読者の皆様こんにちは。雁木師でございます。今日は「将棋ウォーズ戦記」のコーナーです。長文となりますが、最後までお付き合いいただけると幸いです。
自戦譜の紹介の前に、最近の将棋ウォーズ近況から。相変わらず3分切れ負け(通称弾丸)ばかり指している私のウォーズライフ。このところは挑戦と失敗からの復活と言ってもいいでしょう。耀龍四間飛車で勝てなくなったと思い込んだ私は、居飛車に完全移行。かつて書籍で学んだ戦法を取り入れることにしました。それは「村田システム」です。
※詳しくはこちらから
村田システムの採用を増やした結果、一時達成率は回復の予兆を見せるどころか低迷に拍車をかける事態に。0.0%も現実味を帯びたこともありました。現在は15~20%の水域までに回復しましたが「地下」水域の脱出までには程遠いのが現状です。
棋力レーダーチャートにも変化が。絶好調時には総合数値が合計で16点台後半も記録していましたが、現在は14点台に下がりました。特に戦術力の数値が致命的に低く、0点台で推移しています。最も対になるとされている芸術力は2点台で推移しているので、そこまで意識しなくてもいいのかとは思います。私の場合、守備力の値が高くて3点台で攻撃力は2点台。早指力は4点満点で推移。終盤力は2点台後半で推移しています。
数値を見る限りでは、早見え早指しの受け将棋という結果なんですが局面を見る大局観は養わなくてはと思います。
※レーダーチャートの見方についての参考文献はこちらから。
では、本題の自戦譜に入ります。今回ご紹介するのは、村田システムをやってみた一局です。先週のウォーズでの実戦から。持ち時間は3切れ。お相手は弾丸初段で後手番が私です。
初手からの指し手
▲7六歩 △3二金
▲6六歩 △4二銀
▲5八金右 △6二銀
▲4八銀 △5四歩
(1図)
後手番の私の陣形が村田システムです。改めて村田システムの特徴は
・いきなり角道を開けないこと
・中央に銀を活用すること
の2点です。
ウォーズでは、相手が居飛車もしくは飛車の動きを保留している時点で1図の陣形を完成させれば村田システムのアイコンが表示されます。本譜もお相手がまだ飛車先の態度を明確にしていない時点で陣形を素早く築き、村田システムのアイコンの表示に成功しました。
ただし、本譜の1図の進行まで見るとアイコンが表示させることができない変化もありました。具体的に説明しますと、本譜のお相手の初手▲7六歩の進行には振り飛車の変化も秘められていたからです。3手目▲6六歩は振り飛車でもあり得る進行。対する私の初手△3二金~△4二銀の進行は、お相手が居飛車で来ると想定したうえでの構えでした。対局前のデータ(対局開始のオープニングで表示)では、お相手は居飛車の戦法が得意と表示されていたのでそれを踏まえて進めてみたのですが、中には居飛車を得意としながらも振り飛車も指すなんて方もいらっしゃいます。
村田システムは相手が振り飛車でも戦える戦法ですが、私は対振り飛車における村田システムの戦い方が上手くないため、相手の得意戦法が振り飛車の場合は初手に▲7八金(△3二金)ではなく▲2六歩(△8四歩)を指して様子を見るケースがあります。そのうえで相手が居飛車でくれば村田システムを狙い、相手が振り飛車なら右玉を目指していくスタイルが現在地です。
分かりにくいのが、相手の得意戦法が角換わり(一手損も含む)の場合です。これは角交換振り飛車を得意とされている場合も多く、角換わりをかわすつもりで村田システムをやってみたら、相手が飛車を振ってきたということもありました。
将棋俱楽部24や実際の将棋大会などではウォーズとは違い、よほど相手のことを知らない限りは得意戦型を見抜くのは不可能なので、初手に▲7八金(△3二金)を指すときは相手を信頼(?)している前提で指すことをおススメします。
さて、本譜の進行に戻ります。村田システムのアイコンを表示させた私は、次の段階に進みます。幸いにもお相手は囲ってから攻める狙いだったので、以下はお互い陣形を整備する進行をたどります。
1図以下の指し手
▲6七金 △5三銀右
▲6八銀 △4四歩
▲7七銀 △4三銀
▲2六歩 △5二金
▲2五歩 △3四歩
▲2四歩 △同 歩
▲同 飛 △1四歩
▲2八飛 △2三歩
▲1六歩 △4一玉
(2図)
先手のお相手は矢倉の早囲いの段階で上部の屋根を築いた時点の段階で飛車先の歩を交換。これは私があえて早い段階で△3四歩~△3三角をあえて指さなかったために成立したと言えます。解説しますと、飛車先交換を嫌がるならお相手が▲2六歩の時点で本譜の△5二金に代えて△3四歩を早く指すのがセオリーです。そこで▲2五歩に△3三角と上がれば、飛車先交換は回避できます。
しかし、飛車先交換は防げてもその先の課題を乗り越えることができるか不安がありました。それは▲3六歩からの速攻策への対応です。私の狙いはシステムからの雁木の完成。△3三角でも雁木は成立しますが▲3六歩~▲3七桂(もしくは▲3七銀)への対応に自信がなく、△3三角が理由で角が標的にされるくらいなら、あえて上がらずに雁木を目指そうという発想で△3三角をやめたのです。最も本譜のお相手の囲いは2図の時点ではまだ完成とは言えないので、この段階で速攻策を恐れる必要はなかったかもしれませんが…。
さて、本譜は2図からも態勢を整える進行が続きます。
2図以下の指し手
▲6八玉 △8四歩
▲7八玉 △9四歩
▲9六歩 △8五歩
▲7九角 △7四歩
▲8八玉 △7三桂
▲7八金 △3三桂
▲3六歩 △6四銀
▲3七銀 △3一角
▲2六銀 △8四飛
(3図)
お相手は矢倉を完成させている間に、私は攻撃態勢を整えます。右辺の攻めを強化すべく、角を3一の筋に転換。斜め棒銀を狙います。
お相手も矢倉棒銀で攻撃態勢に入り、3図からいよいよ戦いが始まります。
▲3五歩 △7五歩
▲同 歩 △同 銀
▲7六歩 △8六歩
▲7五歩 △8七歩成
▲同 金 △7五角
▲5六歩 △6四角
(4図)
お相手の攻撃は▲3五歩から。これを素直に△3五同歩と応じると▲3五同銀から棒銀が成功となるので、手抜いて△7五歩からの攻め返します。順調に斜め棒銀が決まっていくかに見えましたが、ここで私に初歩的なミスが出ました。
問題は△7五歩の歩交換から銀を繰り出した際に▲7六歩と打たれた局面。ここで△6四銀と引いては苦しいと判断した私は、代えて△8六歩と平然と歩を突きだしました。これに素直に▲8六同歩と応じれば、銀交換をして後手満足と思っていましたが、お相手が鉄壁の守りを生かして▲7五歩と銀を取られてしまい、思わず飛び上がりそうになりました。
▲7六歩には単に△7六同銀で十分互角の形勢。以下▲7六同銀には角を生かして▲7五歩と打てば銀を取り返すことはできます。以降は激しい変化の戦いに進行することになり、矢倉と雁木のどちらが守り切れるかの勝負となります。
さて、本譜。銀を取られた私は勢い△8七歩成から先手の陣形を乱して△7五角と歩を取り込み、△6四角と引いて飛車取りを狙います。俗にいう「コビン攻め」の態勢を受けるお相手。この飛車取りはどう防ぐのが正解でしょうか?
(残り時間 ▲2:03 △2:33)
4図以下の指し手
▲4六歩 △4五歩
▲3七銀 △4六歩
▲同 銀 △4五歩
▲3七銀 △3五歩
▲同 角 △3六歩
▲3八歩 △3七歩成
▲同 歩 △3六歩
▲7八飛 △3七歩成
(5図)
4図からお相手は▲4六歩と歩で角道を遮断する選択をしましたが、ここから一気に流れが変わります。構わず△4五歩からしつこく飛車を狙い、お相手の右銀は後退する事態になりました。△3五歩に▲3五同角と応じたところで形勢が入れ替わり、飛車を逃げるも右辺からの先手の攻めは消えました。
5図では▲4六歩に代えて▲4六角と角をぶつける手が優りました。以下は角交換から△7九角と角を放って龍を作り、後手の攻め、先手の受けの攻防になります。ソフト評価では先手有利の評価で、先手受け切り勝ちと出ていますが、人間心理ならスリリングでしょうか。
さて、銀損を回復した私はと金を作って右辺からの攻めを封じ込めて雁木は安泰。しかし、お相手は後手の下段玉に目をつけてある勝負手に打って出ます。
(残り時間 ▲1:20 △2:17)
5図以下の指し手
▲6八銀 △8六歩
▲同 金 △同 飛
▲8七歩 △8四飛
▲6五銀 △同 桂
▲7一飛成 △5一銀
▲6五歩 △5三角
▲同角不成 △同 金
▲6二角
(6図)
お相手の勝負手は5図から▲6八銀。7筋の飛車道を通し、飛車成から後手の下段玉を狙うというもの。一方で、8六の地点の守りが弱くなる懸念もあります。対する私はそのスキにつけ込み、△8六歩から金を取りこみ形勢は後手勝勢で進むかに見えました。
しかし、途中の▲6五歩の角取りに対して角をぶつけた△5三角が悪手で形勢がもつれます。▲6五歩には△8六歩が正着。以下は▲8六同歩△8七歩からの最終盤の攻防となります。
さて、本譜はお相手が角交換から▲6二角と放ちます。これは飛車取りと▲5一龍の両狙いで一見すると後手が窮したかに見えます。しかし、私はここで返し技でピンチをしのぎます。
(残り時間 ▲0:34 △1:58)
6図以下の指し手
△4四角 ▲6六桂
△5二金 ▲8四角成
△7一角 ▲6一飛
△4四角
(7図)
6図から△4四角が「この一手」ともいえる返し技。王手がかかっているので、当然王手を受けるわけですが、本譜は▲6六桂と受けさせてから△5二金と引いた手が守りをリフォームする手順。▲8四角成と飛車は取られましたが、△7一角と龍を取り返してピンチを脱出。その後もお相手は駒不足ながら必死の攻めで追い上げますが、私が丁寧に受け切ったところでお相手が時間切れ。118手で私の勝ちとなりました。
(終局図)
この一局を振り返ってみると、中盤の銀損をよく盛り返すことができたなと思います。おそらく、10分切れ負けや10秒将棋なら確実にとがめられていたと思います。スリリングな3切れ将棋の醍醐味を味わうのはいいですが、将棋とは別ゲームになってしまうということになるという意見も理解できます。
ちなみに私の村田システムの段級位は2.5段程度。戦法の段級位は勝てば勝つほど上がりますが負ければ当然下がります。現状は右玉との2本柱を形成していくことになります。
今回の記事がきっかけで村田システムをより知りたくなった方にこの2冊をご紹介します。
村田システムの創始者である村田顕弘六段は、昨年度の将棋大賞の升田幸三賞特別賞を受賞。昨年6月に「新村田システム」の本を発売されました。今後の村田システムの研究の行方も注目ですし、私の戦い方も変貌を遂げることもあるかもしれません。いずれにしても村田システムを極める戦いはまだまだ続きます。
さて、長々と話してきましたが今日はここまでとさせていただきます。本日も長文となりましたが最後までお読みいただきありがとうございました。