・トライブ・コールド・クエスト、メアリー・J・ブライジ。ピーター・フランプトン、クール&ザ・ギャング、フォーリナー、ジミー・バフェット、MC5、ディオンヌ・ワーウィック、ノーマン・ホイットフィールドも表彰される。


また、アレクシス・コーナー、ジョン・メイオール、ビッグ・ママ・ソーントンが個別部門の”Musical Influence Award”を、エンターテイメント・プロデューサーのスザンヌ・ドゥ・パスが”Ahmet Ertegun Award”を受賞する予定だ。


2024年のロックの殿堂入りの選考は、1,000人を超える国際的なアーティスト、歴史家、音楽業界の著名人による投票によって選ばれた。例年通り、ノミネート条件は、初レコーディングが25歳以上でなければならない。


オズボーンは2006年にブラック・サバスのメンバーとして殿堂入りを果たしており、今回が二度目の受賞となる。シェールは1991年に殿堂入り。バフェットは昨年9月に、MC5の創設者ウェイン・クレイマーは今年2月に他界している。


最終選考に残ったのは、オアシス、マライア・キャリー、セイド、ジェーンズ・アディクション、シネイド・オコナー、レニー・クラヴィッツ、エリック・B&ラキムだった。これらの最終候補者については来年度も受賞資格を有しており、再び投票対象となる可能性は十分に残されている。

 

オアシスのリアム・ギャラガーはロックの殿堂入りに関して興味がないとしている。一方、レニー・クラヴィッツに関しては、貰えるのならもらいたい、というシンプルなスタンスを取っている。 


主要な受賞者であるオジー・オズボーンは、ビルボードの取材に対して、ソロアーティストとしての受賞の喜びを伝えている。オズボーンは、ブラック・サバスを解雇されたことを自嘲的に明かした上で、バンド以降のみずからのソロ活動を誇りに思っていることを再確認している。

 

オズボーンは、80年代、ランディ・ローズ、ザック・ワイルドとの活動を通じて、メタルの重要なアイコンになった。『Brizzard Of Ozz』、『Diary Of A Madman』、『Bark At The Moon』、『No More Tears』は彼の名作の一例にすぎない。また、オズボーンは以前、自身のソロアーティストとしての音楽性に関しては、必ずしもメタルというジャンルだけでは語り尽くせないものがあるとしている。一例では、95年の『Ozzmosis』の収録曲「See You On The Other Side」にはポピュラーミュージックとして、時代を超越した普遍的な響きがある。

 

サバス以降のソロミュージシャンとしての成功について、「自信があったわけではなかったが、ランディー・ローズが2021年に音楽的な卓越性のカテゴリーに選出されたことで、何かつかめるような気がした」とオズボーンは同メディアの取材で明かした。現在、頚椎症でツアーを断念したオズボーンが、授賞式でパフォーマンスを行うかに注目が集まっている。オズボーンは、10月のレセプションでライブを行う可能性について、「まだわからない」とビルボード誌に語った。しかし、もしそれが実現する場合は、「黒い衣装になるだろう」としている。


今年のロックの殿堂入りの式典は、10月19日(日)、オハイオ州クリーブランドのロケット・モーゲージ・フィールドハウスで行われ、Disney+でライブストリーミングされる予定である。