不動産投資

買った後どうなるのか? 不動産投資会社営業が話さない、本当のキャッシュフロー

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買った後どうなるのか?は区分購入時点でほぼ決まります。この記事では、「買った後どうなるのか?」の一つである、キャッシュフロー(実際のお金の動き)について考えてみます。

事前に下の2つの記事にも目を通しておいて頂けるとここでの話の流れがわかりやすくなると思います。

この記事で伝えたいこと

  • 区分を買った後、毎月、毎年、お金がどうなるのかを知りたい
  • そのためにキャッシュフローを自分で計算できるようになりたい
  • それを改善するために投資家が制御できる要素を知りたい

そんな悩みに答えます。

「買った後のシミュレーション」を行ってみると気がつくことがあります。それは、「不動産投資営業から渡されるシミュレーションには載ってない要素がある(場合がある)」ということです。

区分投資は銀行、不動産投資会社、投資家(私たち)の3者で獲りあうゲームでした。騙しあうわけではありませんし、不動産投資会社は投資家にとってパートナーでもありますが、一方で彼らも販売しなければならない立場でもあるのでどうしても不都合な情報を見せてこない時があります。

彼らから受け取る情報に加え、自分でもしっかりと「買った後のシミュレーション」ができるようになれば、投資家として制御すべき=こだわるべき要素も見えてきますし、その要素の数値について不動産投資会社の営業と交渉をすることができるようにもなるはずです。

この記事ではまず、買った後のキャッシュフロー、つまり「実際のお金の動きはどうなるのか?」をシミュレーションしてみます。結果についての考察は別記事で行うことにして、キャッシュフローを自分で計算できるようになることをゴールにします。

ここでのポイントは、「月単位のキャッシュフローはどうなっているのか」に加えて、「年単位で考えるとどうなっているのか」にも目を向けることです。

キャッシュフローチャートを書いてみる

例として下の物件、アプレシティ両国の8階の一室を2022年12月に購入した場合を考えてみましょう。

キャッシュフローのシミュレーションを行う条件は以下の通りです。キャッシュフロー計算にはこのくらいの要素の情報を揃えないといけないのだな、と覚えておきましょう。

なお、これらの情報は上のような物件チラシや、不動産投資会社の営業から入手できます。ざっくりシミュレーションする分には金額の細かなところ(数円とか数十円とか)は拘らなくても構いません。

物件名称アプレシティ両国
号室8XX
築年月2008年 1月
購入年月2022年 12月
販売価格20,700,000円
購入時諸費用500,000円登記費用等。大体このくらいかかります。
当初貸出金21,200,000円販売価格+購入時初期費用の合計額を銀行から融資頂きます。
返済年数35年大手オリックス銀行の現時点での不動産投資は最大35年。
年利率2.00%大手オリックス銀行の現時点での利率は大体このくらい。
初回返済額81,368円通常、初回だけ調整が入ります。
初回元金30,605円
初回利息(計)50,763円
賃料75,000円
共益費10,000円
賃貸管理費2,754円入居者の募集等を委託する費用。
建物管理費8,000円建物管理の委託費用。通常、管理組合から外部委託されます。
修繕積立費1,600円管理組合で毎月積み立てています。

登場する要素を見てみると、投資家が制御できる要素はほとんどないことがわかります。せいぜいが購入年月(購入するタイミング)と、販売価格(営業と交渉!)くらいでしょう。

将来的に家賃を上げていく努力はできますが、この物件は中古の区分であり入居者がいる状態でのオーナーチェンジですから、購入時に家賃を変更することはできません。

まず収入から見てみます。

賃料共益費収入計
202212
2023175,00010,00085,000
2023275,00010,00085,000
2023375,00010,00085,000
2023475,00010,00085,000
2023575,00010,00085,000
2023675,00010,00085,000
2023775,00010,00085,000
2023875,00010,00085,000
2023975,00010,00085,000
20231075,00010,00085,000
20231175,00010,00085,000
20231275,00010,00085,000

2022年12月に購入していますので、引き渡しを経て、実際に家賃が入り始めるのは2023年1月からになるという想定です。

次に支出です。まず融資金の返済(ローン)がどうなるのか見てみましょう。

年利月利返済額元金利息残高
202212
2023121,200,000
202322.00%0.17%81,36830,60550,76321,169,395
202332.00%0.17%70,22834,94535,28221,134,450
202342.00%0.17%70,22835,00435,22421,099,446
202352.00%0.17%70,22835,06235,16621,064,384
202362.00%0.17%70,22835,12035,10721,029,264
202372.00%0.17%70,22835,17935,04920,994,085
202382.00%0.17%70,22835,23834,99020,958,847
202392.00%0.17%70,22835,29634,93120,923,551
2023102.00%0.17%70,22835,35534,87320,888,196
2023112.00%0.17%70,22835,41434,81420,852,782
2023122.00%0.17%70,22835,47334,75520,817,309

2022年12月に銀行と金消契約(ローンで融資を受ける契約)を締結して区分を購入した場合、実際のローン返済が開始されるのは翌々月の2023年2月からになる、と想定しています。

なお、返済額と、それに含まれる元金と利息はエクセル上で計算させたものです。実際の支払額とは数円程度誤差が出る場合もありますが、ここでは気にしないことにします。

続いて、ローン返済以外に発生する諸費用も月毎に並べるとこうなります。

賃貸管理建物管理修繕積立諸費用小計
202212
202312,7548,0001,60012,354
202322,7548,0001,60012,354
202332,7548,0001,60012,354
202342,7548,0001,60012,354
202352,7548,0001,60012,354
202362,7548,0001,60012,354
202372,7548,0001,60012,354
202382,7548,0001,60012,354
202392,7548,0001,60012,354
2023102,7548,0001,60012,354
2023112,7548,0001,60012,354
2023122,7548,0001,60012,354

これらを並べてみると毎月のキャッシュフロー表ができあがります。

収入ローン返済額諸費用小計キャッシュフロー
(租税公課加算前)
キャッシュフロー累計
(租税公課加算前)
202212
2023185,00012,35472,64672,646
2023285,00081,36812,354-8,72263,924
2023385,00070,22812,3542,41866,342
2023485,00070,22812,3542,41868,761
2023585,00070,22812,3542,41871,179
2023685,00070,22812,3542,41873,597
2023785,00070,22812,3542,41876,015
2023885,00070,22812,3542,41878,434
2023985,00070,22812,3542,41880,852
20231085,00070,22812,3542,41883,270
20231185,00070,22812,3542,41885,689
20231285,00070,22812,3542,41888,056

不動産投資会社の営業さんから物件紹介の際に参考資料として受け取るのは大体こういう感じではないでしょうか。

月単位に加えて年単位のチャートを書いてくれたり、そこに空室率や金利の変動率などの不確定要素を振った場合のシミュレーションを加えてくれることもあるかもしれませんが、基本、見せてくる内容は似たようなものだと思います。

中には定常的な単月の数値だけしか見せてこない営業さんもいます。上の例で言えば、2023年3月の数値だけを示して「毎月プラスで回りますよ」と言ってくる感じです。上で見てきたような計算のロジックをパッと想像できないとなかなか飲み込みにくく、営業さんとの会話が慣れない内はモゴモゴしてしまいがちです。

そういう場合、詳細をその場で伺って教えてもらうというのも一手ですが、「一旦家に帰って自分でも計算してみますね」と回答し、実際に自分でキャッシュフロー計算をしてみることをお勧めします。自分の理解が進めば、その営業さんとの次回の打ち合わせもスムーズになるでしょうし、言われるがままの商談になることもなくなります。

シミュレーションに必要な要素は全て教えてもらうようにしましょう。上のシミュレーション条件に挙げた項目がそれらです。

なお、不確定要素については考え出すとキリがありませんし、それらをリスクだと考えるのであればリスクヘッジする方法を個別に考える方が健全だと思いますので、ここでは深掘りしないことにします。今後、別の記事で考察するかもしれません。

営業が話さない本当のキャッシュフロー

ところで、ここまでのシミュレーションで含まれていない要素があります。それが租税公課、つまり税金です。

区分を購入すると、その翌年には不動産取得税の支払いが発生します。また、保有している間は毎年固定資産税/都市計画税(固都税)も発生します。

どういうわけか不動産投資会社の営業さんから提示されるキャッシュフローにはこれら税金が含まれていないことが多いので検討から抜け落ちてしまいがちです。しかし私たち投資家が知りたい「買った後どうなるのか?」を把握するには、それら税金も加味した本当のキャッシュフローを作らなければいけません。

この物件において租税公課を加味すると、以下のようになります。

収入ローン返済額諸費用小計租税公課キャッシュフロー
(租税公課加算後)
キャッシュフロー累計
(租税公課加算後)
202212
2023185,00012,35472,64672,646
2023285,00081,36812,354-8,72263,924
2023385,00070,22812,3542,41866,342
2023485,00070,22812,354101,366-98,948-32,605
2023585,00070,22812,3542,418-30,187
2023685,00070,22812,35446,594-44,176-74,363
2023785,00070,22812,3542,418-71,945
2023885,00070,22812,3542,418-69,526
2023985,00070,22812,3542,418-67,108
20231085,00070,22812,3542,418-64,271
20231185,00070,22812,3542,418-62,271
20231285,00070,22812,3542,418-59,904

2023年4月に不動産取得税 101,366円、6月に固都税 46,594円の支払いが発生しています。東京都内で2,000万円前後の築年数10〜20年の中古区分を購入する場合、それぞれの税金額は大体このくらいの金額です。

キャッシュフロー累計額は租税公課を加味する前に比べて随分と変わり、年間で▲59,904の赤字となるシミュレーション結果となりました。

実際に発生する不動産取得税額や固都税額を購入前に正確に知ることは難しいのですが、大体このくらい、という肌感を持ってシミュレーションに組み込まれると良いと思います。

もちろん、年間のキャッシュフローが赤字だからといってこの区分は投資に値しないと判断するわけではありません。別の記事で書いていきますが、区分の保有目的は人それぞれ異なるはずであり、それが故に戦略も異なってきます。その目的に合致しているのであればキャッシュフロー自体は問題ではない場合もあるでしょう。

また、減価償却や金利等の費用も考慮したP&L(損益)で見れば、初年度は購入時に発生している購入時諸費用(上の例では500,000円)が大きな経費として乗ってきて年間収支がマイナスになり得ます。会社勤めの方であればこれを確定申告に加えることで、前年支払った(給与所得の)所得税から還付を手にすることができるはずです。

不動産投資会社の営業さんの中には、この還付金を不動産取得税に充てる提案をする方もいますし、実際良い手だと思います。

租税公課を除くと単月キャッシュフローが2,418円のプラスですから、年間で約30,000円ほど生み出されることになります。仮に所得税の還付金と不動産取得税分がトントンだとすれば、年間のキャッシュフロー約30,000円のプラスに対して、固都税が約46,000円ですから、年間キャッシュフロー累計は約▲16,000円の赤字。まぁ年間でほぼ手残りなしのトントンと言ったところでしょうか。

この例のように、区分投資では大きく現金で儲けが出るわけではありません。しかし、収支がほぼトントンで回りながら、他人(入居者)のお金でローンが返済されていくのだと考えれば、時間を味方につける投資としてはアリでしょう。(キャッシュフローのシミュレーション結果を見てどう考えるか、は戦略考察になるので、ここではこれ以上触れないでおきます。)

まとめ

この記事では、月単位、年単位でのキャッシュフローの計算と、それを改善するために投資家が努力できる要素は何であるか、を明らかにするため、まずキャッシュフローに登場する要素を全て洗い出して並べ、それらを使って実際にシミュレーションを行う流れを説明しました。

実際のシミュレーションを通じて、

  • キャッシュフローは単純な計算で、自分でも求められること
  • 営業さんが言ってくれない租税公課を考慮しなければならないこと
  • 投資家が努力できる要素は購入タイミングと購入金額程度であること

が理解できたのではないでしょうか。

もしすでに不動産投資会社の営業からいくつかの物件紹介を受けていて、物件にまつわる数値情報をお持ちであれば、この記事で挙げた表を自分で埋めてキャッシュフローを書いてみましょう。「買った後どうなるのか?」の一端が見えてくるはずです。

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