建築学科の学部生は、大学で何を勉強したらよいのかを考えてみます

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一級建築士

こんにちは、独学家(セルフ・ラーナー)のKuroです。

このブログでは、独学での大学受験や一級建築士試験、海外留学についてのノウハウを発信しています。

こちらの記事では、一級建築士試験の学科・製図共に独学で一発合格したKuroが、建築学科の大学生は大学で何を勉強したらよいのか、について考察してみます。

はじめに

ご存知の方も多いかと思いますが、建築士法が2019年に改正されました。

改正前は、一級建築士試験を受験するのに2年の実務経験が必要であった一方で、改正後は実務経験がなくても試験を受けられるようになりました。

建築士法の改正前は、一級建築士試験を受けるためには学歴要件と実務要件が必須であったが、改正後は学歴要件だけで受験可能となっている。
建築士法改正前後の一級建築士試験受験資格

実務要件が不要となったことから、学歴要件だけさえあれば一級建築士試験を受験できることとなっています。つまり、学部を卒業した直後の人でも、一級建築士試験を受験できるのです。

そのため、建築学科で勉強している大学生の人たちの中には、一級建築士試験の勉強をするべきかどうか悩んでいる方もいるかと思います。

そこで、こちらの記事では、建築関係の仕事に就く人を想定しつつ、大学で何を勉強するべきなのかにについて考えてみます。

4つのポイント

まず、ブログ主であるKuroの考える大学のうちに勉強した方がよい内容はこちらです。

  • 一級建築士の受験資格を得る
  • 多くの建築物を見る
  • 英語を勉強する
  • 建築士の勉強はほどほどに

基本的な考えは、建築家としての勉学に励みつつ、大学生の頃にしかできないことをやるというものです。

では、一つずつ見ていきましょう。

一級建築士の受験資格を得る

先ず第一に、建築の勉強に励むことが挙げられます。

大学生の本業は、勉強することです。もちろん、バイトや旅行など、勉強以外のことに一生懸命力を割くことに異論はありません。しかし、高い専門性を持った教授から直接指導を請えるチャンスは人生においてそうそうありません。

そのため、ブログ主であるKuroは、勉強を第一に考えて学生生活を送ることが大切と考えています。

特に、建築学科の学生ならば、将来的に建築士を取得したいと考えている人も多いでしょう。そこで大学生時代に行うべきことは、一級建築士の学歴要件を満たす科目を履修することです。

冒頭に、一級建築士試験を受験するためには実務経験が不要と説明しました。しかし、引き続き学歴要件は受験資格として必要です。そして、学歴要件を満たすためには、(公財)建築技術教育普及センターが公開している一級建築士の受験・免許登録時に必要となる科目と単位数を履修しなければなりません。

将来的に一級建築士の取得を視野に入れている学生は、こちらに記載されている科目と単位数を必ず履修するようにしましょう。建築学科の学生ならば必修科目を履修していればこれらの科目と単位数をカバーできるかもしれませんが、土木や都市計画系の学生などは、必修科目を履修しているだけでは一級建築士試験の受験資格を得られない可能性があります。卒業した後に必要科目が足りなかったという事態を避けるためにも、学校課程別の指定科目に該当する科目に記載されている科目を計画的に履修して、確実に学歴要件を満たせるよう留意しましょう。

また、「学校課程別の指定科目に該当する科目」に記載されている授業は、一級建築士試験(学科・製図)の試験科目と重なるものも数多くあります。そのため、これらの受験・免許登録時に必要となる科目をしっかり履修することは、一級建築士試験の対策にもなるのです。

多くの建築物を見る

ル・コルビジェが設計したロンシャン礼拝堂のイメージ
ロンシャン礼拝堂

次に挙げられるのが、学生のうちに多くの建築物を見ることです。

ここでいう建築物とは、日本のみならず海外の建築物も指しています。また、著名建築家が設計した建築物に加えて、土着の建築物(Vernacular architecture)も意図しています。

社会人にもなると、好きな時に好きな建築物をみる時間的余裕がありません。1年中働かなければいけませんし、長期休暇を取れたとしても、お盆と正月のせいぜい1週間~10日間程度です。そのため、見たい建築物を見に行ける機会が極度に限られてしまいます。

しかし在学中ならば、夏休みや春休みなどの長期休暇を利用して多くの建築物を見に行くことができるでしょう。日本の建築物はもちろん、長期休暇を利用して海外の建築物を見に行くこともできます。

また、建築を見るために地方や海外へ行く際は、著名建築物を目当てにすることが多いかもしれません。しかし、著名建築物だけに目を向けるのではなく、是非とも土着の建築物(Vernacular architecture・ヴァナキュラー建築)にも目を向けてほしいと思います。

アルベロベッロの街並み。その土地の気候に合った建築物が設計されている。
アルベロベッロの街並み

その理由として、海外における土着の建築物を学ぶことにより、日本の建築物を客観的に見る目を養うことができるからです。

建築物は、その土地における環境、材料、生活様式、宗教観、文化などを踏まえながら設計されるものです。例えば日本で在来の木造軸組工法が多いのは、木が容易に手に入ることに加えて、開口部を大きくすることにより湿気の多い日本において通気を促しカビを抑えるという利点があるからです。また、瓦屋根は耐水性に強く火災の延焼を抑えるという効果もあります。

建築物は、古くからその土地に合った設計が自然となされてきました。折角海外まで足を延ばしたならば、著名建築家の建築を見ることに加えて、その土地特有の建築物を見なければ勿体ないでしょう。

英語を勉強する

次に挙げられるのが、英語を勉強することです。

英語を勉強するといっても、日本の建築・建設業界で働く上では英語は必須ではありません。英語を全く話せなくても、建築・建設関係の職に就くことは十分に可能です。

しかし、日本国内の建築プロジェクトだけに注力すると決めてかかるよりは、世界中の建築プロジェクトまで裾野を広げた方が、建築家としての可能性が間違いなく広がります。

また、世界を舞台とした建築関係の仕事に就きたい人は、英語の勉強は避けては通れないものです。日本の設計・建設会社で海外勤務する場合でもある程度の英語力が必要となりますし、ましてや海外の設計事務所で勤務する場合は相応の英語力が求められます。

更に、英語の勉強を継続することによって、海外への大学院進学(留学)という選択肢もでてきます。

ハーバード大学デザインスクールのガンドホール。
ハーバード大学デザインスクールの風景 ©Harvard University Graduate School of Design

次の記事で記載しているとおり、大学院留学をするためには英語力と費用の工面という二つの関門があります。一見、ハードルが高そうに感じられる大学院留学も、英語力を養い、費用を工面さえできれば十分に実現できるものです。

建築学生の目標は、日本の大学院へ進学することや、日本の著名設計事務所や建設会社へ就職することだけではありません。学部生のころから英語力を養って、海外まで視野を広げることにより、将来的に活躍できるフィールドを広げましょう。

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建築士の勉強はほどほどに

最後に、一級建築士試験の勉強です。しかし、ブログ主のKuroは、大学生活の全てを試験の勉強へ注力する必要はないと考えています。

一級建築士という資格取得を目指す場合、早いに越したことはないと考えています。若い頃の方が勉強に集中できますし、勉強時間も取れます。また、早いうちに資格を取得してしまえば、その後の職業人生を資格取得の勉強に費やす必要はなくなります。そのため、学部を卒業した直後に一級建築士試験を受験して、合格することに越したことはないと思っています。

しかし、大学生活の全てを試験の勉強に費やす必要はありません。一級建築士試験は、凡そ500~1,000時間もあれば学科を突破でき、200~300時間もあれば製図を突破できると言われています。現に、ブログ主のKuroは、学科は500時間、製図は200時間程度の勉強時間で合格しました。

また、「学校課程別の指定科目に該当する科目」をしっかりと履修して勉強すれば、学科試験のベースとなる学力を養うことができます。そのため、卒業制作・論文を終える3月頃から試験のある7月までの間に集中的に勉強すれば、合格レベルに到達できます。

加えて、製図試験の勉強は学科試験が終わる7月から開始しても十分間に合います。寧ろ、その年の製図課題が発表されるのは学科試験のある7月なので、それから製図の勉強をスタートした方が効率的に学ぶことができるでしょう。もし在学中から製図試験の勉強を開始したいということなら、大学の製図演習授業などで課される題材を通じて、基本的な製図の流れをしっかりと把握することを心がけましょう。

以上の理由から、大学1年生のころから一級建築士を見据えた勉強をする必要はないと考えます。それよりは、先に紹介したような授業を真面目に受講して、多くの建築物を見て、英語を勉強する方がはるかに役に立つでしょう。

まとめ

こちらの記事では、建築学科の学生が大学で何を勉強したらよいのかを考えてみました。

もちろん、一級建築士を見据えた勉強をすることは効果的です。しかし、人生の目標は建築士を取得することではありません。建築士となったその先に、建築・建設業界で何を成し遂げて、どのように世の中に貢献するのかが問われているのです。

そして、大学生活は、あなた自身がどのように世の中へ貢献するのかを問う絶好の機会です。建築士の勉強だけではなく、自身の可能性を広げられるような取り組みをされることしましょう。


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