「いやいや、去年の年末に起業したばかりの今にも、吹けば飛ぶような会社だよ。まだヨチヨチ歩きだし」
「そうなのか・・やっぱり」と妙に頷く恵子に
「なにが?」と聞く僕
「去年と違うんだよねっ。顔つきが」
「何が違うって?」
「ほら、バラ園で見た時の顔」
「ああ、バラ園でのカメラのことか・・」
「そう、今年のあなたの顔つき、去年と違っていたような気がした。なんだろうと」
「おいおい、そんなことはないってって言っても、やっぱり嬉しいよ」
去年の暮れに始めた事業
60歳の定年まで、勤めあげてからと思ったが早期退職の枠に無理やり入り込んで、満額の退職金を受け取ることができた。
定年を迎えてからとは思ったが、心の中でこっちから辞めてやるという押しの気持ちがあった
「定年まで、勤めあげてからもあったんだけど、なんかさ、電車が終点まで乗って、降りてくださいなんて感じやだったんだ。それなら、終点の一つ手前でおりてやれって感じなんだろうな」