【運動失調症とは?症状を解説】失調症に対するリハビリのプログラム

病態理解を深める
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リハビリくん
リハビリくん

こんにちは!リハビリくんです!

  

こちらでは「運動失調」をキーワードに記事を書いていきます!

   

運動失調症の病態理解って難しいですよね。私自身も学生の頃から苦手な分野でありました。一概に運動失調といっても、脳の障害部位によって症状やアプローチ方法は異なります。

   

また、運動失調性は、体の一部の機能が障害される片麻痺や骨折などの病気とは異なり、症状が全身に生じることもあるため、生活の質を低下させやすいとも言われております。

   

  • 運動失調の分類
  • 協調運動障害と運動失調の違いってなに?
  • 小脳性運動失調について知りたい
  • 感覚性運動失調について知りたい
  • 前庭性運動失調について知りたい

    

運動失調について様々な疑問を抱えることがあると思います!そんな方のために、こちらの記事を読むことで上記の疑問が解決できるようにしたいと思います!是非、最後までご覧になってください!

リハビリくん
リハビリくん

【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

現在、理学療法士として得意としている分野は「脳卒中」「褥瘡」「栄養」「呼吸」「摂食・嚥下」「フレイル・サルコペニア」についてです。そのため、これらのジャンルの記事が中心となっております。

  

主な取得資格は以下の通りです

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級


   

ここ近年は新型コロナウイルスの影響もあり、外部の研修会などに参加する機会も減少していると思います。また、職場内での勉強会も規模が縮小している施設が多いのではないでしょうか?

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協調運動障害とは

運動失調症を正しく捉えるにあたって、協調運動障害を理解しておく必要があります。

協調運動障害とは「運動を介して目的を達成するために必要な身体を構成する諸要素(関節や筋など)の調整能力の障害」を表します。

また、協調運動障害は、多くの場合で随意運動を協調させてバランスの制御を行う脳領域である小脳の機能不全が原因で起こります。

小脳は、主に一連の動作を協調させる機能のほか、バランスと姿勢を制御する役割も担っています。小脳が損傷を受けると、どのような損傷であれ、協調運動障害(運動失調)につながることがあります。しかし、他にも多くの病気が協調運動障害を引き起こします。

運動失調症とは?症状について

協調運動障害の1つに、運動失調症という症状があります。運動失調症とは、目的の運動に関係する様々な動きの協調性が悪くなるため、それを円滑にできなくなる病態を指します。

運動失調症の代表的な症状は、起立・歩行時のふらつきになります。他には手の巧緻動作も障害されます。

具体的には書字が下手になり、水を満たしたコップを持つと手が震えてこぼしたり、着衣動作でのボタンの掛けはめや、箸を使って食事するなど普段意識していない動作が円滑にできなくなります。また、飲み込みが悪くなり、むせて咳き込みやすくなります。また、言葉も呂律が回らなくなります。

運動失調の分類

運動失調症は、下記の4種類に分類されます。

  • 小脳性運動失調
  • 脊髄性(感覚性)運動失調
  • 前庭迷路性運動失調
  • 大脳性運動失調

小脳性運動失調

小脳の機能不全によって生じる協調性運動障害を示します。小脳は機能的に3つに区分(前庭小脳・脊髄小脳・大脳小脳)されており各領域が担う機能や入出力経路は異なります。

これらの機能的部位は3つの小脳脚で脳幹と連絡しており、小脳へは苔状線維と登上線維によって入力され、深部小脳核から出力されます。

小脳では予測的な運動制御を可能にする内部モデルの誤差学習が行われます。下オリーブ核からの登上線維が小脳皮質に誤差信号を伝え、プルキンエ細胞が誤差情報に従った教師信号を受け、シナプス効率を長期的に下げることにより内部モデルが形成されると考えられています。

疾患としては、遺伝性と後天性のものが挙げられます。

  1. 遺伝性:脊髄小脳変性症、毛細血管拡張性運動失調症等
  2. 後天性:脳卒中、頭部外傷、脳腫瘍、免疫性疾患、感染症、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、中毒症

臨床症状

小脳性運動失調では、①運動失調(多関節の協調運動障害)②起立・歩行障害、③筋緊張低下、④動作時振戦の4つの主要な運動症状が出現します。

運動障害としては四肢運動や起立歩行に加え、眼球運動・構音・嚥下にも生じます。

運動制御の特徴

小脳疾患では単関節の運動や多関節運動における慣性力によって生じる関節トルクを考慮した運動の計画が不十分となることが確認されており、単関節運動でも拮抗筋活動のタイミングや強度を
調整することが難しくなります。

これらの結果として生じる測定異常に対して代償運動が観察されますが、これらの随意運動と比較して、外乱に対する修正反応は正常範囲内の潜時で生じるものの反応の大きさは測定過大となることが報告されています。

脊髄性(感覚性)運動失調

深部感覚の入力の欠如によって生じる協調性運動障害となります。伝達経路である後索-内側毛帯路
(末梢感覚神経、後根神経節、感覚神経根、脊髓後索、脳幹の内側毛帯、頭頂皮質)のいずれかの機能不全に起因します。

疾患としては、下記のものが挙げられます。

  1. 末梢感覚神経(フィッシャー症候群、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱性多発根神経炎、糖尿病)
  2. 後根神経節(傍腫瘍性神経症候群、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、免疫性疾患、化学療法剤)
  3. 感覚神経根(CISP)
  4. 脊髄後索(脊髄癆、頸部脊椎症、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス)

臨床症状

小脳性運動失調と同様に、四肢や体幹の協調性障害(測定異常、運動分解)や起立・歩行障害が生じますが、眼球運動障害や構音障害は基本的に認めません。

本質的な特徴は、閉眼によって視覚代償を取り除くとロンベルグ徴候や偽性アテトーシスを認めることになります。小脳性運動失調とは異なり、四肢の協調性障害(指鼻試験、踵膝試験)や平衡障害の運動方向はランダムに変動します。

運動制御の特徴

深部感覚を失った患者(感覚性ニューロパチー)は、到達運動において慣性力によって生じる関節
トルクを考慮した運動の計画やフィードバック制
御による修正が難しくなります。

このため、視覚代償をなくした場合には運動軌跡や距離は大きく乱れて終点に到達できなくなることに加えて、時間経過によって誤差が大きくなっていきます。

一方、視覚によって腕の運動を確認していれば、運動軌跡や距離の変動は完全には修正されないも
のの、終点までの到達運動が可能となります。

前庭性運動失調

平衡感覚を担う前庭器官(半規管、耳石器)からの入力の低下や欠如によって生じる平衡機能障害からなります。

半規管による頭部の回転(角加速度)や耳石器による頭部の傾き(直線加速度)を感知する前庭器官の機能不全に起因します。

前庭器官からの情報は、橋と延髄の移行部にある4つの前庭神経核(上核・外側核・内側核・下核)に投射するため、前庭情報に基づいた眼球運動や姿勢保持の自動的な調整を難しくさせます。

疾患としては、末梢性と中枢性に分類されます。

  1. 末梢性(前庭神経炎、メニエール病、聴神経腫瘍、ハント症候群、良性発作性頭位めまい症)
  2. 中枢性(脳卒中、脊髄小脳変性症、多発性硬化症、パーキンソン病)

臨床症状

めまい症と平衡機能障害を自覚しますが、視覚や体性感覚への重みづけを大きくすることで代償し
て平衡を維持するようになります。

このため、急性期にはロンベルグ徴候は陽性となりますが、慢性期では前庭代償によって症状が改善することがあるため陰性となることが少なくありません。

また、平衡機能障害は認めるものの、四肢の協調性運動障害が生じることは、ほとんどありません。

運動制御の特徴

不安定な床面(傾斜)で平衡を維持するためには、体性感覚に比べて前庭感覚や視覚への重みづけが大きくなります。

そのため、支持面に傾き(回転)が生じると体性感覚のみでは対応できなくなるため、前庭感覚を喪失した場合には平衡が維持できなくなります。

一方で、傾きのない床面での移動は可能ですが、姿勢反応が測定過大となるため、平衡機能は不安定となります。

大脳性運動失調

一般的に大脳半球の障害により起こる運動失調であり、主な障害部位は前頭葉であるといわれています。

しかしながら発生機序に関し、小脳圧迫・前庭神経の伸展・前頭橋路障害などが考えられてきましたが、一つとしてはっきり証明されたものはなく、いまだ概念のはっきりしない症候になります。

運動失調は小脳性に近似しています。障害側と反対側の身体に出現し、大脳〜小脳機能不全によるものと考えられています。

運動失調症のリハビリテーション

運動失調症に対するリハビリテーションプログラムとして、従来から継承されている方法には、「重錘負荷」「弾力包帯による圧迫」「フレンケル体操」「歩行練習」「起立動作および立位時の荷重負荷練習」「視覚誘導によるバランス練習」などが挙げられます。

基本的な考え方として、充分な評価のうえで問題点を明確にし、上記アプローチによって、その問題点が改善され、円滑な動作に繋がればよいと考えられます。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では「運動失調」をキーワードに考えを述べさせていただきました。

運動失調の症状改善をめざしたリハビリテーション指針を立案するためには、病態やそのメカニズムに対する正しい理解と推察が極めて重要になります。

そのため、障害を受けている部位やその機能に焦点をあてた病態解釈が重要であることは、いうまでもありません。

症状の行動的特徴からそのメカニズムを適切に把握し、さらに病態由来の主症状と、二次的(代償的)な症状に区分しそれぞれに主眼を置いた介入指針を立てることが、リハビリテーションにおける重要な視点となると考えます!

参考文献

  1. 水澤英洋.小脳失調症の病態と治療-最近の進歩-.日本内科学会雑誌.第101巻,第3号,平成24年3月10日,p669-674.
  2. 河島則天.感覚性運動失調に対するリハビリテーションアプローチ.Jpn J Rehabil Med.Vol.56,No.2,2019,p110-115.
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