「会議」シリーズ第2弾 | 将棋大好き雁木師の新将棋文化創造研究所

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「将棋大好き雁木師の将棋本探究」をリニューアルしたブログです。
主に将棋に関する詩などの作品紹介と、自分の将棋の近況報告を行います。

読者の皆様こんばんは。最近、とある将棋に関するLINEのオープンチャットにお邪魔した雁木師でございます。今日は書籍のご紹介です。当ブログでは以前、「会議」シリーズの書籍をご紹介させていただきました。

今回はそのシリーズ書籍の第2弾のご紹介ということで、こちらの書籍をご紹介します。

 

 

 

 

「将棋『初段になれるかな』会議」

 

のご紹介です。

高野秀行(たかの・ひでゆき)六段、岡部敬史(おかべ・たかし)さん、さくらはな。さんの共著で初版は2018年12月に扶桑社から発売。当時の価格は920円(+税)で、現在ではAmazon、楽天問わず電子書籍での購入がおススメです(楽天ブックスでは紙媒体の入手は不可、Amazonも当時の価格での入手は困難です)。また、中古でもOKという方はブックオフ楽天市場店から入手を狙ってもよいかもしれません。

 

御三方のプロフィールについては冒頭のリブログ記事をご参照ください。なお、付記事項として高野秀行六段の今期のここまでの順位戦C級1組の成績は6局を終えて1勝5敗の成績です。

 

では書籍の内容に入ります。本書は級位者の方が初段を目指すうえで欠かせないメソッドを分かりやすく学ぶ内容で、全7章構成です。構成としては岡部さん、さくらさんの質問に高野秀行六段が回答していくQ&A方式での進行は前回紹介した書籍と変わりありません。では、各章の内容を順に見ていきます。

 

まずは岡部さんによる「まえがき」。本書を制作されたきっかけやご自身の将棋歴、棋力をもとに今回の本書の経緯などを書かれています。

 

第1章「常に『と金』を考えよ~級位者が覚えるべき10の格言~」

この章ではタイトルの通り、級位者の方にぜひ覚えていただきたい格言を高野秀行六段が解説、提言されています。前半は初心者の方におススメの戦型から始まり、有名な格言は覚えるべきなのか、逆に覚えなくていい格言はあるのかなどを交えながら、級位者に学んでいただきたい格言と意味を解説されています。

 

第2章「自信のない『詰み』より『詰めろ』~覚えておきたい詰みの形~」

この章では「詰み」と「詰めろ」をテーマに級位者が初段になるために覚えておきたい玉の詰ませ方の解説です。こういう言い方をしますと「これを覚えたら何が何でも玉を詰まさなくてはいけない」と思われる方もいるかと思いますが、実は「詰み」を目指した結果負けるより、「詰めろ」をかけて勝つ選択も局面によっては必要というのを本書を読んで感じました。

まずは詰将棋の取り組み方から始まり、詰将棋を用いて詰ませ方のイメージを学びます。そして最後に「詰めろ」の大切さと考え方を学んでいく流れです。

 

第3章「『手筋』ってそもそも何?~初段になるためのテクニック集~」

「手筋」という言葉、将棋ではよく耳にしますよね。では「手筋」とは何か説明できますか?かくいう私も言語化するのは意外と難しいのです(そんなことでは本来ダメなのですが…)。

本書では、級位者の方にぜひ覚えておきたい手筋を「手筋」「攻め筋」「守り筋」の3種類に分けて解説されています。「手筋」は歩を使ったもののみ。「攻め筋」は歩以外の攻めの手筋。「守り筋」は「桂先の銀」「銀ばさみ」の解説です。どれも級位者の方に覚えておきたい手筋ばかりです。

 

第4章「意識したい『良い形』と『どこから終盤?』~級位者の実戦譜より~」

級位者であるさくらさんの対局を高野秀行六段が解説するという、「指す将」にとっては夢のような章がこちら。実際の局面から、ポイントを解説。状況によっては部分図を用いて、なぜこの形がいいのかを解説されています。章の締めくくりには、プロの対局の局面を用いて、終盤の見極め方を学びます。

 

第5章「差がないときは攻め急がない~級位者の『次の一手』~」

この章では級位者であるさくらさんや岡部さん、担当編集者の方の実際の将棋を次の一手「質問」形式で高野秀行六段に解説していただくという内容です。ポイントは将棋の本でよくある「次の一手問題」ではなく「次の一手質問」形式であること。

腕試しをしたい方は、いきなり本文に進まずに、問題の局面を自力で考えてから文章を読み進めていくことをおススメします。もちろん、分からない場合は読み進めても大丈夫。読み進めていくうちに、攻防のポイントが学べます。

 

第6章「『強くなった気がする』から始める棋譜並べ

将棋の上達法の1つとして有効とされている棋譜並べ。プロの棋譜、自分の将棋の棋譜を並べることで参考になったり、改善出来たりといいことずくめとされています。本当は私も将棋世界やNHK将棋講座テキストを定期購読しているので並べたほうがいいのですが、忙しさを言い訳におろそかにしています(本当はそういうのはダメですが…)。

この章では級位者の方の棋譜並べの在り方や、実際に並べてほしいプロの公式戦の棋譜をポイント解説しながら実際に棋譜を並べてもらうという内容です。本書で掲載されている棋譜は3局。高野秀行六段の棋譜も登場します。

 

第7章「なぜ『先手よし?』~プロに訊いてみたかったこと~」

これまでの章で取り上げてこなかった級位者の方の悩みや疑問を高野秀行六段にお答えいただく内容となっています。「馬と飛車の交換はどちらが得か?」「級位者と段位者の違いは?」など、級位者の方の多くが疑問に思っていることを回答されています。

 

また、締めくくりには「あとがき」として、さくらさんのマンガと高野秀行六段の文章が掲載されています。

 

 

以上、各章の内容を見てきました。実際に読んでみた感想は以下の通りです。

 

ツボを押さえる

本書を読んでみて、全体の感想としては級位者から初段になるためのステップアップのためのツボが満載だったということです。本書でも述べられていますが、級位者の方はやみくもに実戦や詰将棋の数だけをこなすより、しっかり考えて質のよい将棋を目指すことが上達への近道と言えるでしょう。

また格言や手筋においても、全部を覚えるのではなく大切な要素を厳選して解説されていますので、効率よく覚えていただきたい意図を感じます。

 

分かりやすいイラスト

もちろん本書でも、さくらさんの分かりやすくてほのぼのとしたイラストを掲載。さくらさんが実際に将棋を指してみて感じたことを素直にイラストで表現されている印象を受けました。特に面白かったのは、馬に関するマンガ。香車を取って馬を作ることに成功してもそのせいで利きが狭くなり、結果として敵陣で捕まってしまった…。なんてことはあると思います。本書にてさくらさんはこれを見事にイラストで表現されています。

他にも実際に指してみて、「級位者あるある」を感じること間違いなしのマンガがいくつも掲載。楽しみながら学べる内容の一助を担っています。

 

棋譜並べのススメ

内容のところでも述べましたが、棋譜並べは将棋上達法の1つとして欠かせないとされています。棋譜並べと言いますと、ついつい応援しているプロ棋士の名局集を「買ったからには全部並べなくては」と思っていざ並べてみたものの、指し手の意図が難しすぎて分からなくなり挫折した…。なんて経験をされた方はいらっしゃるかと思います。

もちろんプロ棋士の棋譜を並べて勉強することはいいことです。しかし、難しすぎてついていけなくなり挫折してはもったいないですよね。そこで本書のコンセプトは「楽しみながら」棋譜を並べる。本書の第6章で登場する棋譜は、3局ともぜひ級位者の方に並べてほしい棋譜として紹介。これまでの章で学んだテクニックをプロはどう生かしているのか…。ぜひそれを意識しながら並べてみることをおススメします。

今日では日本将棋連盟アプリなどで棋譜をリアルタイムで配信されているので、サクサク棋譜を閲覧できる時代となりました。しかし、「良い手は指が覚えている」というプロ棋士の名言があります。これは盤と駒を用いての棋譜並べを丁寧に重ねた方でないと言えない名言です。棋譜並べのメリットはたくさんあります。もちろん、アプリを有効活用しながら棋譜並べをしてみるのも有効。上手く併用して、棋力向上を図りたいものです。

 

 

さて本書は前述のとおり、級位者の方が有段者になるためのエッセンスを凝縮させた内容です。現在の入手ルートは限られていますが、級位者の方にはぜひ読んでほしい一冊です。本書を読んで、楽しく初段を目指す一助になればと思います。

 

この本を読んで将棋が好きになった、将棋が強くなったというお声をいただければ、これほどうれしいことはありません。読者の皆様が将棋本を読んで将棋が好きになる、将棋の力が強くなることを祈念したします。なお、次回の書籍紹介は12/2(金)を予定しています。

 

今日はここまでとさせていただきます。本日も長文となりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

 
 

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