旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

奈良井千軒と寝覚の床と木曽路の女 中央本線を完乗!

2022-07-30 | 呑み鉄放浪記

 照りつける真夏日の日差しは信州の川から湖から水蒸気を吸い上げて、激しい夕立が来そうな空模様だ。
松本から来た8番手の834Mは15分の長い停車をしている。今日5本目の211系もロングシート、また外れたね。

中央本線呑み潰しの後半はJR東海が管轄する通称中央西線、ここ塩尻を境界にして双方を直通する列車はない。
ところで塩尻駅の中二階に塩尻産ワインを提供するカフェバー「アイマニ」を見つけた。6月OPENらしい。
「階段のアイマで、電車を待つアイマニ、人と人が会う間を」だって、なかなか洒落ている。いい感じだね。

頂いたのはサンサン ワイナリーのシャルドネ、2015年に荒れ果てた耕作放棄地に開いた若いワイナリーだ。
“柿沢 シャルドネ ネイキッド2019”、フレッシュな香りに滑らかな口当たり、いいワインに出会った。 

“トマトのカプレーゼ” を抓みながら、ふくよかな果実味を愉しむ。これ「日本酒と日本酒のアイマニ」かな。

16:06 塩尻発、車窓の左右に広がる葡萄畑には土砂降りの雨、列車は水煙を上げて木曽路へと駆ける。
夕立が嘘のように止むと、信州カラーの211系は奈良井駅に滑り込む。夕暮れの宿場の家並みを歩きたい。

旅籠風情を残す家々が折り重なるように連なり、途切れるその先には青々とした山並みが続いている。
冷たい湧水が溢れる水場、高札所、出梁造りに袖卯建と格子のある家並み、情緒たっぷりの風景だ。

険路で知られる鳥居峠を控えたこの宿場は「奈良井千軒」と謳われ大いに栄えた。現在でも容易に想像できる。
木曽路は2013年の夏から秋にかけて歩いた。ご興味があれば「中山道紀行22〜27」をご覧いただきたい。

 9番手の1836Mを木曽福島で下車する。17:50、まだまだ余裕で名古屋に到達できる時間帯なのだけど、
そこは呑み鉄旅、小さな町の酒場で “馬刺し” を肴に木曽の酒を愉しみたい。
ところが大きな誤算、当たりをつけた酒場が2軒とも金曜日というのに暖簾が掛からない。流行り◯の影響か。

夕暮れの町を彷徨うこと1時間、漸く冷たい生ビールにたどり着く、プハァーって思わず大袈裟な声がもれる。
駅から今夜の宿へと向かう途中に開店準備をしていた料理屋を思い出したのだ。ただ郷土料理の品書きはない。
お腹が空いていたので “鶏と夏野菜のグリル”、フュージョンな一皿だがニンニクソースが効いて食欲を唆る。

木曽の地酒は “中乗さん”、料理を生かす名脇役の辛口本醸造は飲食店などに卸している酒らしい。
お姐さん、調理台の上の一升瓶から無造作に注ぐ。大将、この酒を料理にも使っている。この大雑把さもいい。

刻み海苔とネギを絡めて “揚げ出し豆腐” を掬う。なかなかいい味を出している。大将、腕がいいなぁ。
“七笑” も木曽福島の酒、スッキリとした飲みやすさの辛口は、オヤジたちが燗をつけて飲む定番酒だ。旨い。

ホテルはリバーサイド、木曽川沿いリバーサイド、食事もリバーサイド、Oh- リバーサイド。
土曜の朝はサラリーマンが居ない朝食会場、半分は御嶽山か木曽駒への登山客、もう半分は建設関係の方か。

10番手の822Mは07:36発、JR東海の313系は転換クロスシート、これぞ旅気分、プシュッと缶ビール。

車窓から御嶽山を望むポイントがあった。長野方面に向かう列車なら、上松を出て木曽福島到着前、
左手に目立つ御嶽教の神社を過ぎたら前方に注目、王滝川の谷間の奥先にその雄大な姿を見せつけている。
名古屋方面に向かう列車からは振り向く様になる。残念ながらカメラを取り出す間もなく景色は通り過ぎた。

ひとつ目の上松で早速18分の停車となる。長野からの俊足ランナー “特急しなの” の追い抜きを待つためだ。

ボクは “特急しなの” を待たずに旧国道を歩き出す。車窓から見える「寝覚の床」だが間近に観たいものだ。
夏の陽を遮るものなく、瞬く間に吹き出す大汗。駅から20分、汗が目に沁みる頃に臨川寺の門前にたどり着く。
200円をお布施して石段を降りていくと、やがて中山道の景勝地、奇勝・寝覚の床が姿を現す。

木曽川の激流は花崗岩の柱状節理を削り、その特有の割れ方が、大きな箱を並べたような不思議な造形美を
もたらしている。白い岩肌とエメラルドグリーンの流れには、浦島太郎でなくとも魅せられてしまうのだ。

シャッターが開いたばかりの駅前の酒屋、七笑の吟醸 “木曽路の女” の300mlを求めて11番手の1824Mに乗る。
再び寝覚の床を眺める間もなくキャップを切る。ネーミングのとおり爽やかな香り軽い口当たりの酒だ。
『やっと覚えた お酒でも 酔えば淋しさ またつのる ♪』って原田悠里は歌えない。

「木曽路はすべて山の中である」と藤村、中山道で云えば贄川から馬籠までの11宿がこれに相当する。
多くは中央本線の駅名として残っている。木曽路を抜けた1824Mは落合川に停まり中津川に終着するのだ。

 観光案内所で散策Mapを手にしたら、江戸から45宿目、やはり江戸時代の風情を残した町並みを歩く。
めざすは京方の枡形、栗菓子の川上屋(中津川は栗の産地)、“恵那山” のはざま酒造が卯建を上げている。

鉄ちゃんが盛んにシャッターを切っている。1番線に入線して来たアンカーの2730Mは最新鋭の315系。
8両編成の快速電車は中津川〜名古屋を80分で快適に疾走する。でもオールロングシートで旅情は薄い。涙。

8編成の最後尾車両は貸切状態、ロングシートだけど幅広の窓枠、って呑めるんじゃね。さっそく準備を。
栗に小豆、川上屋で冷えた水菓子を求めてきた。これって絶対に吟醸酒に合うね。
穏やかに香る吟醸香、軽やかな甘みの純米吟醸をグイッと、すかさず甘味を一口。美味い、これは堪らないね。

14:13、最新鋭の315系が7番ホームに終着する。なんだか小さな人型ロボットのような愛嬌のある表情だ。
東京駅を発ってから32時間30分、信州の雄大な車窓を愉しみながら、よくも呑んだ中央本線の旅は終わる。
明日からの1週間は禁酒だなぁ。出来もしない誓いを金鯱に立てる呑み人なのです。

     中央本線 東京〜名古屋 396.9km
中央本線(辰野支線) 岡谷〜塩尻   27.7km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
リバーサイドホテル / 井上陽水 1982
     



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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
管理人さん (SDTM)
2022-08-06 06:40:24
★ いつも楽しく見せて貰ています。
  最後に1曲なんかもお洒落ですね。

  その曲で、、【リバーサイドホテル」
  に引っ掛かりました。
  弊BLOGでしょうもない記事が、、

https://blog.goo.ne.jp/sdtm-2/e/9c40df6a65704b3183bf6b0e9412ca74

  良かったら観てやってください、、
Unknown (ひろし曾爺1840)
2022-08-06 07:55:20
👴*お早う御座います!
💻今日の「ブログ」と「ランキング」に👍&👏で~す。
今日8月6日は広島は原爆に日です。
核兵器や戦争のない世界を一緒に祈りましょ~!
本日も宜しくお願いします!
木曽路の女 (knsw0805)
2022-08-06 09:47:04
おはようございます。
意味深なタイトルから始まったブログに魅せられ一気に見ました。
見終わった後思わずため息が出ました。
構成が素晴らしい、私のような旅好き、酒好き、肴好きの人間には堪らない記事構成でした。随分前に嫁さんと中山道馬篭、妻籠宿を旅した記憶が蘇って来ました。ブログの最後が名古屋城、「尾張名古屋は城でもつ」憎い演出でした。
Unknown (harapeconakimusi)
2022-08-06 16:50:23
う…わたしはダウンしているほど暇じゃない😢車窓を堪能しつつ呑まなきゃ日本酒の冷や

元気をありがとうございます
Unknown (ever-green2022)
2022-08-06 17:43:14
お酒は呑めないから、わかりませんが、素敵な画像ありがとうございます😊

おしゃれなお店や、古い町並み。大好きです。私は関西で、生まれは京都なんで、こういう風景大好き♥
Unknown (呑み人)
2022-08-06 21:32:17
SDTM様、こんばんは。
2021年の記事、覚えていますよ。
いつもの記事とは異色でしたからね。
この曲を聴いていた世代の人は、
それぞれのリバーサイドホテルを
持っているのではないでしょうか。
私のは、木曽福島ではないですけどね。
コメントありがとうございます。
Unknown (呑み人)
2022-08-06 21:38:01
ひろし曾爺様、こんばんは。
今日は広島の方には特別の日ですね。
8/6、8/9、8/15、お盆と相まって
祈りの日が続きますね。
いつもコメントありがとうございます。
Unknown (呑み人)
2022-08-06 21:52:11
@knsw0805 こんばんは。
七笑の “木曽路の女” は、芳醇でちょっと甘め、
度数も控えめで、女性が好みそうな酒でした。
明日は馬籠か妻籠の宿か♩と恋に破れた女の歌ですが
ご夫婦睦まじくのご旅行、楽しかったことと思います。
私は当時小学生だった息子と歩き、妻は車の回送係でした。
いつか、Kenちゃんの様に妻を連れて再訪したいと思います。
コメントありがとうございます。
Unknown (呑み人)
2022-08-06 22:07:46
@harapeconakimusi こんばんは。
暑い日が続きますね。お身体ご自愛ください。
書けない夏休みの思い出、拝見しました。
怖かった思い出を共有している彼女は今いずこ。
彼女はどうしているかな?と思うことが楽しいんでしょうね。
私も今夜は幼い頃の夏休みの思い出を辿ってみます。
コメントありがとうございます。
Unknown (呑み人)
2022-08-06 22:14:37
@ever-green2022 こんばんは、コメントありがとうございます。
京都のお生まれですか。私、憧れますね。
時間ができたら(そういう年齢になったら)、
暮らすように旅したいです。
これからよろしくお願います。

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