こんなおはなし

ふたたび玉座へ。
ラストエンペラー・溥儀は満洲国皇帝に。
日中史の最大の転換点を描き切る奇蹟の小説!

日本軍による張作霖爆殺で、自らの足を失った吉永将は、関東軍への強い不信を募らせていた。
満洲国建国の真の目的は何なのか。
1934年新京。
梁文秀、李春雲の支えを得て、溥儀はついに満洲国皇帝になる。


上海に帰還した張学良は、次々に襲い来る刺客を返り討ちにしつつ、
龍玉を抱きこの国を統べるべき救世主を探し続ける。

 

ついに「天子蒙塵」ラストの巻へ

う~ん。たくさんのおもちゃを出して遊んだ子供が、大急ぎでお片付けをし、残ったおもちゃがそのまま放置されてしまったような・・・。3巻に登場した日本人の子供や、かけおち夫婦はいったいどうした?

 

石原莞爾、満州国を語る

石原莞爾と、永田鉄山と、張作霖の爆破に巻き込まれた吉永大佐が帝国ホテルロビーで語り合う場面が圧巻。

個人的に知りたかったことが、彼らの会話から手に取るように分かった(といっても、本当のことは誰にもわからないんだろうが・・)。印象としては、以前の巻で描かれた石原莞爾像とは違い、彼なりのビジョンには納得するところもありました。

最終戦争としての相手をアメリカと考え、そのためには東アジアを一つにする「東亜連盟」を作る。その足掛かりとしての満州国。

わかるけど・・・。

 

今を生きる私には、日本人と中国人は、同じアジアに住みながら、決して一つになることはできないと思うんですよ。と、いうか、中国マジで怖いんですけど・・・。滝汗

 

張学良、戻る

イギリスから帰ってきた張学良は、中国大河シリーズ第6部の「兵諫」へ続く蒋介石の配下へ。

龍玉は、どうなったのかな?謎のまま終わったしまったけど・・・。

 

没法子(メイファーヅ)「どうしようもない」と言ってはいけない

この巻の中心は溥儀でしょう。そして、溥儀を通して(いや、中国大河小説すべてを通して)、浅田次郎さんが言いたかったことは、この「どうしようもない、と言ってはいけない」の一言に尽きるのではないかと思います。

 

これは、溥儀だけでなく、私たちに言われていることだと受け止めました。

これから、何が起こるかわからない。今までだって、予想もつかないことが起きてきました。しかし、嘆いてばかりいては、人は前には進めない。

『嘆く間があるのなら、どうにかするのですよ』

 

ちょっと長いおまけ

皇后の婉容が、子供を産み、その子はすぐボイラー室に投げ込まれます。

彼女は、アヘン中毒者だったので、「想像妊娠」なのかな、フィクションなのかな、と思って読んでいましたが、後にググってみたところ、事実。

溥儀と寝室をともにしたことがないので、明らかに不貞をはたらいたことになります。溥儀は、「生まれた子供は殺せ」と・・・。

 

1922年、当時16歳の婉容は、威厳があって美しく時代の先端を行くような進歩的な女性。ピアノやチェス、書道や絵画などに秀でる豊かな才能で貴族の間では非常に有名だったそうです。そして、彼女は皇后に選ばれました。

 

彼女の一生を考えると、かわいそうでなりませんね。夫婦関係を求めない夫。不貞、アヘンに溺れ、死亡後、その遺体には壊れた藁のマットが被せられただけだったそうです。皇后にさえならなければ・・・。

「没法子」と言ってはいけない。婉容にも、伝えたかった言葉です。

 


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