ミュージカル「キングアーサー」@新国立劇場中劇場 | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

脚本/曲/歌詞 ドーヴ・アチア

日本版台本/演出 オ・ルピナ

浦井健治/伊礼彼方/安蘭けい/石川禅/宮澤佐江/東山光明/平間壮一

 

 アーサー王関連ものは大好きなので、これは観ておこうかなと……。フランス産ミュージカルで、2015年パリ初演後に韓国で上演。今回の日本版の上演にあたっては上演台本と演出を、韓国版公演の演出家が担当しているそうです。

 いちおう触れておくと、アーサー王関連の物語は中世の数百年の間にいろんな人がいろんな内容で書いているのですが、本作はそれらからプロットを抽出してつなげた、完全にオリジナル物語なんですね。しかも本作独自の変更を加えた部分もある。例えば、本作では石に刺さった剣はエクスカリバーという名称だけど、中世に書かれた作品内ではエクスカリバーは別の形で登場する剣のことだし、本作では(ネタバレ❗️→)ランスロットは落命するけど、中世に書かれた作品内では彼はアーサー王亡きあとも生き続けます。

 

 ネタバレあらすじ→中世初期イングランド、先王が亡くなり、石に刺さった剣を抜いた者こそ次の王だというおふれが出る。先王の息子とは知らずに育った孤児アーサー(浦井健治)は、魔術師マーリン(石川禅)に導かれてその剣をいとも簡単に抜き王となる。王への野望を抱いていた最強の騎士メレアガン(伊礼彼方)は面白くない。メレアガンは某城を襲ってそこの王女グィネヴィア(宮澤佐江)を婚約者にする。助けを求められたアーサーはその城を攻めてメレアガンを追放し、グィネヴィアを妻にする。アーサーの異父姉で魔術師のモルガン(安蘭けい)が現れ、訳あってアーサーへの復讐を企む。そして自分をグィネヴィアの姿に変えてアーサーと交わり妊娠、将来その子がアーサーを滅ぼすと予言する。

 メレアガンもアーサーへの復讐心に燃えていて、モルガンと手を組む。一方、アーサーの臣下になるために城を訪れた騎士ランスロット(平間壮一)は城でグィネヴィアと出会って2人は秘密の恋に落ちる。メレアガンはモルガンの力を借りてグィネヴィアを連れ去る。聖杯探求に出ていたランスロットはグィネヴィアを助けに駆けつけるが、メレアガンと戦って死ぬ。しかし、ひとあし遅れて駆けつけたアーサーによってメレアガンも落命。アーサーはグィネヴィアの不義を許し、モルガンはさらなる復讐を誓って城を去り、アーサーは民と平和のために生きる決意を新たにする。終わり。

 

 なんですか、これ! 敵役のメレアガンとモルガンが圧倒的にカッコいいじゃないですかぁ😍 2人ともすごい存在感です。いわゆる、悪役がカッコいいと面白いってやつで、2人のヴィジュアルも眼福だけど、2人がアーサーに復讐したい理由がすごくよく分かるんで気持ち的に寄り添ってしまい、後半からは2人に肩入れして観てしまいました😆

 2人のアーサーへの恨みは明確です。メレアガンは由緒正しい騎士の血筋で剣の腕はトップクラス、自分こそ王に相応しいと確信していたのに、石から剣を抜けなかっただけで王の地位をアーサーに取られ、婚約者グィネヴィアまで奪われてしまう。そりゃ納得いかないでしょうよ😤 モルガンの場合はもっと深い。モルガンの母に欲情した先王がマーリンの魔法に助けられて強引に母をモノにした💥 その落とし子がアーサーなわけです。父は先王に殺され、母も失意のうちに死に、幸せな家庭を壊した先王に対するモルガンの復讐心が、先王亡きあと、その象徴といっていい異父弟アーサーに向かうの当然ですよね😡

 

 テーマを敢えて探すとすれば、セリフに出てきた「運命を選ぶのは人間だ」「運命を乗り越えて進め」みたいなことでしょうか、ちょっと意味よくわからないけど😑 「勇気とは激しく波打つ心そのもの」とか「(アーサー王は)一人の民も粗末に扱わない」とか「心の中の聖杯、自分を豊かにするものとは?」とか、けっこうくすぐったいセリフが語られて、もうこういう言葉に胸を熱くする年齢ではなくなったなあ……自分🙄

 舞台としては、耳に心地良い歌、アンサンブルやメレアガン&モルガンの軍団のキレッキレのダンス、剣による派手な立ち回りなど、全体的にショーアップされていて目と耳が楽しいです。ただ、物語の展開が早く、そのぶん表面的に流れていく感じ。サクソン人との戦いとか聖杯探求とかがいきなり出てきていつの間にか関係なくなっているし、あるシーン(歌)と次のシーン(歌)の間の話を自分で補う必要がある。ま、話の辻褄がよく分からなくても支障なく楽しめるけど。

 照明映像に工夫が凝らされていて、プロジェクションマッピングによる背景美術が臨場感を与えます。客席やその両側の壁にまでマッピングされるし、マーリンが鳥になって去っていくシルエットが客席壁に映されたのは印象的でした。

 

 伊礼彼方くんのメレアガンがとにかくハマり役で超クール😎 その行動の原動力はまさに怒りや憎しみで、時々見せる苦悩の表情やセリフが切ないし、ロック調の歌がすごく上手い。死にザマは美しかったです。モルガンの安蘭けいさんがまたときめくほどにワルがお似合い😎 最後、自分を抱きしめるアーサーを突き放して去っていく姿に、胸がスカッとしました(いつの間にかモルガンを全面的に応援している自分が😅)。

 この2人の存在があまりに強烈&華やかゆえ浦井アーサーはちょっと分(ぶ)が悪かったかも。(以下、ネガティヴなことを書いています。浦井くんに対しては特に好きとか嫌いとかはないので、ニュートラルなスタンスで感じたことです🙇‍♀️)。浦井健治くんのアーサーはちょっと影が薄かったです。一介の青年が運命の導きで国を治める王になる……それへの迷いや戸惑いなどもあるようだけど、少なくとも王座についてからは、佇まいや所作だけでももう少し王らしい姿に変わって見せてほしかった。セリフにも王としての重みは感じなかったし、歌は……もともと彼の声ってスイートだから仕方ないんだけどね〜。そもそも本作でのアーサーのキャラ造形がイマイチ曖昧だったこともあり、何かモヤモヤしました。

 また、一部の役者さんはミュージカルとしての歌唱になっていなくて(普通の歌手というか……💦)物足りなく、アンサンブルが歌うソロの方が断然うまかったりして、それってどうなの……🙄 伊礼くんや安蘭さんやマーリン役の石川禅さんとかが歌うとホッとしたりしました。

 

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