心身社会研究所 自然堂のブログ

からだ・こころ・社会をめぐる日々の雑感・随想

血糖値低下はショウガが三冠王!

2024-03-25 08:58:26 | 健康・病と医療

血糖値低下はショウガが三冠王!

 スペインZaragoza大学のMaria C. Garza氏らは、2023年9月までPubMed、Web of Science、Scopusの各データベースを検索し、

地中海食に一般的に含まれるハーブ/スパイス(ブラッククミン、クローブ、パセリ、サフラン、タイム、ショウガ、黒コショウ、ローズマリー、ターメリック、バジル、オレガノ、

シナモン)が2型糖尿病患者の血糖プロファイルにどのくらい影響を及ぼすかについて、

システマティックレビューおよびメタ解析を行なった結果(77論文をシステマティックレビューの対象とし、そのうち45(3050例)をメタ解析の対象としたもの)、

いくつかのハーブ/スパイス、なかでも特にショウガの摂取が空腹時血糖、HbA1cおよびインスリン値の低下に有意に関することを明らかにしました。

具体的には――

 

空腹時血糖値が有意に改善したのは、ブラッククミン、シナモン、ショウガ、ターメリック、サフラン(以下、カッコ内は95%信頼区間)。

 ・ブラッククミン摂取群:26.33mg/dL低下(-39.89~-12.77、p=0.0001)

 ・シナモン摂取群:18.67mg/dL低下(-27.24~-10.10、p<0.001)

 ・ショウガ摂取群:17.12mg/dL低下(-29.60~-4.64、p=0.0004)

 ・ターメリック摂取群:12.55mg/dL低下(-14.18~-10.86、p<0.001)

 ・サフラン摂取群:7.06mg/dL低下(-13.01~-1.10、p=0.020)

 

HbA1cが有意に改善したのは、ショウガとブラッククミンであった。

 ・ショウガ摂取群:0.56%低下(-0.90~-0.22、p=0.0013)

 ・ブラッククミン摂取群:0.41%低下(-0.81~-0.02、p=0.0409)

 

インスリン値が有意に改善したのは、ショウガとシナモンであった。

 ・ショウガ摂取群:1.69 IU/μL低下(-2.66~-0.72、p=0.0006)

 ・シナモン摂取群:0.76 IU/μL低下(-1.13~-0.39、p<0.0001)

 

※各ハーブ/スパイスの最も一般的な摂取量は、ブラッククミン:500mg、シナモン:1,000mg、ショウガ:2,000mg、ターメリック:2,000mg、サフラン:30~100mg。

 

 著者らは、本研究の限界として「それぞれのハーブ/スパイスの用量が不均一であるため、有効用量を考慮することはできなかった」ことなどを挙げつつも、

「ショウガは、地中海食のハーブ/スパイスの中で、空腹時血糖、HbA1cおよびインスリン値の3つの検査結果すべてに有意な影響をもたらす独特のものであるようだ」と

まとめています。

 

<文 献>

Garza MC, et al., 2024  Effect of Aromatic Herbs and Spices Present in the Mediterranean Diet on the Glycemic Profile in Type 2 Diabetes Subjects: A Systematic Review and Meta-Analysis, in Nutrients, vol. 16, no.6, p.756. https://doi.org/10.3390/nu16060756

 

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ADHDと精神疾患リスクの関連

2024-03-07 08:45:18 | 健康・病と医療

ADHDのさまざまな精神疾患との合併率の高さが、これまで観察研究や診断基準などから示唆されてきていましたが、

このたび、中国・重慶医科大学のYanwei Guo氏らが、ADHDと6つの精神疾患との潜在的な遺伝的関連性を調査するため、

メンデルランダム化(MR)研究を実施したところ、以下のような結果が得られたとのことです。


なお、この研究は、2サンプルのMRデザインを用いて、ADHDと6つの精神疾患のゲノムワイド関連研究(GWAS)に基づき、

遺伝的操作変数(IV)をシステマティックにスクリーニングしたもので、分析の主なアプローチとしては、逆分散重み付け(IVW)法が用いられています。



・IVW MR分析では、ADHDと自閉スペクトラム症リスクとの間に正の相関が認められた(オッズ比[OR]:2.328、95%信頼区間[CI]:1.241~4.368)。
・ADHDは、統合失調症のリスク増加に対する正の関連も認められた(OR:1.867、95%CI:1.260~2.767)。
・ADHDとチック症、知的障害、気分障害、不安症との関連は認められなかった。

 

ADHDはASDや統合失調症との合併のリスクが考えられ、気分障害との合併リスクはさほどではないようです。

 

<文 献>

Guo, Y., Li, J., Hu, R., Luo, H., Zhang, Z.,  Tan, J. & Luo, Q.,  2024  Associations between ADHD and risk of six psychiatric disorders: a Mendelian randomization study, in BMC psychiatry, vol.24, no.1,p.99. 

 

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アレルギー性鼻炎か副鼻腔炎か? それが問題だ!

2024-02-26 19:50:28 | 健康・病と医療

アレルギー性鼻炎と診断されながら、実際には慢性副鼻腔炎(chronic rhinosinusitis;CRS)に(も)罹患していて、

その治療をしないといつまで経ってもよくならないということを実証する研究が、

アメリカのシンシナティ大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科のAhmad Sedaghat氏らによって発表されました。

 

この研究では、鼻にアレルギー症状が生じている219人(平均年齢44.3歳、女性63.9%)の患者を対象に、

CRSとアレルギー性鼻炎の症状を同時に評価するために、

経鼻内視鏡検査と、Sino-Nasal Outcome Test(SNOT-22)と呼ばれる質問票による副鼻腔および鼻の症状の重症度と種類の評価を行なったところ、

これらの患者のうちの91.3%(200人)でアレルギー性鼻炎の診断が確定されましたが、

同時に45.2%(99人)と半数近くの人がCRSの診断基準も満たすことが明らかになったのでした。

 

著者らの臨床上の印象でも、

CRSとアレルギー性鼻炎は、たしかに鼻閉や鼻汁など特徴的な症状はよく似ているものの、

10年・20年、時にはそれ以上にわたりアレルギーの治療を受けてきても症状が改善しなかったと訴える患者で、

しばしばCRSであることが判明し、それに応じた治A. R.,療を開始すると症状は数カ月以内に改善することが少なくないとのことです。

 

<文 献>

Houssein, F.A., Phillips, K.M. & Sedaghatet,A. R., 2024  When It's Not Allergic Rhinitis: Clinical Signs to Raise a Patient's Suspicion for Chronic Rhinosinusitis, in Otolaryngology Head & Neck Surgery.

  2024 Jan 31; doi: 10.1002/ohn.646. [Epub ahead of print]

 

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リフィーディング症候群(refeeding syndrome)と兵糧攻め

2023-12-20 12:49:09 | 健康・病と医療

以前、このブログで「リフィーディング症候群」について解説し、その典型例として、豊臣秀吉による兵糧攻めの事例を紹介しました。

 

このケースは、これまで国内の医学界では、同症候群の疑い事例として有名ではあったものの、関連する医学論文は発表されておらず、

あくまで逸話以上のものではないものとして扱われてきたようです。

 

そこで今回、鹿野泰寛医師(東京都立多摩総合医療センター)、青山彩香医師(JA茨城厚生連総合病院水戸協同病院)、

山本隆一朗学芸員(鳥取県立博物館・中世担当)の3氏が、豊臣秀吉による兵糧攻めの事例(「鳥取の渇え殺し」)に関し、

2年がかりで史料を集め、とくに『信長公記』と『豊鑑』の記述(以前のブログもご参照ください)を医学的見地から精査しました。

その結果、この大量死に関し、粥そのものには問題はなかったことを確認したうえで、

粥の摂食量の意図せずして行なわれたこの「比較実験」が生死を左右した点に注目し、食後の死は同症候群の疑いが強く、

事実であればこの事件は日本史上最初の同症候群の事例で、危険性と重要性を伝える重要な歴史的記録と指摘する論文を、

国際的な医学雑誌 American Journal of Medical Sciences に、重要な歴史的医学記録として査読付きで掲載したことを、昨日の朝日新聞は報じました。

ちなみに論文は、秀吉の肖像画が表紙を飾っています。

 

<文 献>

Kano, Y., Aoyama, S. & Yamamoto, R., 2023  Hyoro-zeme in the Battle for Tottori Castle: The first description of refeeding syndrome in Japan, in American

    Journal of the Medical Sciences. vol.366, no.6, pp.397-403. doi:10.1016/j.amjms.2023.08.015

 

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関東大震災の朝鮮人虐殺を裏付ける政府の新文書発見(陸軍機関作成)

2023-12-14 19:23:59 | 歴史・民俗

つい先ほどの毎日新聞の速報によれば、

私の知り合いで、かつて90年代末に、私の論文を朝日新聞紙上に紹介してくれたこともあるジャーナリスト・渡辺延志さんが、

このたび非常に重大な発見をされたとのことです。

それは、防衛省防衛研究所戦史研究センター史料室が所蔵する、埼玉県西部の5郡を管轄する「熊谷連隊区司令部」が作成した報告書、

「関東地方震災関係業務詳報」(大正12年12月15日)で、

                                                                 

 

関東大震災(大正12年9月1日)直後の11月に、当時の陸軍省が朝鮮人集団虐殺について行なった実態調査の一部資料です。

震災直後に、政府は違法な虐殺の事実を認識し、広範な調査を実施していたわけで、

今年8月に岸田内閣の松野博一官房長官(当時)が、記者会見で朝鮮人集団虐殺事件への見解を問われた際に、

「政府内に事実関係を把握できる記録が見当たらない」と述べたことを明確に翻覆するものといえます。

 

この公文書には、現在の埼玉県熊谷市内で保護のため警察署へ移送中の朝鮮人40数人が、

「殺気立てる群衆の為めに悉く殺さる」などの事実が報告されているうえ、

この事件を「鮮人虐殺」「不祥事」「不法行為」と表現し、

当事噂されていた「鮮人の襲来は遂に一名も来なかった。火付けもなかった。毒を[井戸に]投げ込まれた事も聞かない」との記述もあるとのことです。

 

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