【マクロ経済】スタグフレーションに強い資産とは?コモディティおよび実物資産に注目?

- 本稿では、「スタグフレーションに強い資産とは?」という疑問に答えるべく、足元で懸念されているスタグフレーションの原因と、実際にスタグフレーションが発生した際に私が注目する投資対象を詳しく解説していきます。
- 最近の米国株式市場の下落は、FRBの金融引き締めや流動性の逼迫が主な要因となっており、特に銀行の準備金水準やリファイナンシング・ウォールが市場に影響を与えています。
- 市場の底打ちについては不透明ですが、テクニカル指標や流動性の改善が示唆する回復の兆しがあり、特にバリュー株や実物資産への投資が有望であるように見えます。
- スタグフレーションのリスクが高まる中、コモディティやバリュー株、不動産、ビットコインなどの資産に注目しており、特定の銘柄にも投資機会があるように見えます。
はじめに
世界の金融市場は、マクロ経済の動向、政策の変化、流動性への懸念などによって、大きな混乱が生じています。本稿では、最近の市場下落の背景、流動性に影響を与える要因、そして経済の不確実性の中での投資機会について解説していきます。
米国株式市場の急落を理解する
最近の米国株式市場の動きにより、景気後退やスタグフレーション(Stagflation)への懸念が高まっています。スタグフレーションとは、経済の停滞(Stagnation)とインフレ(Inflation)が同時に発生する状態を指します。通常、インフレは経済成長とともに進行することが多いですが、スタグフレーションでは「経済成長が鈍化または停滞しているのに、物価だけが上昇する」という異常な状況が起こります。
一部のアナリストは関税などの政治的要因を指摘していますが、根本的な問題は流動性にあります。米連邦準備制度理事会(FRB)の引き締め策、とりわけリバースレポファシリティの縮小により、銀行が準備金を取り崩す状況となり、流動性の逼迫が生じています。
加えて、今後数か月にわたる「借り換えの壁(リファイナンシング・ウォール)」が重要な焦点となっています。政策当局は米国10年債利回りを引き下げ、低金利での債務借り換えを目指していますが、市場がこれらの変化をどのように吸収できるかについては不透明な状況が続いています。
流動性と市場の安定性
流動性の逼迫を示す重要な指標の一つが銀行の準備金水準です。市場のアナリストによると、準備金が危機的な低水準に達すると、金融不安が発生しやすくなります。過去の危機、たとえば英国の国債市場危機やSVBの破綻も、準備金の減少が前兆となっていました。FRBはバランスシートの調整や債券の償還期間の延長を検討しており、これがさらなる複雑さを加えています。
「米国銀行の準備金と下限(-1標準偏差)」
(出所:CrossBorderCapital)
さらに、円キャリートレードの巻き戻しが市場の変動性を高めています。円を借りて米国資産を購入していた投資家がポジションを解消し始めたことで、市場への下押し圧力が強まっています。
ドル円の推移
(出所:TradingView)
米国株式市場は底を打ったのか?
多くの投資家が、市場が底を打ったのかどうかを疑問視しています。流動性の状況は改善の兆しを見せており、特に世界のM2マネーサプライが安定しつつあることがその一例です。しかし、テクニカル指標を見ると、持続的な回復が確認される前に、さらなる変動が続く可能性を示唆しています。
(出所:LSEG Datastream、Bloomberg)
加えて、米国株式市場におけるプットオプションの取引量が過去最高水準に達しており、市場における弱気なポジショニングが顕著になっています。こうした動きは、時として逆張りの買いシグナルとなることもあります。
(出所:ZeroHedge)
注目すべき主要なテクニカル指標
テクニカルな観点から、市場の底を見極めるには多角的なアプローチが必要です。
マクロ視点
市場の反転は通常、FRBの政策転換に続いて発生します。しかし、過去の事例を見ると、市場が本当の底を打つのは最初の利下げではなく、複数回の利下げが行われた後です。
ファンダメンタルズ
S&P500の株価収益率(P/Eレシオ)は、歴史的な平均と比較すると依然として高水準にあります。P/Eレシオが15~20の範囲に下落すれば、バリュー投資の観点から魅力的なエントリーポイントになると考えられます。
(出所:Highcharts)
テクニカル水準
200週移動平均線は、長期的なトレンド転換において重要なサポート水準となっています。加えて、他の主要な移動平均線のクロスオーバーにも注目することで、市場の方向性をより明確に判断できます。
(出所:TrendSpider)
米国株投資戦略:スタグフレーションへの備え
今後の市場リスクの一つとして、インフレの再燃によるスタグフレーションの発生が挙げられます。住宅コストの上昇、中国の政策変更、コモディティ主導のインフレなどが、経済環境を一層厳しくする可能性があります。
過去のスタグフレーション期に良好なパフォーマンスを示した資産には、以下のようなものがあります。
✅ コモディティおよび実物資産:金、原油、金属はインフレ期に相対的に強い値動きを示す傾向があります。
✅ バリュー株:P/Eレシオが低い企業は、スタグフレーション環境下で成長株を上回るパフォーマンスを発揮することが多いです。
✅ 不動産:特に賃貸物件などの一部の不動産セクターは、インフレに連動した収益をもたらす可能性があります。
✅ ビットコイン(BTCUSD):希少性のあるデジタル資産として、ビットコインは法定通貨の価値下落に対するヘッジ手段となる可能性があります。
現在の米国株式市場における注目銘柄
マクロ経済の課題がある中でも、株式市場には投資機会が存在しており、特に下記の3銘柄に注目しています。
アマゾン(AMZN)
株価収益率(P/Eレシオ)が歴史的な低水準にあり、eコマースとクラウドコンピューティングの分野で圧倒的な地位を維持していることから、魅力的な投資対象に見えます。
(出所:TrendSpider)
ネクステラ・エナジー(NEE)
強固なテクニカル指標に加え、再生可能エネルギーに特化していることから、公益事業セクターにおける堅実なディフェンシブ銘柄と見なされています。
(出所:TrendSpider)
ロビンフッド(HOOD)
市場の変動性が取引活動に影響を与えるものの、顧客基盤の拡大と堅調な財務状況を踏まえると、長期的な成長銘柄として注目しています。
(出所:TrendSpider)
また、直近では、インベストリンゴのテクノロジーセクター担当アナリストであるイアニス・ ゾルンパノス氏が下記の分析レポートも執筆しておりますので、本稿と併せてご覧ください。
米国株式市場に対する結論
市場環境は依然として不透明ですが、流動性、マクロ経済政策、テクニカル指標を理解することで、投資家にとって貴重な洞察を得ることができます。そして、リスクは存在するものの、割安な資産やディフェンシブセクターへの戦略的な投資を行うことで、変化する経済環境を乗り越えることが可能であると考えています。
🚀お気に入りのアナリストをフォローして最新レポートをリアルタイムでGET🚀
ジェームズ・ フォード氏はマクロ経済、並びに、注目のテクノロジー銘柄に関するレポートを毎週複数執筆しており、プロフィール上にてフォローしていただくと、最新のレポートがリリースされる度にリアルタイムでメール経由でお知らせを受け取ることが出来ます。
加えて、その他のアナリストも詳細な分析レポートを日々執筆しており、インベストリンゴのプラットフォーム上では「毎月約100件、年間で1000件以上」のレポートを提供しております。
そのため、フォード氏のテクノロジー関連銘柄やマクロ経済に関する最新レポートに関心がございましたら、是非、フォローしていただければと思います!
加えて、フォード氏は下記の4つのポートフォリオを運用しており、各ポートフォリオに関する下記の詳細なレポートも定期的に執筆しておりますので、インベストリンゴのプラットフォーム上より併せてご覧いただければと思います。
1️⃣ YOLOポートフォリオの詳細
2️⃣ EOW(エンド・オブ・ザ・ワールド)ポートフォリオの詳細
・ EOW(エンド・オブ・ザ・ワールド)ポートフォリオとは?
3️⃣ スイングポートフォリオの詳細
4️⃣ マクロETFポートフォリオの詳細
YOLOポートフォリオの最新動向
EOWポートフォリオ
スイング・ポートフォリオの最新動向
マクロETFポートフォリオの最新動向
アナリスト紹介:ジェームズ・ フォード
📍米国マクロ経済&テクノロジー担当
フォード氏のその他のテクノロジー関連銘柄やマクロ経済のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、フォード氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。
インベストリンゴでは、弊社のアナリストが「高配当銘柄」から「AIや半導体関連のテクノロジー銘柄」まで、米国株個別企業に関する分析を日々日本語でアップデートしております。さらに、インベストリンゴのレポート上でカバーされている米国、及び、外国企業数は「250銘柄以上」(対象銘柄リストはこちら)となっております。米国株式市場に関心のある方は、是非、弊社プラットフォームより詳細な分析レポートをご覧いただければと思います。