FIREと資産形成に欠かせないキャッシュフローとリスク管理
FIREを達成した人や資産形成を目指す人にとって、安定したキャッシュフローを確保しつつ、市場の下落リスクを抑えることは重要な課題です。特に、高分配金ETFを活用して生活費を補いながら資産を守る方法に関心が高まっています。
本記事では、「FEPI(REX FANG & Innovation Equity Premium Income ETF)」と「GLDM(SPDR Gold Shares ETF)」を組み合わせたポートフォリオを提案します。この戦略のポイントは、カバードコールETFの高分配金を確保しながら、ゴールドを活用して値下がりリスクを軽減することです。
- FEPI: テクノロジー株に投資し、毎月高い分配金を提供
- GLDM: 株式市場の下落リスクを軽減するゴールドETF
この記事では、100万円投資時の3つの運用パターンや、投資信託を活用した代替案を詳しく解説します。なお、前回の記事ではカバードコールETFの基本を紹介しましたが、今回はリスク分散の観点からゴールドとの相関性に焦点を当てます。
※3月12日より楽天証券でもFEPI、CEPI、AIPIの取り扱いが始まりました。
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/info/info20250312-01.html
FEPIの仕組みと押さえておくべき課題
FEPIは、FANG(Facebook、Amazon、Netflix、Google)やNVIDIA、Palantirといった成長株に投資し、カバードコール戦略によって年率20~30%の高分配金を毎月提供するETFです。
カバードコール戦略とは、保有株式に対してコールオプションを売却し、そのプレミアムを分配金として受け取る手法です。ただし、いくつかのデメリットもあります。
FEPIの課題と影響
課題 | 詳細 | 影響 |
---|---|---|
値上がり益の制限 | 株価が急上昇するとオプションが行使され、上昇分の利益が得られない。 | テック株の成長力をフルに活かせない。 |
分配金後の株価下落 | 分配金支払いで純資産価値(NAV)が減少し、株価が下がる。 | 長期的な資産増加が制限される。 |
テック株への依存 | テクノロジーセクターに集中し、金利上昇や景気後退に脆弱。 | 市場変動の影響を受けやすい。 |
2024~2025年の市場では、米国の利下げ期待が後退し、金利上昇リスクが浮上しています。例えば、2024年12月のFOMCでタカ派的な発言があれば、テック株が売られ、FEPIの株価に下押し圧力がかかる可能性があります。そのため、FEPI単独運用ではリスクが高まる可能性があります。
GLDMの役割とポートフォリオへの貢献
GLDMは、金価格に連動するETFで、「安全資産」としての特性を活かし、FEPIのリスクを補完します。
2023~2025年の金価格は、インフレ懸念や地政学リスク(例: ウクライナ情勢、中東の緊張)を背景に上昇し、2024年末には史上最高値を更新しました(出典)。
GLDMのメリットと効果
メリット | 詳細 | ポートフォリオへの効果 |
---|---|---|
安全資産としての役割 | 株式市場が下落する局面で価格が上昇する傾向。 | 市場暴落時の損失を軽減。 |
インフレ対策 | 物価上昇時に価値が維持されやすい。 | 資産の購買力を保護。 |
低相関性 | FEPIとの相関係数は0.1~0.3と低い。 | ポートフォリオの安定性を強化。 |
この低相関性により、FEPIのテック株依存リスクをGLDMが補完し、高分配金と資産保全のバランスを取ることが可能です。

出典:Google finance
【100万円投資】FEPIとゴールドの最適保有比率:3つの運用パターン
100万円をFEPIとゴールドに投資する場合、目標やリスク許容度に応じた3つの運用パターンを提案します。
価格は2025年3月12日時点(FEPI: $45.00、GLDM: $51.00、為替147円/USD)を基に計算しています。ゴールドを活用することで、FEPIのテック株依存によるリスクを具体的に軽減し、市場環境の変動に備えます。
運用パターンと詳細 (シミュレーション)
パターン | FEPI比率 | ゴールド比率 | 投資額(FEPI / ゴールド) | 株数(FEPI / GLDM) | 予想年間分配金 | リスクヘッジ効果 |
---|---|---|---|---|---|---|
高分配金重視 | 70% | 30% | 70万円 / 30万円 | 105.7株 / 40.0株 | 約17.4万円 | 市場下落時に30万円分の資産を保護。テック株の下落幅が20%でも約6万円の損失軽減。 |
バランス型 | 50% | 50% | 50万円 / 50万円 | 75.5株 / 66.6株 | 約12.4万円 | 暴落時に損失を50%軽減。テック株30%下落時、ゴールドが10%上昇すれば損失を約15万円抑える。 |
リスクヘッジ重視 | 30% | 70% | 30万円 / 70万円 | 45.3株 / 93.3株 | 約7.5万円 | テック株暴落の影響を大幅抑制。50%下落でもゴールド上昇で損失を約25万円軽減可能。 |
- 計算前提:
- FEPI: $45.00 × 147円 = 6,615円/株、分配金利回り25%で1株あたり約1,653円/年(REX Sharesに基づく推定)。
- GLDM: $51.00 × 147円 = 7,497円/株、分配金なし。
- リスクヘッジの具体例:
- 高分配金重視: FEPIの70万円分が20%下落(約14万円減)した場合、ゴールド30万円分が安定または5%上昇(約1.5万円増)すれば、純損失を約12.5万円から6万円程度に抑えられる。
- バランス型: テック株が30%下落(約15万円減)し、ゴールドが10%上昇(約5万円増)すると、損失は15万円から10万円に軽減。50%のリスクカバー効果を発揮。
- リスクヘッジ重視: テック株が50%暴落(約15万円減)でも、ゴールドが15%上昇(約10.5万円増)すれば、損失を15万円から4.5万円に大幅削減。市場暴落時の耐性が強い。
- 高分配金重視: FEPIの70万円分が20%下落(約14万円減)した場合、ゴールド30万円分が安定または5%上昇(約1.5万円増)すれば、純損失を約12.5万円から6万円程度に抑えられる。
- リスクヘッジの背景: ゴールドは株式市場との相関性が低く(相関係数0.1~0.3)、2023~2025年のようなインフレや地政学リスク下で価値が上昇する傾向。一方、FEPIはテック株集中で金利上昇や景気後退に脆弱なため、ゴールドが下落リスクを効果的に補完します。
パターン選択の目安
- 高分配金重視: FIRE達成者で毎月の生活費を優先。分配金17.4万円(月約1.45万円)はキャッシュフローを強化するが、テック株の下落リスクに一定の耐性あり。
- バランス型: 資産形成中で安定性と収入を両立。分配金12.4万円(月約1万円)を得つつ、市場変動時の損失を半分に抑える中庸な選択。
- リスクヘッジ重視: 資産保全を重視。分配金7.5万円(月約6,250円)と控えめだが、テック株暴落時の損失を最小限に抑え、安全性を最大化。
【投資信託での代替案】iFreeNEXT FANG+とSBIサクッとゴールド
日本の投資信託で同様の戦略を再現できるか、iFreeNEXT FANG+(FANG+指数連動)とSBI証券サクッとゴールド(金価格連動)を比較しました。
項目 | iFreeNEXT FANG+ | SBIサクッとゴールド |
---|---|---|
投資対象 | FANG+指数(テック株10銘柄) | 金価格 |
分配金 | ほぼなし(年1回、再投資型) | なし |
信託報酬 | 0.495% | 0.44% |
値上がり益 | テック株の上昇をフルに享受 | 金価格に連動 |
リスクヘッジ | テック株依存で市場変動に弱い | 株式市場と逆相関で高い |
投資信託では高分配金を得ることができず、FIRE向けの代替手段としては限定的ですが、成長を重視した資産形成には適しています。
検証結果
- FIRE達成者向け
- FEPI+GLDM: 毎月分配金で生活費を補いつつ、リスクをヘッジ。キャッシュフロー重視に最適。
- iFreeNEXT FANG+とサクッとゴールド: 分配金がなく、FIREの収入源としては不向き。
- 資産形成中向け
- FEPI+GLDM: 高分配金が魅力だが、値上がり益が制限される。
- iFreeNEXT FANG+とサクッとゴールド: テック株の成長を享受でき、長期資産拡大に適するが、収入は期待できない。
結論: FEPI+GLDMはキャッシュフローとリスクヘッジの両立で優位。投資信託では高分配金が得られず、FIRE向けの代替案としては限定的だが、成長重視の資産形成には有効です。
まとめ:目標に合った戦略でFIREと資産形成を
FEPIとGLDMの組み合わせは、高分配金とリスクヘッジを両立する強力な戦略です。FIREを達成した方は「高分配金重視」、資産形成中の方は「バランス型」、資産保全を重視する方は「リスクヘッジ重視」を選ぶのがおすすめです。
今回はFEPIとの組み合わせを検証しましたが、CEPI、AIPI、JEPQなど、ハイテク分野を対象としたカバードコールETFでも、ゴールドは有効なリスクヘッジとなります。
投資信託ではキャッシュフローを得るのは難しいものの、成長を重視する選択肢として活用可能です。市場動向を見極め、あなたの目標に合った第一歩を踏み出してください。