不動産投資

買った後どうなるのか? 不動産投資会社営業が話さない、P&Lと建物比率と節税効果

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区分を買った後、実際のお金の出入りがどうなるのか?を知るためにキャッシュフローの計算ができるようになったら、次はもう一つの側面である、「会計上の収支はどうなるのか?」を考えてみましょう。

事前に下の2つの記事にも目を通しておいて頂けるとここでの話の流れがわかりやすくなると思います。

また、キャッシュフロー計算の流れはこちらの記事でまとめています。

会計上の収支のことを損益と呼びます。英語で書くとProfit and Loss。頭文字をとってP&LとかP/Lと表記されることがあります。

さて、区分投資において、なぜP&Lを考える必要があるのでしょうか?

この記事で伝えたいこと

  • 区分投資でなぜP&Lを考える必要があるのか知りたい
  • 自分でP&Lを書いて「買った後どうなるのか」を把握できるようになりたい
  • 節税効果を大きくする重要な要素が何であるのか知りたい

そんな悩みに答えます。

ここまで区分投資という用語を使ってきました。世の中的にも「投資」という呼び方が一般的なのですが、その実態は「運営」です。

銀行から借りたお金で区分を買って、
人に貸して賃貸料を頂き、
その収入から銀行へローンを返済し、
残ったお金で賃貸管理を行う。

規模は小さいかもしれませんが、立派な事業であり、運営なのです。

このため、区分投資を始めると毎年確定申告を行う義務が発生します。
そして、その際、会計上の収支であるP&Lに基づいた金額の申告が求められます。
こうした法的な要求があることがP&Lを考えなければならない背景です。

確定申告と聞くと面倒だなと思うかもしれません。しかし投資家にとっても良いことがあります。

実は区分投資では、少なくとも開始後何年かの間はP&L上の年間収支はマイナスになり続けます。つまり赤字です。

赤字と言っても会計上の話なので実際にお金が減るわけではありません。実際のお金の動きはキャッシュフローで計算した通りで、そっちが黒字であれば手元からお金が出ていくわけではありません。

一方、P&L上の赤字は確定申告において個人の所得を減らす効果をもたらします。
所得が減るので、所得税も減りますし、翌年の住民税も減ります。

会社勤めの方であれば、前年に源泉徴収された給与所得を元にした所得税額との差分が、確定申告した年の4月ごろに還付金として戻ってきますし、その年の6月以降の住民税も相応分が減ることになります。

いわゆる節税効果を生むのです。

こう書くとどの程度節税できるのだろう?と気になりますよね。

節税額は前年の所得額などにも依るので一概にいくらとは言えませんが、
仮に年収500万円の会社勤めの方で、
株式売買、ふるさと納税、iDeCo、など全くやっておらず、
P&L上の年間の不動産所得が▲500,000円の赤字であった場合には、
前年の所得税の還付と、当年6月から一年間の住民税の低減額の合計が約10万円です。

キャッシュフローのシミュレーションを行った際に見たように、東京都内で2,000万円前後の中古区分を購入した場合に発生する不動産取得税が約10万円ですから、初年度に▲500,000程度の赤字をP&Lで計上できれば節税効果で不動産取得税が埋まるという感じでしょうか。

不動産投資会社の営業さんやセミナーなどで「不動産取得税は所得税還付で賄えます」というような言い方を聞くことがありますが、これは上のようなロジックから来ているのです。

P&Lを書いてみる

ここでもキャッシュフローのシミュレーションで使ったアプレシティ両国の一室を例として扱いましょう。

P&L上の収支計算は、大まかに言って次の式で表せます。
P&L収支=賃貸収入 ー(減価償却費+建物分の金利+租税公課+管理費等諸費用)

このシミュレーションに必要な要素と、今回適用する値は以下です。

物件名称アプレシティ両国
号室8XX
築年月2008年 1月
購入年月2022年 12月
販売価格20,700,000円
購入時諸費用500,000円
当初貸出金21,200,000円販売価格+購入時諸費用。
土地価格9,001,660円
建物価格11,089,400円
消費税1,108,940円建物価格の10%。
建物価格+消費税12,198,340円
建物割合57.54%参考値。=(建物価格+消費税)÷ 当初貸出金。
賃料75,000円
共益費10,000円
賃貸管理費2,754円入居者の募集等を委託する費用。
建物管理費8,000円建物管理の委託費用。通常、管理組合から外部委託されます。
修繕積立費1,600円管理組合で毎月積み立てています。
償却期間(躯体)35年=47 ー(購入年ー築年+1)×0.8
償却期間(設備)3年=15 ー(購入年ー築年+1)×0.8。0以下なら3。
躯体比率80%購入時に投資家が再設定可能。大体8:2か、7:3程度。
設備比率20%
取得価格(躯体)9,758,672円参考値。建物価格+消費税の躯体比率分。
取得価格(設備)2,439,668円参考値。建物価格+消費税の設備比率分。

キャッシュフローのシミュレーションの時と同じく、こうして見てみると投資家が制御できる要素はほとんどありません。購入年月(購入するタイミング)と、販売価格(営業と交渉!)、そして躯体と設備の比率くらいです。ここからも「区分投資は購入時でほぼ決まる」ということがわかりますね。

が、ここで見落としてはいけない要素が実は一つあります。それが建物価格

P&Lの収支計算式の中で、経費として差し引かれる要素に減価償却と建物分の金利というものがあります。区分の価格は土地の価格と建物の価格の合計ですが、減価償却できるのはこの内、建物分のみです。そして銀行に支払うローン返済額に含まれる金利についても、その建物分は経費計上できるのです。

つまり、区分価格に占める建物価格が大きければ大きいほど、P&L上の経費が大きくなり、その結果、節税効果が大きくなることになります。

ところが不動産投資会社の営業さんと会って話を聞く機会があったらぜひ試していただきたいのですが、「この物件どうでしょうか?」とチラシを差し出す営業さんの多くがその物件の建物比率を知りません。消費税額でもわかれば10%で割り戻して算出できるのですが、それすら知らないことがほとんどです。

これでは「この物件どうでしょうか?」と聞かれても良いも悪いも判断できませんよね。

いかに多くの営業さんが、そして相対する投資家が、キャッシュフローだけで販売/購入の判断をしているか、という証左だと思います。これは区分投資が実は「区分運営」であるということの理解が、営業にも投資家にも欠けているからでしょう。

さて、P&Lを書くため、関係する要素を順に見ていきましょう。
まず収入ですが、これはキャッシュフローの時と同じく、以下のようになります。

賃料共益費収入計
202212
2023175,00010,00085,000
2023275,00010,00085,000
2023375,00010,00085,000
2023475,00010,00085,000
2023575,00010,00085,000
2023675,00010,00085,000
2023775,00010,00085,000
2023875,00010,00085,000
2023975,00010,00085,000
20231075,00010,00085,000
20231175,00010,00085,000
20231275,00010,00085,000

2022年12月に購入していますので、引き渡しを経て、実際に家賃が入り始めるのは2023年1月からになるという想定です。

次に支出です。P&Lでは経費と呼んだ方がしっくりくるかもしれません。
まず減価償却費を見てみましょう。

減価償却(躯体、簡易法)減価償却(設備、簡易法)減価償却(計)
20221223,23567,76991,003
2023123,23567,76991,003
2023223,23567,76991,003
2023323,23567,76991,003
2023423,23567,76991,003
2023523,23567,76991,003
2023623,23567,76991,003
2023723,23567,76991,003
2023823,23567,76991,003
2023923,23567,76991,003
20231023,23567,76991,003
20231123,23567,76991,003
20231223,23567,76991,003

建物はその躯体と、内側の設備を分けずに減価償却する方法と、それぞれを分けて減価償却する方法の2通りあるのですが、ここでは躯体と設備を分けて減価償却することにします。

毎月の減価償却費はそれぞれ次の式で簡易的に求められます。

躯体=(建物価格+消費税)× 躯体比率 ÷ 躯体の償却期間× (1/12)
設備=(建物価格+消費税)× 設備比率 ÷ 設備の償却期間× (1/12)

続いて建物分の金利です。

年利月利返済額元金利息(建物)利息(土地)
202212
20231
202322.00%0.17%81,36830,60529,20921,554
202332.00%0.17%70,22834,94520,30114,981
202342.00%0.17%70,22835,00420,26814,956
202352.00%0.17%70,22835,06220,23414,932
202362.00%0.17%70,22835,12020,20114,907
202372.00%0.17%70,22835,17920,16714,882
202382.00%0.17%70,22835,23820,13314,857
202392.00%0.17%70,22835,29620,09914,832
2023102.00%0.17%70,22835,35520,06514,807
2023112.00%0.17%70,22835,41420,03214,782
2023122.00%0.17%70,22835,47319,99814,757

キャッシュフローのシミュレーションにおいてローンの返済額を計算しましたが、そこで出てきた利息の額に、建物比率をかけることで建物分の金利を簡易的に算出できます。なお、土地分の金利は金利合計額から建物分の金利を差し引けば出てくるので参考値として載せていますが、P&L上では大きな意味を持ちません。

あとは賃貸管理、建物管理、修繕積立の諸費用と、初年度に発生している購入時諸費用、そして租税公課です。これらも月毎に書いてみると下のようになります。

賃貸管理建物管理修繕積立購入時諸費用諸費用小計租税公課
202212500,000500,000
202312,7548,0001,60012,354
202322,7548,0001,60012,354
202332,7548,0001,60012,354
202342,7548,0001,60012,354101,366
202352,7548,0001,60012,354
202362,7548,0001,60012,35446,594
202372,7548,0001,60012,354
202382,7548,0001,60012,354
202392,7548,0001,60012,354
2023102,7548,0001,60012,354
2023112,7548,0001,60012,354
2023122,7548,0001,60012,354

2023年4月に不動産取得税 101,366円、6月に固都税 46,594円の支払いが発生しています。東京都内で2,000万円前後の築年数10〜20年の中古区分を購入する場合、それぞれの税金額は大体このくらいの金額です。

これらを並べると、2022年と2023年のP&Lができあがります。

収入減価償却利息(建物)諸費用小計租税公課収益
20221291,003500,000-591,003
2022091,0030500,0000-591,003
2023185,00091,00312,354-18,357
2023285,00091,00329,20912,354-47,566
2023385,00091,00320,30112,354-38,659
2023485,00091,00320,26812,354101,366-139,991
2023585,00091,00320,23412,354-38,592
2023685,00091,00320,20112,35446,594-85,152
2023785,00091,00320,16712,354-38,524
2023885,00091,00320,13312,354-38,491
2023985,00091,00320,09912,354-38,457
20231085,00091,00320,06512,354-38,423
20231185,00091,00320,03212,354-38,389
20231285,00091,00319,99812,354-38,406
20231,020,0001,092,042230,706148,299147,960-599,007

この例の場合には、2022年も2023年も約▲60万円の赤字を計上することになることがわかりました。

上で年収500万円の方が▲50万円の赤字を計上した場合に、所得税の還付と翌年の住民税の低減額の合計が約10万円になると書きました。仮に年収500万円の方がこの物件を購入した場合には、年間の節税効果が約10万円になる、と言えます。

建物比率の重要性

P&L上でマイナス収益を作り出すためには、家賃収入を上回る会計上の経費が必要です。上で見たように、運用開始当初は経費の中で減価償却が占める割合は実に2/3に達します。また二番目に大きい経費も建物分の利息です。

このことから、区分価格の中で建物分が占める割合がどれだけ重要かがわかります。

同じ2,000万円で売られている似たような区分マンションであっても、建物比率が50%の物件と30%の物件では、そこから得られる節税効果は大きく異なってきます。

この建物比率は建物価格、あるいは販売価格に占める消費税額を知ることで求められます。しかし、この建物比率を知る情報は物件のチラシには載っていないのです。営業も知りません。だからこそ「出してくれないと検討できないよ」とちゃんと伝え、提示してもらうようにしましょう。

それによって「買った後どうなるのか?」わからない不安から、解放されるのです。

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