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第26話 気晴らしの鍛錬(5)

 

 

私は、安倍忠麿(あべの・ただまろ)・・・陰陽師の生業とする“今は”独身貴族を謳歌している優雅な“オジサン”である

 

伊丹山の社の“異空間”にて、兄の訓麿(さとまろ)と連携し、白櫻尼(はくおうに)と言う大天狗との“本気(マジ)の模擬対戦”をしている

 

私は、大天狗・白櫻尼・・・“邪神”と称される“天魔王”に次ぐ実力を持つ“災害を起こす魑魅魍魎”相手に、小賢しい戦術と陰陽術では“到底”倒せないと思い至り

 

私の“気力”を大分消耗するが、“究極陰陽術・神召喚”を仕掛け、一気に“かた”を付けた方が良いと判断した

 

だが、その“究極陰陽術・神召喚”を繰り出すには、“普段の陰陽術”とは違い“少々時間”が掛かる為、兄に、白櫻尼の“足止め”を頼んだのである

 

兄は、“即座”に“私の魂胆”を見抜いてくれ、直ぐに白櫻尼の“足止め”に取り掛かってくれて、本当に助かった

 

その事が効して・・・・

 

究極陰陽術・神召喚『太陽神・アマテラス』

 

を、白櫻尼に仕掛ける事に成功したのである

 

『『このような術が“今の時代”に存在していたとは!!!』』

と、あの“何事にも動じない”白櫻尼が絶叫するほど

 

神の“能力”を持った“太陽の印”は、例え“邪神”クラスと言えど、そう簡単に“抜ける事”は出来ないのである

 

その後、“太陽の印”によって、動きを封じられた白櫻尼を囲むように“巨大な球”が造り出され、その球の中で“紅蓮の猛火”が発生し、その封じられた者を焼き尽くす

 

“その術”の外側から見ると、眩しく燦燦と輝く“小さな太陽”に観えるのである

 

だが・・・・

 

1000年前の“大陰陽師”阿部晴洲なら、“災害を起こす魑魅魍魎”を“灰”にして“消滅”させることは出来るだろうが

 

今の私の実力だと、せいぜい“再起不能”くらいまでしか持って行けない・・・だからこそ何かと私たちに気を遣ってくれる“白櫻尼”相手に使えたのである

 

“流石に白櫻尼様も、“この術”の前では“手も足も”出せないだろう・・・“

 

と、少し安堵したかと思ったら、“究極陰陽術”を行使した為“気力”を大分失ったため、“意識が朦朧”として、墜落しかけた時

 

「「おい忠麿!!!大丈夫かよ」」

と、兄が私を抱きかかえ、地上に叩きつけられる事を防いでくれた

 

「あ、ありがとう兄上・・・少し朦朧としただけだ、大丈夫」

と、礼を言うと、兄はふっと笑みをみせ

 

「それは良かったな・・・ほれ、肩に掴まれ」

と、私は、兄の肩を借り、地上へと降りていった

 

「「忠麿課長~~訓麿さん~~~」」

 

と、私たち兄弟と白櫻尼との対戦を見ていた、貢治、弓香、泰隆が駆けつけてきて

 

「「忠麿課長~~~お疲れ様です~~~本当にご無事で良かったです」」

と、弓香が歓喜を上げて労わってくれ

 

「忠麿課長、訓麿さん・・・本当にご無事で嬉しいです」

と、貢治が涙を浮かべながら励ましてくれ

 

「忠麿課長も、訓麿さんも、めちゃくちゃ凄かったですよ~~」

と、泰隆が驚きの顔で賞賛してくれた

 

「何とか“無事”に来られて良かった・・・・」

と、私は、上手く白櫻尼に“究極陰陽術”を掛ける事に成功した事を喜びながら

 

少しは“気力”が回復したせいか、兄の肩を借りる必要がないくらいに立つことが出来た

 

そして、紅蓮の猛火が躍動する、燦燦と輝く“小さな太陽”を見上げていた

 

「凄い・・・・これがあの噂の“究極陰陽術・神召喚『太陽神・アマテラス』”なのね・・・・」

と、大いに感動する、弓香

 

「“究極陰陽術・神召喚”って、確か殆どの陰陽師が扱う事が出来ないと聞きましたが、まさか“それが”出来る人が目の前に居たなんて・・・」

と、眼を丸くして驚く、貢治

 

「へ~~綺麗だね・・・まるで、長持ちする“花火”みたいだな~~~」

と、素直に“天然ボケ”の感想を述べる、泰隆

 

「それよりも、白櫻尼のばあさん・・・“あんなもの”喰らって無事なのかよ?」

と、半目の白けた兄が、問うてきた

 

「「白櫻尼様・・・あんな凄い術、掛けられたら“無事”に済まないと思う・・・」」

と、弓香、心配そうに口ずさみ

 

「白櫻尼様には、もっと鍛錬をして欲しかったのに・・・」

と、貢治、惜しそうなに嘆き

 

「白櫻尼様・・・・凄く良い魑魅魍魎なのに・・ここで亡くなったら」

と、泰隆、悲しそうに囁く

 

私は、困った苦笑いをしながら

 

「多分、大丈夫だと思うよ・・・私の“究極陰陽術”は、まだ発展途上で、“災害を起こす魑魅魍魎”だと、“再起不能”は出来ても“浄化”出来ない状態だから“死ぬこと”は無いよ」

と、皆を宥めると

 

「それで、あのばあさんが“降参”してくれると良いのだがな~~~」

と、相変わらず涼しげな表情で、兄が呟き

 

若き優秀な3人は、“うんうん”と頷いて安堵していた

 

その後、私たちは“小さな太陽”が消えるまで見上げていた・・・・

 

 

その“小さな太陽”が消えかかった時

 

『そなたたち・・・何を勝手に、妾を“再起不能”にしてるんだ?』

と、白櫻尼、“何時もの落ち着いた声”で話しかけて来た

 

そして“小さな太陽”が消えると・・・・羽で身体に包まった白櫻尼の姿が現れ

 

その羽を広げると、何の“損傷の無い姿”が露わになり、悠々と上空に浮かんでいた

 

“あの術を掛けられて、何のダメージも無いのか・・・そんな馬鹿な”

と、私は“ショック”を隠せず絶句していた

 

そして、よく白櫻尼の姿を見ると・・・身体全体を“土色”に変化させていたのである

 

“こ、これは!!!属性変化(ぞくせいへんげ)!!!!”

 

属性には、水・木・火・土・金と言う、陰陽五行説と言うものがあって、“魑魅魍魎”にはそれぞれの”属性“特徴があり

 

その属性を見抜いて効率よく”討伐“するのである・・・その中には、”自らの属性を変化出来る“魑魅魍魎も存在し、陰陽師にとって、例え、弱小の魑魅魍魎であっても”手こずる“存在である

 

要するに白櫻尼は、“属性変化”も熟す事もでき、“火属性”に近い、究極陰陽術・神召喚『太陽神・アマテラス』を、火属性を受ける事により相乗効果が拡大する、土属性に変化させて、逆に“パワーアップ”したのである(その事を“相生(そうせい)”と言う・・・)

 

だが、そこらの“魑魅魍魎”なら、“キャパオーバー”して“自滅”するが・・・流石は、“災害を起こす魑魅魍魎”の最高位に位置する存在、私の“究極陰陽術”をいとも簡単に吸収してしまったのである

 

私の見立てでは、白櫻尼の属性は“木属性”で、火属性を与えると“逆相生”して、“パワーダウン”を狙ったが、見事に外れてしまったのである

 

 

“究極陰陽術”を受けても、何の“ダメージ”も無い白櫻尼に、私たち一同驚きを隠せないでいるのを尻目に

 

『この究極陰陽術を喰らったのは、実に1000年ぶりだ・・・まさか、忠麿がこの術を“使える”とは思わなかった・・・妾の目に狂いは無かったな』

と、白櫻尼、“土色”の姿から、元の姿に戻しながら、感慨深く呟いていた

 

そのあと、白櫻尼、仮面の下から見える、清々しい程の笑みの唇をしながら

 

『安倍兄弟よ・・・・妾をここまで追い詰めた事に“敬意”を表し、そなたたちに“最高の術“を披露しよう』

と、言ったあと、葉団扇を上に掲げると

 

上空の空間に雲が集結し、周りの木々が大きく揺れ始め、土埃が舞い上がり

 

私たちは、土埃で眼と口をふさぎ、立つのに精いっぱいの風圧に耐えていた

 

そして、上空には、“稲妻”が走っていた

 

“流石は、災害を起こす魑魅魍魎・・・異空間内とは言え、気候を自由に変えるとは”

と、私は、いつの間にか感心してしまった・・・

 

だが、白櫻尼が“最高の術”を掛けまでの隙があり、その術を止める為

 

私は、即急に!!!!

 

「「陰陽術・氷結の尖閣槍!!!!」」

と、唱え、“氷結の鋭利な槍”を差し向け

 

「「いけーーー“小型ミサイル”発射―――」」

と、兄も私と同時に“ミサイル型”の式神術を仕掛けた

 

『妾の“術”の邪魔をしてくるのは想定内だ』

と、涼し気な台詞を吐きながら、片方の手をかざし

 

“光の壁”を出現させ、私と兄の“術”をあしらったのである

 

「ちっ・・・そう簡単には行く訳ないわな」

と、兄は自嘲気味に笑みを見せ

 

私は、白櫻尼の“最高の術”の行方を観察していた

 

やがて、上空の“稲妻”がまるで、“大量の龍”の如く激しく蠢きだし

 

『この術は、“天魔王”から教わったものだ・・・今の処、妾しか扱えない』

と、白櫻尼、自慢げに言いだし

 

『貢治、弓香、泰隆の安全は保障しよう』

と、言ったあと、再び手をかざすと、若き優秀な3人を、“ガラス張りの球”で覆わせ

 

『これで、妾の“術”を受ける事は無いだろ』

と、余裕の表情をみせながら、“最高の術”を練っていた

 

 

「おいおい、俺ら相手に“天魔王の術”をかけるのか・・・こりゃ~~死ぬかもしれんな」

と、兄、しれっと笑いながら呟くと

 

私も、その術によって、死ぬ確率は高いと覚悟をしながら

 

「そうかも知れないな・・・だが、“男”と心中は御免だよ」

と、さめた表情で嘆くと

 

「俺も同感だ・・・白櫻尼のばあさんが、あの3人を保護してくれたのはありがたい・・・お前と俺の分しか“守れる”気力しかない」

と、兄、淡々とした表情で言って来たので、私は笑みを浮かべ

 

「私は、小技の陰陽術なら、何とか掛ける事が出来る」

と、答えると、兄はにっこりとしながら

 

「タイミングと狙いを外すなよ・・・」

と、呟きながら、術を掛ける体勢を取り

 

「解っている!!!」

と、言い放ち、私も体勢を整えた

 

私たちが“次の術”をかける姿勢を、上空から見下ろす白櫻尼が、真剣な口を開き

 

『ほう・・・まだ、妾と“対戦”する気でいるのだな・・・』

と、囁き、静かな佇まいで

 

『その覚悟!!!とくと見た!!!!』

と、口上を発した後

 

『『妖魔王法(ようまおうほう)・・・』』

と、口ずさみ、上空に向けていた葉団扇を振り下ろしながら

 

『『天魔豪鳴(てんま・ごうめい)!!!!』』

 

と、大地や空間が揺れ動くが如くの“怒声”を挙げたと共に

 

上空から広範囲にかけて、大量の龍が天下るが如くの“稲妻”が降り注ぎ

 

木々は引き裂かれ消滅し、地面は剥ぎ取られて、原型を留める事が出来なかったのであった

 

 

第27話へ続く・・・・・

 

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