アニミズムとは 日本のアニメと八百万の神に宿る意味や世界観

アニミズムは、自然界のすべてに魂が宿るという信仰であり、日本の文化やアニメに深く根ざしています。この記事では、アニミズムと日本の伝統的な「八百万の神々」の概念が、どのようにして現代の日本アニメに影響を与えているかを探ります。特に、アニメ作品における自然の描写やキャラクター設計に見られるアニミズム的要素を通じて、日本独自の世界観がいかに形成されているかを解析します。この深い繋がりを理解することで、アニメの背後にある豊かな文化的意味や、自然と人間との関係性に対する洞察が得られるでしょう。

アニミズムとは

アニミズム(animism)は、自然物や無生物に霊や意識(魂)が宿るとする信仰のことを指します。この考え方は、多くの先住民族や古代文化に見られる世界観であり、自然や物質全てに生命や魂が宿ると考えることから、それらを尊重し、神聖視する特徴があります。日本人が自然に持っている感覚として、山の神様がいたり、海の神様がいたり、1本1本の木々、ロボットや人形に至るまで、人間のように、いやそれ以上の場合もあるくらいに尊い魂が宿っており、そのすべての繋がりを大切にするという心があります。みんな心を持っている、この世に存在するあらゆるものが、その分野の責任と役割を担いながらも、他の分野を侵すことなく助け合い支え合い生きていくという価値観があります。また日本のアニミズム的な世界観では、あらゆるものに魂やスピリチュアルなパワーが宿っているということから、生活のすぐそばに自分たちの生活を見守ってくれている神様がいるものだという感覚があります。

一神教の宗教の元ではこのような価値観はなく、神様は唯一無二の存在で、全知全能、人間はとても到達できない存在としてあがめられる傾向があります。日本の場合には、身近にいるもの、あるもの、目には見えない氣にまでも神や魂があり、そこにそれぞれ祈り、感謝し生きているのです。

アニミズムは英語?

「アニミズム」という言葉自体は英語です。スペルは「animism」。この語はラテン語の「anima」(生命・魂)から派生しており、19世紀にイギリスの人類学者エドワード・タイラーによって用いられるようになりました。彼はアニミズムを「最初の宗教」と位置づけ、人類共通の信仰形態として分析しました。

アニミズム的思考とは?

アニミズム的思考は、自然界のあらゆるものが生命力を持ち、それぞれが精霊や神として意識を有しているという観点から事象を理解するアプローチです。これにより、山や川、動植物などが単なる物質ではなく、人間と対等、あるいはそれ以上の存在として尊重される基盤を作ります。

アニミズムを象徴する日本のアニメやゲーム

アニミズムを象徴する日本のアニメやゲーム

日本のアニメでは、このアニミズム的な思考がしばしば描かれています。例えば、宮崎駿の作品『もののけ姫』や『となりのトトロ』では、自然や精霊が重要な役割を果たし、自然と人間との共生をテーマにしています。ポケットモンスターでは、たくさんの種類がいるポケモンそのものがそれぞれの属性を持ち、それぞれの役割・意思を持っているかのように描かれて、自然の力を活用しながら人間との共存を果たしています。

これらの作品は、自然や動植物に対する敬意というアニミズム的価値観を視覚的にも感情的にも強く訴えかける内容となっています。

『もののけ姫』(宮崎駿監督、スタジオジブリ)

『もののけ姫』は、人間と自然との対立と共生を描いたアニメ映画です。作品中で描かれる森の精霊たち、特にシシ神と呼ばれる森の守り神は、アニミズム的な思考の象徴です。これらの精霊たちは、自然界のさまざまな要素から形成され、自然を破壊する人間に警告を発します。アニミズムの視点からは、これらの精霊は自然の一部として尊重され、保護されるべき存在として描かれています。

ポケットモンスター(ポケモン)

任天堂がゲームボーイの時代に発売して大人気となったポケモンも、日本のアニミズム的思考に強く影響を受けている作品であると考えられます。水属性や土属性など、それぞれの属性を持つポケモンは、モンスターという存在でありながらも、まるでその属性の神や象徴であるかのように描かれ、水タイプのポケモンは自然の力を応用した水にまつわる技を繰り出し、さらには人間とともに苦楽を共にするという描かれ方をしています。さらに、アニメ化されたポケモンでは、頑張るポケモンに祈り、労い感謝する場面も多く描かれています。多く日本の八百万の神々の考え方に非常に近いポケモンは世界中でも人気となり、ポケモンの流行から「なぜ日本ではこのようなクリエイティブな独特な作品ができるのか?」と議論され、アニミズム的な思考がベースにあるのではないかという論議が強まったように感じます。

『千と千尋の神隠し』(宮崎駿監督、スタジオジブリ)

この作品は、アニミズム的要素が非常に豊富です。主人公の千尋が異世界に迷い込み、神々や精霊たちが集う湯屋で働くことになります。湯屋の客たちは、川の神や土地の神など、自然界のさまざまな要素から成る存在です。『千と千尋の神隠し』は、自然界やその構成要素に敬意を払い、それらと調和することの重要性を強調しており、アニミズムの視点から見ると、自然と人間との共生の模範とも言える作品です。

『となりのトトロ』(宮崎駿監督、スタジオジブリ)

この作品では、主人公の少女たちが森の精霊トトロと出会い、友情を育む様子が描かれています。トトロは自然と密接に関連した存在であり、森の中での生活や、植物と動物との調和を象徴しています。トトロはまた、子供たちに自然の不思議と美しさを教える役割も担っており、アニミズム的な要素が強く表れているキャラクターです。

『火の鳥』手塚治虫

『火の鳥』は、手塚治虫による幅広い歴史的背景を持つ作品で、人間の生と死、再生、不死をテーマにしています。この物語に登場する火の鳥は、生命と再生の象徴であり、アニミズム的には自然界の永続的な力と精神性を象徴しています。火の鳥の羽根一枚が持つ力や、人間と自然の絶え間ない関係性を通じて、自然界の神秘とその保護の重要性が描かれています。

『ゴジラ』

ゴジラは、核実験の結果、突然変異した巨大な怪獣として描かれています。アニミズム的な観点から見ると、ゴジラは自然界の復讐者としての役割を担っています。人間の科学技術が自然に及ぼす影響を象徴し、破壊された自然界からの反撃を体現していると言えます。ゴジラは自然界の警告として、人間に対する自然の力の再認識を促す存在です。

『ドラえもん』

ドラえもん自体はアニミズムと直接的な関連は少ないかもしれませんが、多くのエピソードで自然との関わりや環境問題に触れています。未来から来たロボットであるドラえもんが、現代の子供たちに環境の大切さや、自然との調和の重要性を伝える場面は、間接的にアニミズム的価値観を反映していると言えるでしょう。藤子・F・不二雄さんが描いたドラえもんはそのように、自然との調和や未来から来たロボットであるドラえもんが色々な困りごとや悩み事を解決してくれるけれど、それに甘んじることがなく、感謝を忘れずにというメッセージ性が強く感じられました。便利な道具を出して助けてくれるドラえもんという作品からも子どもたちへの学びがありましたが、藤子・F・不二雄さんの死後、2005年に大幅リニューアルされてしまい、ドラえもんはただの都合がいいロボットで、のび太やしずかちゃんたちもひみつ道具を自己中心的に使い、日本人的な要素はかけてしまい、科学の発展で便利になるということが強調された作品になってきていると感じます。

『鉄腕アトム』

『鉄腕アトム』は、ロボットと人間との共生を描いており、ロボットに魂や感情が宿るというアイデアを通じて、アニミズム的思考が表れています。アトム自身が人間と同等の感情や倫理を持ち、自然や生命への尊重を示すシーンが多く見られます。ここでは、テクノロジーと自然界の関連性やバランスが重要なテーマです。

『君の名は』

『君の名は』は直接的にはアニミズムを描いているわけではありませんが、物語の中で重要な役割を果たす古い神社や縄文時代から続く自然崇拝の伝統が、アニミズム的思考に根差しています。時間や運命を超えたつながりを象徴する彗星や、主人公たちの身体の入れ替わりも、自然界と人間の間の不思議なつながりを示唆しています。

アニミズムと八百万の神々の関係性

アニミズムは日本の宗教観にも深く関連しており、特に神道の「八百万の神々(やおよろずのかみ)」の概念と密接です。この思想は、あらゆる自然物や現象に神が宿るとするもので、日本独特のアニミズム的世界観を形成しています。山や川、木々一つ一つに神が存在し、それぞれに生命と意志があるとされることが、日本の文化や芸術に大きな影響を与えています。

日本独特の思考や価値観が世界から注目されている

現代において、日本のアニミズム的な思考や価値観は、グローバルな環境問題への対策や、持続可能な生活スタイルへの関心が高まる中で、再評価されつつあります。自然との調和を重んじる日本の伝統的な価値観は、エコロジカルな思想やサステナブルな社会構築に向けたヒントを提供しており、世界中の人々から注目を集めています。このように、日本固有のアニミズムは、国際社会における新たなパラダイムとして機能し得る可能性を持っています。