2017年5月から始まった、サッカー元日本代表の前園真聖さんの自転車遍路旅。「徳島編」「高知編」「愛媛編」に続いて、いよいよ結願の「香川編」となります。札所最高峰の雲辺寺もある香川県ですが、はたして無事に結願できたのでしょうか。「前園真聖 自転車へんろ旅「香川編」」のレポートのスタートです!
NHK「前園真聖 自転車へんろ旅「香川編」」鑑賞レポート
「愛媛編」は非常に盛りだくさんの内容でしたが、正直言ってそれに比べると「香川編」は少し大人しい印象です。札所最高峰の第66番札所雲辺寺も、まさかのロープウェイで登っておられましたので。それでも、最後は結願にふさわしい名言も残しておられます。それでは、「香川編」のレポートです!
番組について
番組情報
制作国:日本
制作 :NHK松山
制作年:2018年
公開日:2018年6月
データ:カラー/43分
出演
前園真聖
スタッフ
ナレーション:首藤奈知子
技 術 :岡田淳
撮 影 :増田泰伸・中村健司
音 声 :平尾仁志
映像技術:鈴木達也
美 術 :南屋武広
音響効果:森原健晃
編 集 :松浦信善
ディレクター:寺岡三智子
プロデューサー:三木章弘
制作統括:眞木隆志
内容紹介
1400キロに及ぶ「自転車へんろ旅」最終章の香川は、険しい岩場や霧深い道など試練の連続。それでもすべての霊場を巡り終える「結願」へ…と思ったら!驚きの結末!?
※NHKホームページより引用*1
番組を見て
番組を見て、思ったところを書いていきます。
純粋な感想(ネタバレもあるかも)
相変わらず、面白いのは面白いです。しかしすでに書いたとおり、見所は「愛媛編」の方が多かったでしょうか。
ただ、この番組の認知度はますます上がっているようです。いろんなところで「見てます」と声をかけられていました。とくに、捨身ヶ嶽の登山道でお会いした1万7千回登っておられるというおばあさんは印象に残りました。
さて、香川県は「うどん県」の別称もありますが、結局うどん屋さんに入った様子を映した場面は1回きりでした。
さらに言えば、このお店、店名を出したくないのか店名の紹介がありませんでした。ですので何というお店か分かりませんが、なかなかユニークな取り組みをやっておられます。ポットに出汁を入れて置いてあり、お客がイリコかカツオかを自分で選んで入れることができるのです。もちろん、ブレンドもオッケーですよ!
前園さんは最初地元産だと聞いてイリコ出汁を入れましたが、途中でカツオ出汁を加えて味変しておられました。
さすがはうどん県、店によってさまざまな工夫が見られますね。ちなみに店主?らしき恰幅のよい男性の方のお名前は、合田賢史さんです。お心当たりのある方は、ぜひお店の名前をご教示ください。
今回はグルメ紹介も少なかったのですが、あと紹介されていたのは「おいり」でした。
おいりとは、お餅を小さく切ったものを、鍋を回しながら炒ったお菓子で、砂糖などをまぶして食べます。ピンクやモスグリーンの色がつけられているものもあり、カラフルで見た目にもかわいいスウィーツです。ひなあられに似ているような気もします。こんぴらさんの周辺のお店では、おいりソフトなんかも売られています。私もいただいたことがあります。
前園さんは「花嫁おいり」という看板を見て気になってお店を訪ねられました。どうやらこの地方では、おいりが400年以上前から親しまれてきたお菓子で、結婚式の引き出物によく使われているそうです。これは私の推測ですが、おそらく「おいり」という名前が「嫁入り」を連想させて、縁起がいいと思われたのでしょうね。
前園さんは作っている工程も見学させてもらっていましたが、味付け前のおいりを試食して、「サクサクで香ばしくておいしい」と評しておられました。
あとの内容はもうほとんどお遍路関係でしたね。結願所である第88番札所大窪寺に至るルートでは、早速これまでの回想シーンを流していましたが、まだ最終回じゃないんですよね。
最後の最後、ディレクターの方が感想を聞いておいた上で、納経帳の最後のページを開いてください、ということで種明かしです。お礼参りへと行かないといけない、というわけです。まさかの騙し討ちに、前園さんも「知ってて何で終わらせようとするの」と思わずこぼしておられました。
巡礼者目線の感想(ネタバレあり)
今回はお遍路に関連する情報が多かったように思います。
しかし、最初に断っておきます。雲辺寺、ロープウェイで行くなよ~、ですね。
実は「徳島編」でも、第21番札所太龍寺に苦労して登っている様子が描かれていませんでした。
これまで、第12番札所焼山寺、第20番札所鶴林寺、第27番札所神峯寺、第60番札所横峰寺といった山寺では、自転車を必死で漕いでいる場面が描かれてきました。その中で前園さんは、足を一度も地面に着かないように登る、という戒めをご自分に課され、一所懸命登っておられました。
しかし、雲辺寺ではロープウェイに乗っている様子が放送されていました。まあこれは番組制作側の責任ですね。前園さんはおそらく、徳島県側から自転車で登れるということをご存知なかったんじゃないですかね。
というわけで、ロープウェイですが、前園さんは私と同じくかなりの高所恐怖症のようです。「高知編」で第33番札所雪蹊寺へ向かう途中、浦戸大橋を渡る際に「怖い怖い」とおっしゃっていたくらいですので、なかなかのものですね。
ですので、今回雲辺寺ロープウェイをご利用されたシーンでは、めちゃくちゃ怖そうに窓の柵に捕まっていらっしゃいました。何と2号支柱と3合支柱の間、1,882メートルはロープウェイの支柱間の長さとしては日本最長を誇っているそうです。
これ、すごいですよね。1,882メートル、重みで垂れ下がったロープを進んでいくわけです。私も、ますます乗ろうという気が失せてきました。しかも、前園さんに「大丈夫ですか、安全上は」と聞かれた係員の鴨居宏さんは、何と「大丈夫な、はずです」とお答えになるではありませんか。まあユーモアというかリップサービスなんでしょうが、ロープウェイ嫌いの私としては、やはり敬遠するしかないですね。「敬して遠ざける」です。
第66番札所雲辺寺では、例によって徳島県と香川県の県境を発見します。まあ、テンションが上がるところですよね。ただ、お寺の情報などは少なかったでしょうか。
第68番札所神恵院・第69番札所観音寺では、誰もが思う「得した気分ですね」の感想を言っていると、何とご住職の羽原清祇師から自転車用の道中着のお接待が! ご住職自身も自転車で走られるということで、考えついたんだとか。ただ、おそらくこれはテレビ番組であり、有名な前園真聖さんだからお接待されたんだと思われます。一般の自転車遍路の方はお金を出して買いましょう。
第70番札所本山寺の五重塔はちょうど修復中でした。私も2020年11月3日に車遍路で訪問した際はまだ修復中で、幕に覆われていました。それが、2021年8月24日に歩き遍路で訪れた際は、きちんと拝見することができました。
さすが前園さんと言うべきか、テレビの力と言うべきか、何と幕の中に入れてもらっていました。修復作業の様子を見学させてもらったのです! しかもご住職の長田実健師自らご案内してくださっています。うーん、うらやましいですね。
これも貴重な経験でしたが、第73番札所出釈迦寺でも貴重な経験に挑戦されます。捨身ヶ嶽禅定に挑戦されたのです。
しかし、これは高所恐怖症の方にはツライ! 出釈迦寺の奥の院の本堂から、崖を80メートルほどよじ登った所が、実は弘法大師空海が身をお投げになった霊場なんですね。簡単にだけ説明しておきますと、弘法大師がまだご幼少のみぎり、自分が衆生を救う力があるなら、仏さま、身を投げる私をお救いください!とここから身を投げたところ、何とお釈迦さまが現れてお救いくださったということです。鎖場を登っていかなければたどり着けない難所中の難所で、ついに前園さんもギブアップです。私も100%無理です。映像を見ているだけで、手に汗をかいてきましたから。
ここで、お遍路さんにとって貴重なお店を一つご紹介しておきましょう。五色台と呼ばれる台地の上にある二つの札所、第81番札所白峯寺と第82番札所根香寺の間にある、みち草です。
おそらく五色台唯一の飲食店で、他のお遍路番組でも紹介されていました*2。
前園さんが注文されたのは、ボリューム満点の焼きめしカツカレー! また前園さんが美味しそうに食べること、食べること。たまたま五色台は深い霧の中に沈んでいたので、身体も温まって最高に美味しかったんじゃないでしょうか。店主の渡辺ヤス子さんがお一人で切り盛りしておられるようで、遍路道のオアシスになっています。しかし、渡辺さんもご高齢な様子ですから、いつまでお店がつづけられるかは心配なところです。
では、最後は無事に結願を果たした前園さんの言葉で締めくくりたいと思います。
ずっと来たわけですから、これはすごい、ありがたいね。これはもう一生の宝物ですよ。ひとつひとつ、ひとこぎひとこぎ来ましたから。
お遍路っていうことだったんですけど、僕はその八十八ヶ所を回るっていう中の、途中途中の、いろんな人との出会いとか、お接待していただいた方とか、そういう人たちとの出会いが、すごく、僕は心に残ってて。いろんな応援してくれる人、見てくれる人、声かけてくれる人がいるから、自分がいるんだなという、みんなに助けられて自分がいるんだなという、改めて実感しましたし、その中の一つのゴールがやっぱりお寺だったので。
1歩1歩進む、ひとこぎひとこぎでやっぱりちゃんと前に進むんだなというのを。まあ人生と一緒ですよね。改めて感じましたね。出会いと、出会いをくれた八十八ヶ所を回るお遍路に感謝かなと、今はそういう気持ちです。
最後に
前園さんご自身はもうこれでやり切ったという感じで、最後の言葉は本当に仏さまのような優しいお顔でおっしゃっていましたが、何と何と、実はまだ続くんですね。
それがお礼参りで、第1番札所に戻らないといけないわけです。さらに、実は納経帳には高野山奥之院のページもありますから、そこまで行かないといけません。
本当に騙し討ちのような感じで、前園さんも驚いておられましたが、次回こそいよいよ最終回です。もう配信期間も残りわずかですが、ぜひみなさんもご覧ください!
「前園真聖 自転車へんろ旅「香川編」」
※NHKプラスでの配信は2025年1月23日(木)2:43まで。下記リンクからNHKプラスに飛べます。
www.nhk.or.jp(2025.1.19閲覧)
オススメ度:☆☆☆☆☆
*1:NHKホームページ「番組表」2025.1.19閲覧
*2:あいテレビホームページ「よるマチ!」2025.1.19閲覧