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首相の米演説、レーガン流で共感 ウクライナ支援後押し

2024-05-02 09:54:02 | 日本政治・外交


首相は上下両院合同会議の演説で米国の内向き志向の反転を狙った(4月11日、ワシントン)=ロイター

 

バイデン米政権はウクライナ支援の緊急予算を4月下旬に成立させた。

米国内には岸田文雄首相の直前の上下両院合同会議での演説が後押ししたとの評価がある。日本国内で逆風にさらされる現状で、首相が周到に準備した過程が明らかになった。

4月20日、野党の共和党が多数を占める米下院の緊急予算をめぐる討論。

共和、民主両党の議員が「米国のリーダーシップは不可欠だ」と説いた首相の演説を引用した。

首相が演説で議場の気を引いたのは英語での冗談の連発だった。

「日本の国会ではこれほどすてきな拍手を受けることはまずない」と自虐で切り出すと、米アニメ「フリントストーン」の合言葉「ヤバダバドゥー」を持ち出した。

 

「メッツやヤンキースを応援した」。少年時代に野球を観戦した思い出を紹介するくだりでも笑いが起きた。2球団の本拠地があるニューヨークのなまりを使った。

政治家のユーモアは日本以上に意味を持つ。演説づくりには1980年代に30歳代でレーガン米大統領のスピーチライターを務めたランドン・パービン氏が参画した。在米日本大使館と長く協力関係を結び、首相の過去の英語の演説も監修した。

 

パービン氏はレーガン氏在任中の最大のスキャンダルとされた「イラン・コントラ事件」でレーガン氏が責任を認めた87年のテレビ演説などに携わった。

日本の首相として上下両院合同会議で演説したのは安倍晋三氏と首相しかいない。安倍氏は腹心のスピーチライターの谷口智彦内閣官房参与(当時)を起用した。首相は秘書官らが作成した草稿にパービン氏を含む複数の助言を盛り込んでいった。

 

首相はパービン氏らが録音した発音を何度も聞き返し、3回リハーサルした。バイデン大統領夫妻主催の公式晩さん会でも英語でジョークを飛ばした。

過去の事例を振り返り、日本語で冗談を逐語訳すれば「笑いにタイムラグが起きる」とみた。

 

ユーモアをちりばめた演説に秘めたメッセージは2つあった。一つは米国の内向き志向を反転し、国際社会での指導的立場を維持することだ。

トランプ前大統領が掲げる「米国第一主義」は党派を超えて広がり、「他国のために米国人が血を流し、カネを払う必要はない」との意見は強まる。

 

首相周辺は「ウクライナ支援で踏み込めば、一部の共和党議員は拍手しないかもしれない」と助言した。

首相は意に介さず、演説で「米国の支援がなかったらウクライナの希望はどれほど前に消えたか」と米国の指導力を求めた。

 

もう一つは日本国内に向けた発信だった。首相は演説で自由で開かれた国際秩序の維持のために「日本は米国とともにある」と呼びかけた。

首相官邸には「台湾有事で危惧するのは米国の戦争に日本が巻き込まれるシナリオではない。
米国が傍観して日本が単独で向き合う事態だ」との危機感がある。

 

米国のアジアへの関与を引き出すには日本も責任と負担を背負う必要がある。

ウクライナ支援の緊急予算が関門だった下院を通過した最大の要因はトランプ氏が反対姿勢を取り下げたからだ。

 

ジョンソン下院議長(共和)は日本政府関係者に「演説のおかげで予算が通った」と首相の貢献も認めた。

帰国後の首相を待ち受けた国内世論は厳しい。自民党は4月28日投開票の衆院3補欠選挙で全敗した。首相は4月30日、記者団に「(派閥の)政治資金の問題が大きく重く、足を引っ張った」と敗戦の弁を述べた。

 

日本経済新聞社とテレビ東京が4月29〜30日に実施した世論調査によると、内閣支持率は26%と3月の前回調査から横ばいだった。「支持しない」は3ポイント上昇の69%と政権発足後、最多を更新した。

政治不信は強く、外交は得点にならない。「首相の支持率はなぜこんなに低いのか」。日本政府高官は米政府の知人に尋ねられ、返す言葉がなかった。

 

首相が演説で国内に問いかけた「米国とともにある日本」は世論の理解と共感が欠かせない。世論調査では政治資金問題への首相の対応を「評価しない」との声が8割に達した。

政治不信を最優先で解消しなければ、演説の評価は一時の熱で終わる。

(秋山裕之)

 

 

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日経記事2024.05.02より引用

 

 

 


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