悩み多き相続税対策~生前贈与は子をダメにする?

2024/02/25

税金

今回は相続税対策の話です。

ご存知の通り、日本では近年、増税が続いています。

人が死んだときに適用される相続税のルールも相次いで改悪され、国に持っていかれる金額が大幅に増えつつあります。



例えば、相続税の基礎控除額の計算式は以前、

5000万円+(1000万円×法定相続人の数)

というものだったのに、2015年からは

3000万円+(600万円×法定相続人の数)

というふうに変更されました。

これはつまり、夫婦と子供2人の家庭で1億円の資産を持つ父親が死んだ場合、以前なら1億円から基礎控除8000万円を差し引いた2000万円が課税対象だったのに対し、今なら基礎控除額が4800万円に圧縮され、5200万円が課税対象になるということです。(実際はもっといろいろ複雑な要素が絡んできますが)

さらに今年(2024年)からは、自分が死ぬ前に資産の一部を子供に譲る「生前贈与」のルールも改悪され、死期が近づいてからの相続税対策がますます難しくなりました。まさに「重税国家へ一直線」という感じです。

もちろん、こうした動きはFIREした人間にとっても重大事です。

そもそもFIREした人、特に子持ちでFIREした人というのは、人並み以上に稼いだり節約したりしてお金を貯めているものです。だから、将来直面する相続税への対策は今からしっかり考えておいた方が身のためです。

というわけで、どこまで参考になるかわかりませんが、僕が今、せっせと取り組んでいる相続税対策を紹介してみます。


不動産や生命保険を使った節税法

さて、冒頭から偉そうなことを書いている僕ですが、サラリーマン時代は相続税はおろか税金そのものについて深く考えたことはありませんでした。自分の給与明細さえまともに見たことがなかったくらいです。

しかし、4年ほど前に早期退職を決意し、資産運用の勉強を進めるうちに「相続税の知識って人生においてかなり重要度の高いマネーリテラシーなんだな」と感じるようになりました。

相続税対策について書かれた本を読むと、定番の対策がいくつか紹介されています。

例えば、不動産購入による節税。


これは相続税を算出する際に適用される土地・建物の評価額が、実際の市場価格よりもかなり低くなるという「歪み」を利用する方法。つまり、マンションなどを買って現金や株式の割合を減らし、相続財産の総額を小さくするわけです。

しかし、不動産投資に苦手意識の強い僕は「節税のために不動産を買った結果、ハズレ物件をつかんで大損したら本末転倒だよな」「そもそも不動産の売買って手続きが面倒臭そうだし」という思いが強くて、あまり実行する気になれません。

このほかに定番の相続税対策としては、生命保険を使った節税があります。

これは親が生命保険に加入して子供を受け取り人にしておくと、子供1人当たり500万円までの保険金には相続税がかからない、というルールを利用する方法。これなら誰にでも簡単にできそうです。

ただ、偏屈者の僕は「なんで生命保険がこんなに優遇されるの? これって政治家による保険業界への便宜供与じゃねーの?」などと余計な妄想が頭をよぎってしまって、今すぐ実行する気になれません。(いつかやるつもりではいますが…)


定番中の定番、暦年贈与

そんなわけで、結局、僕が行き着いたのは「相続税対策の定番中の定番」といわれる暦年贈与でした。

これは、自分が死ぬ前に資産の一部を子供へ譲る生前贈与の一手法。1年間の贈与額が受け取る側ベースで1110万円以下なら贈与税が発生しないというルールを利用して、毎年少しずつ資産を渡していくわけです。

さすがに、これなら僕でも簡単にやれそうだ!

というわけで、我が家では僕がFIREした2020年以降、3人の子供たちへ毎年1人100万円ずつ生前贈与を実行することにしました。

ただし、これで安心してはいけません。実はこの暦年贈与には、いろいろと落とし穴があるらしいのです。

例えば、単に子供名義の銀行口座にお金を振り込むだけでは、将来、税務署から「名義預金」だとみなされる恐れがあります。

どういうことかというと、僕が死んだ後に税務調査が入った場合、子供が税務署員から「あー、この預金は一応あなた名義にはなってますけど、実態としては亡くなったお父さんが管理していたわけだから、贈与が成立しているとは認められません。いわゆる名義預金ってやつです。 従って、この預金も相続財産にカウントしますので、相続税はもっと高くなりますよ」と宣告されてしまうわけです。


まるで悪夢のような展開。これじゃあ何のために毎年お金を振り込んできたのかわからなくなってしまいます。

税務署OBや税理士さんが書いた相続税の本なんかを読むと、こうした事態を予防するには、毎年子供にお金を渡すたびに、きちんと贈与契約書を作り、子供が成人した後は通帳や印鑑を本人に渡してしっかり管理させる必要がある、などと書かれています。要は、そのお金を名実ともに子供の所有物にしてしまわないとダメだということです。

では、こうした注意点を踏まえて我が家がどんなふうに暦年贈与しているかを紹介しましょう。


穴切家の暦年贈与

まず、僕がFIREした2020年、当時はまだ小中学生だった子供3人の名義でそれぞれ楽天銀行と楽天証券に口座を開きました。つまり、3人×2口座で計6口座を一気に開設したわけです。

そして、僕の銀行口座から子供の銀行口座へ100万円ずつ振り込む。そのうえで贈与の証拠をしっかり残すため、僕と子供との間で贈与契約書を交わしました。

契約書といっても大層なものではありません。ネット上で見つけた贈与契約書のひな形をプリントアウトし、金額欄などを埋めて双方がサインするだけです。

もちろん契約書ですから、僕自身が保管するものと、ゆくゆくは子供自身に保管させるものと2通ずつ作成します。以上で贈与の手続きは終了です。

ただし、うちの場合はまだ作業があります。せっかくお金を贈与したのだから、それを元手にして子供たちに資産運用をさせるのです。

具体的には、子供たちの銀行口座に振り込んだ100万円のうち80万円はすぐに彼らの証券口座に移し、ジュニアNISA制度を利用してインデックスファンドを購入します。銘柄は、僕が自分のNISA口座で買っているのと同じeMAXIS Slim全世界株式(除く日本)です。

こうした作業を2020年から毎年続けてきたのですが、残念なことにジュニアNISA制度は2023年をもって廃止されてしまったので、今年(2024年)からは子供の特定口座でファンドの購入を続けることにしています。

さらに、今年の正月、僕は子供たちにこう宣言しました。

「これまでは毎年、全世界株式(除く日本)のインデックスファンドを買い続けてきたけど、もうお前らの好みで投資先を変更してもいいぞ。とりあえず、除く日本か、オルカンか、S&P500か、この三つの中から好きなのを選べ」

すると3人とも「今まで通りでいい」と答えました。

僕としては、子供たちの投資先が適度にばらけて、毎年成績を競い合うような展開を期待していたのですが、意外とおとなしく現状維持を選択したので、やや肩透かしを食った気分です。

ちなみに、僕はよく家事をしながら投資系のYouTube動画を流しているので、子供たちもオルカンやS&P500が何を指しているかくらいはわかっています。

まあ、3人とも知識として知っているだけで、まだそれほど投資自体に関心がないのでしょう。


若いうちに大金を渡すとダメ人間になる?

さて、ここまで読んでくれた方の中には、こんな感想を抱いた人がいらっしゃるかもしれません。

「いくら相続税対策だからといって、さすがにやりすぎじゃない?」

「若いうちからそんなに大金を持たせてしまったら、自分でお金を稼ごうという自立心が育たなくなってしまうんじゃない?」

いや、おっしゃる通り。

まさに僕もその点を一番心配しています。

世の中には「児孫のために美田を買わず」という格言があります。これは西郷隆盛の言葉ですが、この考え方は確かに正しくて、苦労せずに親から財産を受け継いだ者がダメ人間になってしまう例は枚挙に暇がありません。

例えば週刊誌には、大物政治家や大物俳優のドラ息子が、親の金で好き放題遊びまくってトラブルを起こした話があふれかえっています。



でも、だからといって子供の口座をいつまでも僕が管理していたのでは、先に述べた通り、将来、税務署から「これは名義預金だ」と宣告されて、ドーンと税金を取られてしまいかねません。

だから僕としては、せいぜい今のうちに

「いいか、このインデックスファンドを取り崩していいのは、お前が人生の危機に直面した時だけだからな」

「自分が欲しいものは、あくまで自分が稼いだお金だけで手に入れるんだぞ」

「親からもらった財産と自分で貯めた財産とは、きっちり分けて管理するんだぞ」

と子供たちに言い聞かせています。

そして、彼らが成人したあかつきには、きれいさっぱり管理を引き継ぐつもりです。

もしも、我が子が教えを守らず、渡した資産に安易に手をつけてしまったら……?

そのときはもう仕方ない。愚かな子を持ってしまったと諦めることにします。




ちょうどこの文章を書いている今、一番下の娘(中3)が近くにいたので、「お前、お父さんが言ったことをちゃんと守れる?」と聞いてみました。

娘は「そりゃあ守れるんじゃない」とケロッとした様子。

う~ん、どうなることやら…


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コロナ禍のなか、45歳で新聞社を早期退職し、念願のアーリーリタイア生活へ。前半生で貯めたお金の運用益で生活費をまかないながら、子育てと読書と節約の日々を送っています。

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