作業日:2025年3月15日
走行距離:61212.2 Mile
FZ750のフロントフォークの整備はいよいよ佳境に入って参りました。
サスペンションメンテナンス(その7)では、株式会社東洋硬化さんでインナーチューブの再メッキとチタンコーティングを行って頂きました。
サスペーションメンテナンス(その8)では、ライコランド柏店さんでアウターチューブのパウダーコートで塗装して頂きました。
今回はオイルシールなどのヤマハ純正部品の揃ったので、フロントフォークの組み立てを行います。
今回準備した消耗部品など
フロントフォークの消耗部品は以下のパーツをヤマハ純正部品で準備しました。
但し、この純正部品はFZR750(1987年式 2LM)ですので、ご注意ください。
ボルト,ヘキサゴンソケットヘッドは、アンダーブラケットの下側のボルトです。既存のボルトはいずれもインパクトで相当力を掛けられたため六角形の穴が変形していたので、今回は新品に交換しました。
部品名称 | 部品番号 | 税込価格 | 数量 | 備考 |
シール,ダスト | 3XV-23144-50 | 2,200円 | 2 | ヤマハ純正部品 |
クリップ,オイルシール | 26H-23156-00 | 290円 | 2 | ヤマハ純正部品 |
オイルシール | 3SP-23145-L0 | 1,980円 | 2 | ヤマハ純正部品 |
メタル,スライド 1 | 4FM-23125-40 | 1,490円 | 2 | ヤマハ純正部品 |
ピストン,フロントフォーク | 36Y-23171-00 | 2,090円 | 2 | ヤマハ純正部品 |
ガスケット,ドレーンプラグ | 122-23129-00 | 230円 | 2 | ヤマハ純正部品 |
ガスケット | 4V4-23158-L0 | 540円 | 2 | ヤマハ純正部品 |
ボルト,ヘキサゴンソケットヘッド | 4V4-23181-L0 | 970円 | 2 | ヤマハ純正部品 |

こちらは、サスの動きが良くなるとネットで評判がよいスラストベアリング(スラスト 針状ころ軸受)です。
折角なので、私も試してみることにしました。
スラストベアリングとワッシャは信頼のNTN製品を選定しました。
スラストベアリング(AXK1104) 内径20mm、外径35mm、幅2mmです。その上下にワッシャ(AS1104) 内径20mm、外径35mm、幅1mmを挟むので、合計4mmの厚さになります。
部品名称 | 部品番号 | 税込価格 | 数量 | 備考 |
スラスト 針状ころ軸受 | AXK1104 | 293円 | 2 | NTN製 |
AS形軌道輪 (ワッシャ) | AS1104 | 70円 | 4 | NTN製 |

このベアリングとワッシャはAmazonでも扱っています。
フロントフォークの組み立て
では、フロントフォークの組み立て作業開始です。
インナーチューブの固定
インナーチューブにスライドメタル(ヤマハ名称:ピストン,フロントフォーク)を取付けます。その際はインナーチューブとスライドメタルの両側に組付け油としてフォークオイルを塗っておきます。
その後、インナーチューブにシリンダー(ヤマハ名称:シリンダーコンプリート)を通して、アルミ製部品(ヤマハ名称:スピンドル,テーパー)を取付けます。

アウターチューブにインナーチューブを取付けます。
新品のガスケットを取付けたヘキサゴンボルトにはネジロック剤を適量塗布して取り付けます。

今後のメンテナンスのことも考慮して、低強度タイプのネジロック剤を使いました。
インナーチューブの内側に取り付けられたシリンダーを特殊工具で固定してから、ヘキサゴンボルトを適切なトルクで締め付けます。
FZR750のサービスマニュアルによれば、このボルトの締め付けトルクは 2.3Kg・m(22.56N・m)です。次回の取外しを考慮して、適切なトルクで締め付けます。
※以下の写真はイメージです。さすがに締め付けている写真は一人では撮影できません。

床とマットが写ってしまいましたね。
今日も台所で作業を行っています。家族には内緒です。
スライドメタルとオイルシールの打ち込み
次は、フロントフォーク組み立ての山場である、スライドメタルとオイルシールの打ち込みです。
取付け時にオイルシールのリップ部分に傷がつかないようにフロントフォークの先端に台所用ラップを巻いておきます。組付け油としてフォークオイルを塗っておきます。

台所用ラップでも巻きすぎると抵抗になるので、インナーチューブを1周半ぐらい巻いたら、先端はインナーチューブの内側に押し込むと良いです。
スライドメタル、オイルシールワッシャ、オイルシールの順でスムーズにインナーチューブに通すことが出来ました。

フロントフォークオイルシールプッシャーを用いて、オイルシールを均等に叩き込みます。

昔は塩ビパイプを用いて打ち込んだこともありましたが、均等に打ち込むのもインナーチューブに傷をつけないように力を入れるのも困難でした。
昔に比べるとフロントフォークオイルシールプッシャー安価になりましたので、ご自身でフロントフォークのメンテナンスを行うなら1つ持っていると便利ですよ。
無事にオイルシールを打ち込むことができたので、オイルシールクリップを組み付けます。
オイルシールクリップはしっかり溝に入っていることが大切です。クリップの引っ掛かりが怪しい場合はオイルシールをもう少し叩き込みます。

この写真の後、ダストシールを取付けましたが、フロントフォークを立てた状態でインナーチューブを伸ばして手を離すと、インナーチューブの自重だけで滑らかにインナーチューブが沈んでいきます。
今まで味わったことのない、滑らかな動作に感動しました。
フォークオイルの注入
今回のメンテナンスでは、フロントフォークのセッティングは変更しません。
フォークオイルは、前回同様にヤマルーブ サスペンションオイルG-10とG-15を1:1でブレンドしたものを使用します。
フォークオイル量はあとで油面ゲージで調整するので少し多めに入れます。
その後、インナーチューブを伸縮させてフロントフォークのフォークオイルから気泡が消えるまで暫く放置します。

現在のフロントフォークスプリングは、スクーデリアオクムラのMEスーパースポーツスプリングを使用しております。
MEスーパースポーツスプリングの推奨フロントフォークオイルレベル140mmです。フォークオイルレベルアジャスターの油面ゲージを140mmに合わせます。

フォークオイルレベルアジャスターはこちらを使っています。
パイプ部分には10mmから300mmまで5mm間隔でメモリがあり、10mm単位で数値が記されています。数字やメモリは印刷ではないので、長期間たっても剥がれることはなさそうです。
フォークオイルの油面調整を撮影しようと思いましたが、一人では中々撮影が厳しいすね。

スプリングとトップキャップの取付け
トップキャップのオーリング(品番:36Y-23147-00)は残念ながら廃盤です。
耐油性のあるニトリルゴム製Oリングセットから適切なものを探したところ、R-23(内径30mm、リング厚3.5mm)が丁度良さそうです。

こちらの商品は上記の写真とはケースの形状が若干異なりますが、ニトリルゴム製Oリングセットです。R-01(内径3mm、リング厚1.5)~R-32(内径50mm、リング厚3.5)のものが419個入ってます。
スプリングなどのインナーパーツは以下の順で組み込みます。
写真右側が車体に組み込んだ時の上側となります。
トップキャップ
純正ワッシャ
スクーデリアオクムラのカラー
NTNワッシャ
NTNスラストベアリング
NTNワッシャ
スクーデリアオクムラMEスーパースポーツスプリング
純正ワッシャ
FZR750(1987年式 2LM)のフロントフォークにはスプリングのイニシャル調整とダンバーの減衰力調整ができます。そのためトップキャップには減衰力調整のための長いロッドが付いています。

私は傘の骨をL型に曲げたものを使って、これらのパーツを順番どおりにインナーチューブに入れてトップキャップを締めます。

インナーチューブ、アウターチューブ、そしてダストシートも美しいフロントフォークの完成です。

アップで見ても美しいですね。

今日の作業はここまでです。次回は車体への取付け作業を行います。