『新しい世界』と『新しい心』を教えてくれた自然の神秘~野生の鹿と流れ星に導かれて~

旅行

世界で最も素晴らしく美しいものは

目で見たり手で触れたりすることはできないものです

それらは心で感じるものです

ヘレン・ケラー

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自然を忘れてしまった私たち

皆さんはどんな日常をお過ごしですか?

私たちが住む都会は、快適な生活を得る代償として自然との接点が薄れてしまっています

その結果、都会で生活する子供たちも自然から隔絶されがちです

 

この物語の主人公、小学3年生の『絵利花(えりか)』も、そんな都会育ちの少女です

高層ビルとアスファルトに囲まれた世界で生きている絵利花にとって、自然の美しさや神秘的な体験は遠い存在です

しかし、3日間の湖の畔(ほとり)での林間学校で、絵利花の心に新しい感動と喜びがもたらされます

自然との素晴らしい出会いは、彼女にとって一生忘れることのない思い出となりました

自然の豊かさを感じ、畏敬の念を抱く瞬間がそこにはありました

 

このブログでは、絵利花の特別な3日間での自然との出会いを描きながら、彼女が成長していく過程をお伝えしていきます

無垢な子供たちが体験する素晴らしい感動の数々

そして都会育ちの彼女が自然の美しさに触れる瞬間に共感しながら、最後までお楽しみください

都会の少女へ迷い込んだ自然からの挨拶

マイクロバスは、左右を森に囲まれた道をゆっくりと走ってた

小学3年生の『絵利花(えりか)』は、クラスのみんなと林間学校で湖の畔(ほとり)の宿泊施設を目指していた

親元を離れてクラスメイト達と過ごす3日間

いつもの風景とはまるで違う様子もあり、胸がドキドキしていました

 

バスは細い道に曲がるとゆっくりと進み、門をくぐった

急に空間が広がり、バスは停まりました

長時間のバスの旅であったが、これからのことを思うと、そんな疲れはどこかへ飛んで行ってしまった

 

絵利花はみんなの後に続いてバスを降りた

バスを降りると目の前に古い木で出来たロッジがこちらを見下ろしていた

そしてその隣には芝生の広いグラウンドが広がっていた

グラウンドを見ると遠くに3つの影が見える

目を凝らすと、

その3つの影は動いているのが分かった

 

「鹿だ!」

 

絵利花が叫んだ

絵利花の知らない鹿との出会い

絵利花は動物園で鹿を見たことはもちろんあった

しかし、そこで見た鹿は動物園のそれとはまるで違っていた

引き締まった肉体はさることながら、周囲に何かオーラを放っているように感じられた

 

絵利花の叫び声でクラスのみんながグラウンドを見る

先生の制止も聞かずに、子供たちがわれ先に鹿たちの元に駆けていく

その気配を感じたのか、三頭の鹿は慌てることなく、ゆっくりと茂みに向かって歩いていった

そして、茂みの中へと消えていった

 

みんなは

「かわいかった!」

「すごかった!」

と大喜び

 

しかし、絵利花は別な気持ちになっていた。

鹿たちのその神々しさは単なる動物とは感じられなかった

最近、奈良や広島に鹿がたくさんいる話を絵利花は聞いていた

 

『鹿は神様の使い』

 

だから、神社が鹿たちを守り、鹿たちが神社を守ってくれていると

絵利花はその話が本当だと、心の底から納得した

魔法時間での奇跡の再会

到着後は宿に荷物の移動や寝具の準備に追われ、遊ぶ時間は全然なかった

食事やお風呂もせわしなく、時間だけがあっという間に過ぎていった

明日の準備も終えて、気づけば就寝の時間を過ぎていた

 

初めてのクラスメイトとのお泊りに興奮する仲間たち

みんなは一緒に布団にくるまりながらゲームに夢中だった

が、絵利花はすぐに眠ってしまった

 

早く寝てしまったためか、4時前に目が覚めた

布団から窓を見ると、まだ日の出前、外の明るさがうっすらとそこにあった

絵利花は布団を出て窓に向かう

 

空は紫に染まり、水平線が赤みをほんの少しさしていた

窓からはグラウンドが見える

思い切って窓の外をのぞいてみると、

グラウンドの中央に3頭の鹿が立っていた

絵利花は隠れる必要もないのに、息を殺して窓から3頭を見つめた

 

小さな2頭が地面に顔をつけて草を食んでいる

1番大きな1頭は周囲をうかがうように見回していた

そして、中ぐらいの1頭が顔を上げるのを確認して、大きな1頭も地面に口をつけた

大きい2頭のうち、どちらかが必ず周囲を警戒しながら食事をしているようだ

一方、1番小さい小鹿は周囲を見ることもなく、一心不乱に草を食べていた

 

絵利花は時間が過ぎることも忘れて、鹿たちを見つめ続けた

太陽の光が空に差し込んできて紫の空がオレンジに染まっていく

それと同時に、鹿たちはグラウンドを悠々と立ち去っていった

朝の光と共に鹿たちが去っていく光景は、彼女にとって不思議で美しい一幕であった

星空に煌めく鹿の贈り物

2日目は楽しいイベントがこれでもかと続いた

絵利花はクラスのみんなと一緒に思いっきり楽しんだ

時間はあっという間に過ぎていった

それでも、絵利花は途中途中でついつい目はグラウンドに向かってしまう

しかし、そこに現れる影はなかった

 

その日の夜、クラスのみんなで再びグラウンドに出た

夜空を見上げると信じられないほど美しい星空が広がっていた

先生が指さした先に北斗七星が、夏の大三角形がクッキリと空に現れていた

 

空を見上げていた時、おもむろに空を光の線が駆け抜けた

 

流れ星だ

 

それを見た子供たちは興奮して叫んだ

見損ねた子供たちはうらやましくて仕方がない

全員がかたずをのんで空を見上げ続ける

 

「あっ!」

 

また一筋の光が走った

全員が歓声を上げた

絵利花は流れ星に感動した

それを見せてくれたのは、あの鹿たちだと、なぜか思った

 

その日の明け方、絵利花はまた夜明け前に目を覚ました

しかし、グラウンドに鹿は現れなかった

絵利花は鹿を見たかったというより、

流れ星を見せてくれたことへのお礼を言いたかった

感動の再会、そして別れ

3日目はすぐに帰路に就くために10時にバスは出発しなければならなかった

絵利花はバスに乗り込む前、最後にもう一度グラウンドを見渡した

鹿たちはいなかった

 

絵利花は諦めてバスに乗った

全員がバスに乗り終えた

絵利花は座席に身を沈ませてため息をついた

 

先生が外を指さして叫んだ

 

「鹿よ!」

 

絵利花は窓に張り付いて外を見た

たった一頭の大柄な鹿がそこにいた

悠然と、こちらに見向きもせずに敷地内を歩いていた

 

絵利花はその美しさに心を奪われた

 

クラスメイトたちが騒いでバスが発車できない

先生がなだめてようやくバスはゆっくりと動きだした

絵利花は窓からギリギリまで鹿を見続けた

最後に鹿はこっちを振り向いてくれたような気がした

それだけで絵利花の胸の奥は熱くなった

 

 

「どうしたの? だいじょうぶ?」

隣の女の子が心配そうに絵利花に声をかけてきた

その呼びかけで自分が泣いていることが分かった

 

なぜ涙がとまらないのだろう

悲しくもない

うれしくもない

ただただ、涙が溢れていた

絵利花は流れる涙をとても不思議な気持ちで受け止めていた

世界で最も素晴らしく美しいものは

目で見たり手で触れたりすることはできないものです

それらは心で感じるものです

ヘレン・ケラー

 

最後までお読みいただきありがとうございます

こころが変われば世界が変わる

人生のこの瞬間に感謝を

 

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「このストーリーはフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。」

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