上空、帰る⑤

上空、帰る



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「いや、まぁ、姿形はほぼ同じだからさ、そういうこともあるのかもしれないけどさ……でも理性というものがさ、許さないと思うんだよ、俺はさ、普通」

 彼は狼狽している。でも、別にそんなに変な事だとは、僕は思わない。

「でも、祝ってくれたんです」

「……いや、どういうこと?」

「その時はまだ、ちょっとした知り合い程度だったのに、丁度1年前になるんですかね、去年、誕生日おめでとうって、声を掛けてくれたんです。適当に出鱈目に言った日付だったのに、覚えていてくれたんですよ」

「いや、そういうことでは……」

 彼は話を折ろうとしたが、僕は言い掛けてしまったので、勢いのまま最後まで言う。

「ほら、僕達って誕生日とか、あんまりそういうのを祝う風習って無いじゃないですか。まぁ1年の感覚が僕らはちょっと違うので、我々の星基準の誕生日とはズレてますし、自分の誕生日設定を今年はすっかり忘れていたわけですけど。でも、あれは嬉しかったなぁ……」

 あれは本当に嬉しかった。

 言って、僕は恥ずかしくなってしまったので、少し天井を見上げる。彼の吐き出した煙が勢いよく吸気口に吸い上げられていた。

「いや別に2人の馴れ初めを聞いているのではなく。あのさ、地球人は我々を受け入れてくれないから、地球人は殲滅するしかないって、2人で結論を出しただろ?」

 

 別にそのことに関して、意見が変わったわけではない。



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