みんなが知っているジャズを弾きたい理由
不思議といえば不思議かもしれないが、自分が弾きたいクラシックピアノの選曲については、100人に聞けば90人までが知っているような曲を選びたいとは思わない。例えていえば、「トルコ行進曲」とか「子犬のワルツ」とか。
なのにジャズに関しては、どちらかと言えば少なくともジャズファンみんなが知っている曲をやりたいと思っていた。例えていえば「枯葉」「酒とバラの日々」とか「バートランドの子守歌」とか。
これはクラシックファンのほうが数の上で、ジャズファンを凌駕しているためだと思われる。特に最近は大人ピアノの流行のおかげで、クラシックに開眼するかたも多い。反してジャズの曲は一般的に知名度が低い。だから私も弾いているときに、「それ、何?」よりも「あ!これ聞いたことある!」と言われるスタンダードをやりたいのだ。
ところがジャズピアノの先生は、私から見るとかなりの玄人好みである。先生は私のレッスン曲を選ぶ際、自分の手書きコードコピーをずらりと並べ、「どれにしようかなぁ」と実に愉しげである。たまには私の好みも聞いてほしいなぁ。
というわけで、発表会後に先生が選んでくれた曲のひとつが、「Lullaby of the Leaves (木の葉の子守歌)」というオリジナルが1932年に発表された曲。私が知らなかっただけで、ビリー・ホリディもエラ・フィツジェラルドも歌っている。ジャズは奥深いのだ。自分の知らないことを謙虚に習わないといけないのだ。
ベンチャーズもカヴァーした「木の葉の子守歌」
「Lullaby of the Leaves(木の葉の子守歌)」は最初、ジェリー・マリガンというサックス奏者によってジャズのスタンダードになったので、まず入門編としてはこちらから。
ところがこれをあのベンチャーズがカヴァーして1965年にヒットさせたのだ。ベンチャーズと言えば特に私の世代には「テケテケテケテケ」というエレキサウンドでおなじみである。
日本では歌謡曲にも進出して渚ゆう子さんの「京都の恋」もヒットさせた。ずいぶんと間口の広いグループなのだ。
ジャズピアノのタッチとはスタカート?ノンレガート?
さてここからが本題。要するに先生は私のピアノについて、「ひとつひとつの音をバラバラにしたうえで、ひとつのフレーズにまとめる」弾き方を習得せねばならないとおっしゃる。「でないとジャズやない」おっしゃる通りです。
ではジャズの弾き方とは何か?これは先生も言葉でなかなかいい表せられない。スラー、テヌートで弾くのではなく、研ぎ澄まされたタッチって何?
そこで先生と私の「Lullaby of the leaves」の最初の部分を比較してみた。こんな数秒の録音のためにYouTubeを使いたくなかったので、音声だけを下に貼ってみた。
先生と私のタッチ比べ
以下、先生が弾いたテーマ最初の例(左端をクリックすると音声がでます)
以下、私が弾いたテーマ最初の例(左端をクリックすると音声がでます)
両者の違いが一目瞭然、ではなく一聞瞭然である。先生のが研ぎ澄まされたキレキレッのナイフのような音なのに、私のはモッチャリしてて、ドスンドスンと重たい。いったいどういう弾き方をすれば先生のに近づくのか。試行錯誤しているが道は果てしなく遠い。