今回はダベンポートデスクのお話


ダベンポートデスクは、1700年代後半のジョージア時代に、ダベンポート船長から依頼を受けたランカスターの有名なキャビネットメーカーGillowsが作った小さなマホガニー製のライティングデスクが由来だと言われています。ダベンポート船長は軍に属していたため、キャンペーンデスク用として使われていたのではないかと思います。

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このデスクはチェストの上にライティングボックスを置いているような形になっており、多くの場合、片側に引き出しがついています。両方に引き出しの取っ手がついているのですが、片方はフェイクで開けることができません。デスクトップはマホガニーもしくはウォルナットで作られていることが多く、トップの部分はレザーが貼らています。稀にサテンウッドで作られたものがありますが、手の届かないほど高価なもので美術館などで展示されていることがあります。
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蝶番が取り付けられたデスクトップは持ち上げることができ、その中にペンや書類など(今ならラップトップやIPadなんかがちょうど良いですね)をいれることができます。この形は200年にわたって生産されましたが、ほとんどデザインを変えることなく愛され続けました。
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ジョージア時代後期からビクトリア時代にかけて小ぶりなダベンポートデスクは、婦人たちの間で人気を得ました。フランスの貴婦人が使用していたbonheur du jour のような豪華さがなくシンプルな作りには少し驚きですね。
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(フランスで大人気だったライティングデスク、bonheur du jour)

 

ビクトリア時代には、バーウォルナットを使ったり、側面にインレイを施したり真鍮製の装飾が施されたり、足の部分に豪華な装飾を施したりカブリオールレッグにしたりと、時代を反映するようなデザインのものが生産されました。時代と共に、デスクトップにはペンなどを収納する収納箱や移動が便利なようにキャスターが取り付けられたりと、少しづつ改良が加えられていきました。そのほかにもデスクトップの裏側にボタンがあり、それを押すと隠し収納箱が出てくる作りになっているものや、トップの部分がスライドできライティングスペースを確保できるものなど凝ったものも作られました。これらのデスクはエドワード時代まで多く生産され、長くイギリス人に愛されてきました。

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現在でも可愛いフォルムや美しい装飾で一部のコレクターの間では取引をされていますが、使用用途(書類の収納か少しのスペースしかないデスク)がかなり限られているため、アンティーク市場ではあまり人気のある商品ではありません。

しかしサイズが小ぶり収納力があるので、スペースが限られている現代の生活にはマッチしているので、今後人気が出てくる家具かもしれませんね。