私の事務所では、ご依頼いただく前に他の法律事務所と相見積もりを取るなどして、しっかりと比較検討していただくことをおすすめしており、事務所としてそれを歓迎しています。
 この記事では、弁護士を選ぶ際に相見積もりを取るのがなぜ良いのかをご説明します。

見積書作成依頼の根拠

 まず、弁護士に依頼することが初めてという方がほとんどだと思いますので、中には「見積書の作成ってお願いできるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
 その点について、日本弁護士連合会(日弁連)は、弁護士の報酬に関する規程というものを定めており、各弁護士はこの規程に基づいて報酬などを定めることになっています(弁護士の報酬に関する規程はこちらからご覧ください)。
 弁護士の報酬に関する規程の第4条には、「弁護士等は、法律事務を依頼しようとする者から申出があったときは、その法律事務の内容に応じた報酬見積書の作成及び交付に努める」と定められています。
 そのため、見積書の作成を申し出た場合には、作成してくれることがほとんどであると思います。語尾が「努める」になっているので、中には見積書を出さない事務所や弁護士もいるかもしれません。ですが、そのような事務所や弁護士は、見積書を出さないことそれ自体が、弁護士を選ぶ際の比較検討材料になると思います。

なぜ相見積もりが良いのか

 では、なぜ相見積もりを取るのが良いのでしょうか。それには以下の3つの理由があります。

弁護士費用がよくわかる

 まずは、弁護士費用がよくわかるということです。今は、弁護士費用が自由化されており、各々の弁護士が費用を定めることになっています。しかし、相談する前の段階では、どのくらいの費用になるのかがわからないことが多いです。また、1か所の事務所からの見積もりだけでは、その金額が高いのか安いのかというのがわからないです。
 そのため、2か所以上から相見積もりを取ることによって、現在抱えている法律問題を依頼した場合の弁護士費用の相場を見えるようにすることが重要です。
 弁護士費用の相場が少しでもわかれば、少なくとも、「高すぎる弁護士費用」を払ってしまう可能性は減らすことができ、適正な料金に近い形で法律サービスを受けることができます。

依頼する弁護士や事務所のことがわかる

 次に、相見積もりを取ると、弁護士や事務所のことがわかるようになるという点です。見積書の作成の本来的機能は、上で書いたような弁護士費用を把握するという機能です。
 ですが、見積書を受け取るためには、①最低30分程度の法律相談を受け、②見積書の作成を依頼し、③実際に見積書を受け取るという段階を経るため、それぞれの段階で弁護士や事務所の対応の質を把握することができます。
 まず、①や②の段階では、弁護士の対応が良いかどうかを把握することができます。弁護士に依頼すると、中には年単位で事件が継続する場合もあります。そのため、弁護士がお客様に対してどのように対応するのかというのは非常に重要です。感じが悪かったり、適当な応対をするような弁護士だと、長期的な関係を築いていくことは難しいでしょう。
 また、③の段階では、見積書の記載から、どのくらい丁寧な仕事をするのかが垣間見えます。弁護士の出す見積書の中には、詳細な説明がなされず、不親切な見積書も多いです。見積書が不親切だとそれだけでダメというわけではありませんが、見積書を丁寧に作成し、丁寧に説明してくれる弁護士の方が、依頼した後も丁寧に対応し、事件処理も丁寧であることが期待できると思います。

自分で納得して判断することができる

 最後に、相見積もりを取ると、自分で納得して判断することができるという点です。
 今は、ホームページや広告、インターネットでの口コミ評価などが充実していて、それを見るだけで依頼する先を決めてしまう人も多いかもしれません。ですが、「情報を見るだけ」というのと、「実際に会って、相談をして、作成された見積書を見る」というのでは、後者の方が情報量が圧倒的に多いです。しかも、自分が直接体験して得た情報になるので、最も信頼できる情報といっても良いでしょう。
 そのような自分で得た、信頼できる情報を基に比較検討をして判断すれば、心から納得して、依頼する弁護士を選べることになると思います。そして、心から納得して依頼をすれば、その後のコミュニケーションもスムーズに進むでしょうし、安心して法律問題の処理を委ねることができます。

まとめ

 以上のように、相見積もりを取るということを通して、①弁護士費用を知り、②弁護士について知り、③それを基に納得して判断すれば、弁護士選びで失敗してしまうことは少なくなります。
 相見積もりは、時間と労力(と場合によっては法律相談料・交通費などの支出)が掛かるものですが、少しの時間と労力(とお金)を惜しんで「弁護士選びに失敗した」と感じてしまうのは、依頼者にとっても弁護士にとっても不幸なことです。
 弁護士へ依頼することは、一生に数多いものではないと思いますし、自分の重要な権利利益を任せることになるのですから、依頼者にとっても弁護士にとっても幸せになるために、相見積もりを取ってみてはいかがでしょうか。