壽初春大歌舞伎「弁天娘女男白浪」@歌舞伎座 | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

愛之助/勘九郎/芝翫/猿之助/七之助/東蔵/又五郎/歌之助/松之助

 

 愛之助の弁天小僧、東京では今回が初だとか。とても新鮮でした。特に前半の、お嬢さまに化けているところはかなり良かったです。女形は秀太郎さんに教わってきただろうから(最初の頃は女形でしたよね)悪いわけない。お顔が綺麗だから美しく見栄えするし、セリフも不自然じゃない程度に女声になっているし、いかにも武家の娘というふうな上品な感じもする。

 ちょっと残念だったのは、鹿子の半襟を胸元から出してお店の商品に混ぜるところがよく分からなかったこと。確かにお店の人に見えてはまずいけど、観客に対してはこれ見よがしに落とさないと面白くないんじゃないかな。あと、今になって発見したんですが、日本駄右衛門に正体バラされてクーッとなり、もう騙しきれない……😖となるときカンザシがポトッと落ちますよね。あれいつも、うまい具合に落ちるなあと感心していたのですが、今日の愛之助を見たら、うつむいた時にカンザシのフサの端っこ部分を指で床に押さえ付けていた。で、ちょっと指を動かすとカンザシが髪からスッと抜け落ちるわけで、そうやってたのか!と目から鱗でした😅 いまさらですみません💦

 そして正体がバレてからなんですが、セリフに軽さがあまりなくて、「知らざあ……」の名セリフのところも歯切れの良さや七五調のリズムがイマイチだったな。いや、もちろん上手いんですけどぉ、セリフ回しに上方風の粘りがあるというのかな。さっぱりとした江戸前風を出すのって難しいんだということ、そして菊五郎さんの芸はすごいんだということを再認識しました。

 

 南郷力丸は勘九郎。なんとなく清潔感ありすぎ? もちろん前半はお嬢さまのお供のお侍に化けているから、それはぴったりなんだけど、正体を現してからはもっとガラリと変わってもいいのでは? 日本駄右衛門の子分、それも南郷は漁師あがりなんだから、もう少しゴロツキ感というか、荒っぽい感じに崩れてもいいのでは? その前に番頭(松之助)がお嬢さまに「ご贔屓の役者は中村勘九郎でしょう」と言うと愛之助は「図星!」とばかりに扇で顔を恥ずかしそうに隠しますが、当の勘九郎は「あのような真面目な役者はだぁい嫌いだ」と言って笑いを取るところ、本人のアドリブ……だとしたら分かってますね😊

 芝翫の日本駄右衛門はさすがにずっしりした貫禄十分で立派、太く低いセリフにも重さがある。弁天たちとのアイコンタクトの見せ方も良いし、この座組での日本駄右衛門としては良かったと思いました。そして稲瀬川勢揃いは目に華やかで、5人それぞれの名乗りは耳に心地よく、眼福でした。

 

 鳶頭の又五郎がとても良い。啖呵を切るところが粋で、確かに用心棒に見えました。いきり立つ又五郎を店の奥に押し返した手代さんたちが、足の裏を手拭いで払いながら順々に上がってくるところ、妙にリズムがあって好き~😆 東蔵さんの浜松屋幸兵衛が大変手堅く、品があって、いかにも “繁盛している呉服屋の主人” という感じ。そして、倅の宗之助役の歌之助くんがいい感じに上手くなってきていて嬉しいです。このお役はお兄さん(中村福之助くん)が演った時もあったよね。成駒屋3兄弟はよく言えば良きライバル同志だけど、付くお役にだんだん差がついてくると思うとちょっと辛いかも。誰かが女形なら3人とお父さんとで色々と芝居を掛けられるだろうに、そういうわけにはいかないのかな。あと、幕開きで浜松屋見世先に、頼んでおいた小袖の仕上がりを聞きにくる悪次郎を演ったのは誰だったのかな(筋書、買ってない)。胡散臭いんだけど(実はこの男も日本駄右衛門の子分)セリフがしっかりしていて、店の様子を窺うしぐさも怪しそうだけどさりげない。この場って割と流れてしまう時が多いので、今回はつかみとして良かったと個人的に思いました。

 いろいろ言ったけど、とても楽しい舞台でした🎉 これ「青砥稿花紅彩絵」としてそろそろ全幕で観たいです。

 

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