介護福祉士『ルドルフ』のつれづれブログ

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【介護】認知症予防に効果的?! 百人一首で見える脳のチカラ(改訂版)

レクリエーションで百人一首を選んだ理由

これは、私が勤める高齢者介護事業所で起こった出来事です

高齢者のレクリエーションと言えば、体操や歌をイメージされる方も多いのではないでしょうか?

しかし、満足に体を動かせない高齢者や、歌を歌うことに幼稚さを感じて嫌がる方もいます
特に、認知症の方にあまり複雑な事をやってもらおうとするのは難しい場合もあります
新しいことを覚えるのは難しく、昔の記憶はよく覚えていることが多いからです



そこで、この日は体操や歌とは別のアプローチを試すことにしました

体を動かせなくても、テーブルの上で頭を働かせることは認知症予防に良いレクリエーションになります
もしそれが、認知症の方でも夢中になれるものだったら尚更です
認知症の進行を抑える一助になるかも知れません

ヒントになったのは、先日テレビで取り上げられた関東のあるデイサービスです

このデイサービスでは、高齢者に刺激的な一日を提供するためにカジノ風の内装やゲーム、黒塗りの送迎車などを設えていました

そこまでは徹底できなくても、刺激的な時間を高齢者に提供することは、私にもできるのではないか?

そこで、私が選んだのは、百人一首でした

百人一首で狙う4つの効果

百人一首で狙ったのは以下の4つの効果でした

1. 認知症の高齢者にも馴染みがあり、ルールが簡単で誘いやすい

2. 他の高齢者との競争心が良い刺激になる

3. 昔を思い出すことで脳を活性化⇨認知症予防に繫がる『回想法』としての効果も期待できる

4. 単純に面白い

これらの狙いは、成功しました

ちょっと、想像を超えるほどに

消極的⇨積極的!? 集中する認知症高齢者たち

はじめ、私は高齢者が3人ほど集まっているテーブルで百人一首に誘いました

この3人は百人一首を知っており、滞りなくゲームが始まります

私が一首ずつ上の句と下の句を詠み、

3人は下の句の書かれた札を探し始めます

最初は、

「目が見えないから見つけられない」

「詠んでいる声が聞き取れない」

と、不満を呟く方もいました

ですが、私がわずか二、三句詠み上げる間に、

3人共じっとテーブルの上の札を見ることに集中するようになっていました

目が見えないと言っていた方は、虫眼鏡を片手に札の頭文字に目を凝らしています

(どうやら、下の句の頭文字が同じものを見つける戦法のようです)

聞き取れないと言っていた方は、私の詠み上げを聞き返すことなく、自分の手元のみを探しています

(探す範囲を限定して、狙った下の句を集中して取る作戦でしょうか?)

ふと気づくと、3人以外にもテーブルに人が集まって来ていました

一人は、シルバーカーを自分で押して歩ける方で、この人はテーブルに着いている3人の頭上からテーブルを見ています

で、見つけると指を指して私に渡すように要求してきました

(この方は目が悪いわけじゃない、高いところから目当ての札を探す作戦か!)

もう一人、隣のテーブルで居眠りしていた方が、他のスタッフに誘われてテーブルに着いていました

この方は眠そうな目をしていましたが、正解の札を見つけるとスッと手を伸ばして静かに取っていきます

(動きの気配が薄い……この人、できる!?)

何ができる、のか

思った私にも分かりませんでしたが、油断ならない動きです

あっちもこっちも認知症とは思えない戦上手いくさじょうずでした

上の句から下の句を導く記憶のチカラ

この中で、一人だけブツブツ呟きながら札を探している方がいました

よく聞くと、私が上の句を詠むと、合わせて正しい下の句を呟いているようでした

この人は上の句を聞いた段階で、他の人よりひと足早く正解の札を探し始めます

(ゲームで、正解を知っているアドバンテージは如何ほどでしょうか)

動きは上から見ているシルバーカーの方や、気配の薄い方が確実に早いですし

頭文字を狙い撃ちにしている方や、自分の手元だけを狙っている方に競り負けることもありました

結果的には、札の枚数には繋がりませんでしたが

この方が一番、百人一首を楽しんでいるようにも見えました

何より、私はこの方の記憶力にとても驚いていました

高齢者が、最近の記憶より昔の記憶の方がよく思い出せることは、よく言われています

認知症の方は特にそうです

けれど、それを実際にまざまざ見せてもらった、数少ない実例でした

この方は、百人一首の記憶を引き出しながら、一緒にどんな昔の記憶を思い出していたのでしょう?

詠み上げながら、私はちょっとだけ訊いてみたい気になっていました

おしまいに

レクリエーションとは、

認知症予防に効果のあるエクササイズであり

同時にコミュニケーションでもあります

私達、介護士はレクを通じて高齢者の本当の姿、それまで知らなかった別の一面を知る機会が多いです

認知症の方でもそれは変わりません

それがこの仕事の醍醐味でもあり、面白い所でもあります

こういう出来事があると、この仕事を続けたくなるんですよね