西国お遍路“行雲流水”

西国三十三所や四国八十八ヶ所を雲のごとく水のごとく巡礼した記録

お遍路テレビ鑑賞⑥ NHK「前園真聖 自転車へんろ旅「お礼参り編」」を観ました!

「前園真聖 自転車へんろ旅「お礼参り編」」タイトルシーン ※スマホで撮影

前回の「香川編」で無事に結願し、自転車へんろ旅も終了!かと思いきや、騙し討ちのような感じで延長戦開始です。第1番札所霊山寺に戻り、さらに海を渡って高野山奥之院を目指します!

NHK「前園真聖 自転車へんろ旅「お礼参り編」」鑑賞レポート

「香川編」では、第88番札所大窪寺で無事に結願を果たし、番組最終回らしい挨拶で締めくくっていた前園真聖さんですが、何とスタッフからお礼参りの騙し討ちが! 苦笑いしきりでしたが、今回、いよいよお礼参りに出発します。それでは、「お礼参り編」のレポートです!

番組について

番組情報

制作国:日本

制作 :NHK松山

制作年:2018年

公開日:2018年11月

データ:カラー/43分

出演

前園真聖

兼信優(自転車へんろ旅サポーター)

スタッフ

ナレーション:首藤奈知子

撮 影 :中村健司

音 声 :井上俊勝・平尾仁志

映像技術:鈴木達也

美 術 :南屋武広

編 集 :松浦信善

音響効果:森原健晃

取 材 :三木章弘・吉川拓見

ディレクター:寺岡三智子

制作統括:眞木隆志

内容紹介

1400キロに及んだ自転車へんろ旅。前園は納経帳最後のページを埋めるため「お礼参り」へ!道中、懐かしい再会あり、珍しい生き物との出会いあり。そして最終目的地へ。

※NHKホームページより引用*1

番組を見て

番組を見て、思ったところを書いていきます。

純粋な感想(ネタバレもあるかも)

いやあ、今回も面白かったですね。

まず、今回の出発点、第88番札所大窪寺門前の野田屋さんからしょうが入りのくず湯のお接待をいただきました。これもやっぱり前園真聖さんだからなんでしょうねえ。「いつも見てます」という言葉もありましたし。しょうがは冬場だと身体も温まって、うれしいでしょうね。

その後、おそらく私と同じように県道2号津田川島線を南下して徳島県に入られたようです。第10番札所切幡寺近くから東へと進み、第6番札所安楽寺には寄られていました。ここは、自転車へんろ旅を始めて最初の夜を過ごした場所です。温泉のある宿坊に泊まられたのでした。

回想のVTRが流れましたが、やはりどことなく緊張した面持ちでしたね。まだ番組も放送前で、四国の人にも知られていなかったからか、食堂で静かにご飯を食べておられました。「距離そんなにないのに、すごい筋肉痛になった覚えがあるんですよ」と懐かしそうに振り返っておられました。

このあとは、もちろんカステーラのお店ですね。遍路道沿いにある、末広堂にお邪魔しました。

看板に「カステーラ」とこだわり?を持って書いている風なのに、お店のおかみさんは「知らん、じいちゃんが書いとんじゃ」と笑顔でスルー、ご主人も「看板屋さんが書いとるけん、僕、意味わかりません」とのまさかの返事だったのが印象的でした。

その後、どうやらテレビを見た人からの反響が結構あったようですが、おかみさんの別所竹子さんはどうやら当時前園さんことをご存知なかったようです。「うちは野球人だろ」(※知らんがな)ということで、サッカーには関心がなかったそうです。前園さんが「(僕のことを)何だと思っていたんですか?」と聞くと、「何とも思うとれへん」とこれまた前回と同じく正直なお返事でした。いいですねえ、田舎の素朴な老夫婦という感じです。

ところがご主人の別所孝勝さんは、何と平成2年6月に放送された「NHK俳句」で入選したこともあるんだとか。それが次の句です。

出番待つ トリオ手に手に 夏帽子

いいですね、この俳句は。面白いです。私は俳句の素人ですが、いいということだけは分かります。最初の「出番待つ」という5文字で、何の場面だろうと想像する楽しみが出てきます。そしてどうやら舞台袖なんでしょうか、もしかすると野天の舞台か何かで、待っている間に被っていた夏帽子を今は手に持っている、ということでしょうかね。俳句の説明はありませんでしたが、面白いということは私にも分かります。

ここで、前園さんも「愛媛編」で嗜んだ(※放送中では第50番札所繁多寺で一句詠んだのみ)俳句の腕前を披露されました。

十月に 感謝の味と カステーラ

うーん、これはイマイチですが、「愛媛編」の時よりはいいですかね。

まず、「十月」というのは旧暦にしないといけないですね。そうすると、「神無月」です。「感謝の味とカステーラ」というのがまたよくないです。「感謝の味」というのはカステーラの味のこと、「カステーラ」というのはもちろんカステーラのことで、両方ともカステーラのことを言っています。ですから、表現を変えないといけません。

添削してみました。こんな感じでどうでしょうか。

神無月 感謝の味よ カステーラ

一番強調したい「カステーラ」はやはり最後に持ってきたいですよね。そうすると、「感謝の味と」ではなく、「感謝の味よ」にすることで詠嘆の意味を表しています。夏井いつき先生、ぜひ「才能あり」でお願いします!

あとは尺の問題もあるんでしょうが、なぜかザリガニを取っている時間まで放送されていました。まあコウノトリの営巣地の見学に行っていてのことですが……。やはり「愛媛編」ほどの内容はないようです。

そして、いよいよ南海フェリーに乗って和歌山へ!

和歌山城の横を華麗に走行し、紀の川沿いを優雅に走って、高野山を目指しました。

そこで何と、この旅初めての自転車のパンクが!

四国4県、1,400kmを走っていてもパンクしていなかったのに、最後の最後近くでまさかのパンクとは……。まあ、仕方がないですよね。ここまで酷使されていたわけですし。並走していた自転車遍路サポーターの兼信優さん(※「徳島編」以来の登場)が、修理してくださいました。

このちょうどパンクした場所なんですが、車を停められるところを探していたのか、県道13号線から少し北上した紀の川市役所那賀支所のすぐ側でした。奥に、セブンイレブン 紀の川名手大黒店も見えます。

どういうルート?と思いました。

最後に、高野山奥之院参拝も終わり、納経所にて記帳・押印をしてもらった後、四国の方々へのメッセージを求められた前園さんの言葉を載せておきます。

四国を回っていてですね、本当にたくさんの方が、声をかけていただいて、応援していただいて、みなさんの心温まる優しさが僕のパワーに変わっていったので、本当にありがたく思っています。感謝の気持ちしかないです。

へんろ旅はこれで終わりではありますけれども、自分自身はここからまたスタートだと思っていますし、四国のみなさんにお世話になりっぱなしで、何も恩返しができていないので、ぜひ、また四国に足を運ばせてもらって、みなさんに恩返しできればいいなと、そういう日が来ればいいなという風に思っています。

本当にありがとうございました。

巡礼者目線の感想(ネタバレあり)

今回も巡礼に関する情報が多かったように思います。

実は私はお礼参りとして第1番札所にお参りしたことがないんです。1回目の車遍路でも、2回目の歩き遍路でもそうでした。理由は単純なことで、第1番札所だけ2回巡ることになるので、札所間の公平性が損なわれる、ということです。

他の方のブログを拝見していても、同じように考えられる方が多いのか、半分弱くらいの方はやはり第1番札所には戻られていないようです。そもそもお礼参りとは、自分の家の近くのお寺なり神社なりに、無事に帰還したお礼すればいい、というものですからね。

しかし、前園さんの今回の様子を見ていたら、私も今度は行ってみたいなと思いました。特別な文字を書いていただけるんですね。

私も改めて自分の納経帳2冊を見返してみると、第1番札所霊山寺の本来のページには、「釈堂」と書いてあるようでした。これは、霊山寺ご本尊が釈迦如来だからだと思います。

今回お礼参りで訪れた前園さんが書いていただいたのは、「願行成圓」の4文字です。前世より願っていた仏の修行が、円満に成就したという意味だそうです。これは欲しいですね。

でも、第1番札所じゃなくてももらえると思います。何だったら、自分の気に入っているお寺でもらってみてもいいかもしれません。

そして、いよいよ高野山の大門に到着です。何と麓からは19kmほど、途中のお店の方のお話では車でも40分ほどかかるという山道を登ってきました。あ、ちなみに私は歩いて登りました。その模様は「四国八十八ヶ所 歩き遍路 46日目(2024.8.9) 満願への6日目 高野山参詣道「町石道」を行く」でご覧ください。

壇上伽藍では、金剛峯寺安田空源師に三鈷の松を案内していただきました。普通、松の葉は2本、二又になっているわけですが、中には葉が3本、三又になっているものがあるということで、安田師が説明してくださっている間に、前園さんは早速見つけてしまいました。安田師も若干引いてしまっているぐらい驚いておられます。さらに、スタッフが拾ってみせて普通はやはり2本だという話をしているそばから、すぐにまたもう一つ見つけてしまいました。これにはもう安田師もドン引きで、スタッフが「珍しいですか」と問うと、「珍しいというか最速ですね」と驚嘆しておられました。

サッカー元日本代表ですから、もちろん目がいいこともあるんでしょうが、やはり一流なんでしょうね。強運の持ち主というわけです。ナレーションの首藤奈知子さんも「さすが前園さん!」と手放しで讃えておられました。

ちなみに首藤さんはもともと松山市ご出身で、最初はNHK松山で修行された後、2007年度から2017年度まで東京に転勤となり、しばらく「おはよう日本」を担当しておられました。その後2018年度から2021年度までまた松山に戻られ、2022年度から再度東京に転勤となり、再び「おはよう日本」のキャスターを務めておられます。

この後、安田空源師の案内のもと金剛峯寺参拝しました。ここで、職人さんたちの深い考えを知ることができました。大玄関に向かって右側奥の窓の彫刻が、実は未完成になっているそうなのです。これはつまり、完成したものはあとは朽ちていくだけだが、未完成のものはまだまだ完成に向かってよくなっていくばかりで、朽ちることはない、という考えからそうなっているそうです。いやあ、知らなかったですねえ。今度見てみたいと思います。

ちなみに安田空源師も高校卒業したての9年ほど前、2月3月ごろに歩き遍路をされたことがあるとか。野宿しておられたらしく、マイナス2度かマイナス3度くらいになった時に、全身に温かいところが一つもない状態になったそうです。要するに、低体温症になる寸前ということでしょうかね。そして、その時に「もしかして目をつぶったら死ぬかも」と思ったらしく、「死に対してちょっとだけ覚悟ができた。ちょっとだけ仏教の扉が開いたような気がしました」とお話してくださいました。

そうなんですよね、お遍路をしていると、誰でも一歩間違えれば死んでしまいそうな経験をしているんですよね。

そこで前園さんも、高知でマイナス4度のなか出発したお話をされました。以前「高知編」でレポートさせていただいた話ですね。「寒いというか体が冷たくなってきて、死を覚悟する前にすぐ、休憩しましたね」とオチまでつけられました。安田師も笑いながら「賢明(な判断)だと思います」と言っておられました。

この日の最後は、宿坊での宿泊でした。放送中にはどこの宿坊かご紹介がなかったのですが、私が調べた限りでは宿坊普門院*2だと思われます。庭園が一致しますね。お値段はなかなかすると思われます。

宿坊では朝のお勤めも体験し、すっきりとした表情で奥之院へと向かわれました。宿坊から一の橋一の橋から奥之院へとどうやら歩いていかれたようですね。

奥之院は聖域ですから、NHKといえどもカメラは入れません。撮影禁止の根本大塔では、もちろん許可をもらってのうえでしょうが、中で撮影しておられましたが。奥之院に関しては、例外なし!ということですね。

奥之院から出て来られた前園さんは、弘法大師さまに何をお話になったかと問われ、次のように答えておられます。

四国八十八ヶ所の、旅の、旅を無事に終えられたということと、いろんな方に助けていただいて、ここまで来られましたというご報告と、感謝を伝えてきました。

本当に、仏さまのようないいお顔をしておられました。

最後に

この「自転車へんろ旅」のシリーズが好評だったことから、この後もNHK松山放送局の制作で「しこく絶景旅」「四国ともたび」「四国推したび」へと系譜が続いていくわけですね。これだけの人気シリーズになるのも納得の面白さです。

もう前園さんにとっても、四国は第二の故郷とでも呼べる存在になっているのではないかと思います。毎回毎回「感謝」という言葉を述べておられましたから、それだけみなさんに励まされたということでしょう。今回のような総集編ではなく、本放送の時はもっと一般の方々とのふれ合いの様子も描かれていたのかもしれません。

とにかく、ある程度の知名度がある前園真聖さんが自転車でのお遍路旅をされたということで、とても面白い番組ができたんじゃないでしょうか。最初にキャスティングした人、素晴らしい人選でしたね。

みなさんも、ぜひぜひご覧ください。配信期間の終わりが近づいています。お見逃しなく!

「前園真聖 自転車へんろ旅「お礼参り編」」

※NHKプラスでの配信は2025年1月23日(木)3:26まで。下記リンクからNHKプラスに飛べます。

www.nhk.or.jp(2025.1.19閲覧)

オススメ度:☆☆☆☆☆