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「反物質」なぜ消えた? 宇宙誕生の謎解明へ実験

2024-05-01 00:47:26 | 科学技術・宇宙・量子・物理化学・生命・医学・生物学・脳科学・意識

この宇宙は90種類あまりの元素からなる様々な物質でできている。しかし、宇宙誕生の直後は電気的な性質だけ逆になった「反物質」もできていた。

しかし今は反物質が消えてしまい、物質に満ちあふれている。その謎に迫る研究の準備が茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構で進んでいる。来年末に実験に移る予定で、宇宙の成り立ちを巡る謎の解明に期待が集まっている。

 

2009年に日本で公開されてヒットした映画「天使と悪魔」では、反物質兵器が登場する。

反物質は物質と電気的な性質がプラスとマイナスの違いがあるだけで、質量などはまったく同じ。出合うと光を出して消滅し、大きなエネルギーが発生する。

 

究極の大量破壊兵器をつくるため、研究機関から反物質が盗まれるという筋書きだ。

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実は138億年前、宇宙誕生のビッグバン(大爆発)で、物質と反物質が同じ数だけできたと考えられている。

本来なら、物質も反物質とぶつかって一緒に消え去っていてもおかしくない。

 

しかし、今の地球には反物質はほぼゼロで、この広い宇宙にも反物質でできた星は見あたらない。物質だけが残った理由があるはずだ。その謎の解明は現代の物理学の大きなテーマになっている。

その謎に迫ろうとする実験施設が高エネ機構の新型加速器「スーパーKEKB(ケックビー)」だ。敷地の地下11メートルにあり、1周が約3キロメートルの円を描く。2月に試験運転を始めた。

 

反物質が消えたのは、物質と反物質の間に微妙な性質の差があったからだ。このため、10億個に1個の割合で物質が消えずに生き残ったと考えられている。

物質が優勢になったのは宇宙誕生から間もないときだ。「ビッグバンの後に、物質と反物質の間にわずかな差が起きた仕組みを知ることが大きな目標だ」と、同機構素粒子原子核研究所の後田裕教授は話す。

 

なぜ、物質と反物質の間に差が生まれたのか。そのきっかけを説明したのが、1973年に発表された「小林・益川理論」だ。スーパーKEKBの前身の加速器「KEKB」はこの理論を2001年に証明し、小林誠氏と益川敏英氏は08年にノーベル物理学賞を受賞した。

しかし、小林・益川理論は反物質だけがこの宇宙から消え去った理由の一部しか説明できていない。別の仕組みが存在するはずだ。それを説明する物理現象を見つけ出すために、高エネ機構は約314億円と5年の月日をかけて、KEKBを大幅に改造・増強した。

 

実験では、電子とその反物質の陽電子をほぼ光の速さまで加速して衝突させて、宇宙誕生時のような高いエネルギー状態を作り出す。

このとき、ほとんどは光になってしまうが、一部はB中間子という素粒子とその反物質の反B中間子に変わる。このペアは1兆分の1秒ほどで崩壊してしまうが、観測データを大量に集めて詳しく調べると、壊れ方に微妙な差が見つかることがある。

 

スーパーKEKBは大量に電子と陽電子をぶつけることで、1秒間にB中間子と反B中間子を800個ずつ発生させる。

これは前身のKEKBの約40倍で、一度に大量の観測データを集められる。赤井和憲教授は「観測開始から数年で必要なデータを蓄積できる」と話す。

 

B中間子と反B中間子が壊れる様子を徹底的に調べるために開発されたのが測定器「ベル2」だ。縦横の長さが約8メートルあり、重さが約1400トンもある。

B中間子などが崩壊した地点、飛び散った方向やエネルギー、崩壊してできた粒子の種類などを調べる。17年秋以降に設置して観測を始める計画だ。

 

最終目標は反物質が消えた謎の解明だ。この他にもノーベル賞級の成果が出ると期待を集める。そのひとつが素粒子物理学の基礎となっている「標準理論」を超す新しい物理学につながる発見だ。

1970年代に確立した標準理論では、物質は電子やニュートリノ、クォークなど17種類の素粒子でできていると考える。

 

2012年、17番目となるヒッグス粒子が発見され、標準理論は完成したとされる。

だが、すでに標準理論では説明できない現象もいくつか見つかっている。

 

スーパーKEKBでは、標準理論では説明できない未知の素粒子の発見も期待されている。

解析には、米国や中国、インドなど23の国と地域から約600人の研究者が参加する。後田教授は「18年以降はいつ何が出るか、解析してのお楽しみになる」と説明する。

(山本優)

 

反物質 電気的な性質が物質と正反対

物質の原子を形づくる粒子には、陽子や中性子、電子などがある。これとは質量や大きさなどは同じで、電気的な性質だけ正反対なのが反粒子だ。
 
「反物質」は、この反粒子が集まってできている。
 

例えば、物質の水素はプラスの電気を帯びた陽子の周りをマイナスの電気の電子が回っている。
 
反水素では、中心にあるのがマイナスの電気の反陽子で、その周りをプラスの陽電子が回っている。
 

反物質はこの宇宙にはほとんど存在しない。

ただ、人工的には作り出せる。がんの検査などに使う陽電子放射断層撮影装置(PET)は陽電子を作り出して、診断に利用している。
 
 
 
 
日経記事2016年5月15日より引用
 

3つのニュートリノ振動のうち、最後に残ったのがタウ型と電子型の間の振動。

これは茨城県東海村の施設で作ったニュートリノを約300キロメートル離れたスーパーカミオカンデに飛ばす「T2K実験」などで確認され、詳細なデータは中国で行われた「ダヤベイ実験」で得られた。

 

T2K実験では先のK2K実験に続いて西川氏が代表者を務めた。そしてダヤベイ実験を主導したのが中国の2人の研究者だった。

 

存命なら受賞が確実視されていた故・戸塚氏

ノーベル賞候補と言われた故・戸塚洋二氏
(東京大学特別栄誉教授)
 

梶田氏がスーパーカミオカンデでの実験をもとに最初にニュートリノ振動の成果を発表したのが1998年のこと。

そして一連のニュートリノ振動実験の総仕上げともいえる中国での実験で成果が出たのが2012年だ。

 

ここまで見届けた形でニュートリノ振動へのノーベル賞授与が決まった。

この間、ニュートリノ振動が様々な角度から確かめられて、業績が確かなものになる一方で、ノーベル賞受賞の候補者も増えていった。

 

もっと早い段階でニュートリノ振動の研究に対してノーベル賞を出すことになっていたら、受賞者3人の枠がきれいに埋まったかもしれない。

もう一人の人物は戸塚洋二・東京大学特別栄誉教授。梶田氏の兄弟子にあたり、スーパーカミオカンデの建設を推進し同実験の代表者を務めた。

 

長くノーベル賞の候補といわれていたが、08年に惜しまれながら他界した。梶田氏も受賞が決まった後の記者会見で「戸塚先生がご存命なら受賞されただろう」と語っている。

 

ニュートリノの研究で日本は世界の先頭を走る。今回は日本人では梶田氏1人の受賞だったが、ブレークスルー賞に輝いた7人のうち日本人が4人を占めたことが物語るように、研究の層は厚い。

この豊富な資産が次のノーベル賞にもつながっていくはずだ。

 

 

日経記事2016年1月10日より引用

 



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