「ぼくらの」は、巨大ロボット「ジアース」を操縦する15人の子供たちの物語。操縦が即ち死を意味する過酷な設定の中で、生と死、犠牲と救済、個人と社会の関係を探求する。SF要素を通じて人間性の深淵に迫る、哲学的で重厚な青年向け作品。
「ぼくらの」はどこで読める?
11巻完結。2007年にテレビアニメ化された。
以下の方法で読むことができます
- 電子書籍:Kindle、eBookJapan、ブックライブなどで配信中。
多くの電子書籍ストアでは、無料で試し読みできます。 - 紙の書籍:全国の書店で発売中。オンライン書店でも購入可能です。
11巻完結
作品基本情報
タイトル:「ぼくらの」
漫画:鬼頭 莫宏
ジャンル:
SFロボット漫画
人間ドラマ
哲学的・思想的作品
対象読者層:
青年層(高校生以上)
深い人間ドラマや哲学的テーマを好む読者
生と死、人間性について考えることに興味がある人
過激な描写や重いテーマに耐えられる成熟した読者
主要キャラクター
和久 隆(わく たかし)
物語の冒頭で重要な役割を果たす中学1年生の少年です。サッカー好きで明るい性格の持ち主で、子供たちの中ではムードメーカーとして活躍します。物語の始まりで、和久はジアースの最初のパイロットとなります。彼の戦いは、他の子供たちにとって大きな衝撃となります。和久は戦いに勝利しましたが、その直後に命を落としてしまいます。
和久の死は、ジアースのパイロットになることの真の意味を他の子供たちに突きつける重要な出来事となります。彼の死は、これから続く壮絶な戦いの序章となり、物語全体のトーンを設定する役割を果たしています。
小高 勝(こだか まさる)
建設業社長の息子として登場する中学1年生の少年です。父親を深く尊敬しており、自信に満ちた性格の持ち主です。しかし、その自信は時として傲慢さとして表れることもあります。小高は、和久の次にジアースのパイロットとなります。
彼の戦いの中で、小高は街の被害を考慮せずにジアースを操縦し、結果として自分の尊敬する父親を踏みつぶしてしまいます。この出来事は、小高の性格の欠点を浮き彫りにすると同時に、ジアースの戦いがもたらす悲劇的な結果を象徴しています。小高の物語は、力の使い方と責任の重要性を問いかける役割を果たしています。
矢村 大一(やむら だいいち)
貧しい家庭に生まれ育った中学1年生の少年です。両親がいない中、弟妹を養うためにアルバイトをしている責任感の強い少年です。大一は、小高の次にジアースのパイロットとなります。
大一の戦いは、家族への深い愛情と責任感に基づいています。彼は、自分が死んでしまうことで妹弟たちを残していくことに強い葛藤を感じますが、同時にジアースの戦いに勝たなければ地球そのものがなくなってしまうことを理解し、戦うことを決意します。大一の物語は、個人の犠牲と大局的な責任のバランスを問いかける役割を果たしています。
半井 摩子(なからい まこ)
生真面目な性格の女子中学生です。売春婦の母親を持つという背景から、差別を受けないよう誰よりも規律を守って生きることを自分に課しています。摩子は、大一の次にジアースのパイロットとなります。
彼女は、パイロットに選ばれたことをきっかけに、母親の生き方を見つめ直します。最初は恥ずかしく思っていた母親の姿が、実は誰よりも堂々としていたことに気づきます。摩子の戦いは、母親の心を受け継ぎ、これまでの自分の考えを脱却するような形で勝利を収めます。彼女の物語は、偏見や自己認識の変化、そして真の強さとは何かを問いかける役割を果たしています。
本田 千鶴(ほんだ ちづる)
華奢な体つきと左目の下にある泣きボクロが特徴の女子中学生です。明るい性格の持ち主ですが、過去に中学校の教師と性的関係を持ち、その後教師の裏切りにより知り合い数人から性的暴行を受けるという壮絶な経験をしています。
千鶴は、加古功が戦うことを拒否した際に、彼を刺してジアースのパイロットの役割を引き継ぎます。彼女の戦いは、過去の出来事への復讐心に駆られたものとなります。しかし、最後の瞬間に姉の存在に気づき、復讐を断念します。千鶴の物語は、トラウマや復讐心、そして家族の愛がもたらす救いを描く役割を果たしています。
宇白 順(うしろ じゅん)
無表情で口数の少ない中学1年生の少年です。頭脳明晰で仲間の中でも高い判断力を持っていますが、他人に対する配慮が見られず、時に仲間に対して暴言を吐くこともあります。順は、妹のカナを日常的に虐待しているという複雑な家庭環境を持っています。
物語の中盤で、順がジアースと契約していなかったことが明らかになります。しかし、カナの死後、順は最終的にジアースと契約し、パイロットになることを決意します。順の物語は、家族関係の複雑さ、個人の成長、そして責任の受容を描く重要な役割を果たしています。
コエムシ
拳大ほどの小さな体を持つ謎の生物です。子どもたちにジアースの戦闘方法を教える役割を担っています。一見ぬいぐるみのようなかわいい姿をしていますが、口は悪く、性格も残忍です。
コエムシは物語全体を通じて、子どもたちとジアースをつなぐ重要な存在として機能します。彼は子どもたちに戦いの真実を少しずつ明かしていき、彼らの精神的な成長を促す役割も果たしています。コエムシの存在は、物語の謎めいた雰囲気を作り出すとともに、子どもたちが直面する残酷な現実を象徴しています。
町 洋子(まち ようこ)
そばかすが特徴の中学1年生の女の子です。自然学校でココペリの待つ洞窟へ行くことを提案した人物として登場します。しかし、物語が進むにつれて、洋子が実はココペリと同じ平行世界の人間であり、契約者を探す役割を担っていたことが明らかになります。
さらに、洋子はコエムシの妹でもあることが判明します。彼女の存在は、物語の謎の核心部分を形成しており、平行世界の概念や物語の真の目的を理解する上で重要な役割を果たしています。洋子の正体の暴露は、物語に大きな転換をもたらし、子どもたちの戦いの意味をより深く問いかける契機となっています。
用語集
ジアース
「ぼくらの」に登場する巨大ロボットです。15人の中学生が乗り込み、地球を襲う謎の敵と戦うために使用されます。ジアースの最大の特徴は、その動力源がパイロットの命であることです。戦闘する度にパイロットは必ず命を落とします。ジアースは格闘戦を主体とし、全身からレーザーを発射する能力も持っています。その身長は約500メートルで、最高移動速度は陸上で時速1,000キロメートル程度、水中で時速100キロメートル程度です。
ココペリ
「ぼくらの」の物語の始まりで登場する謎の男性です。洞窟に住んでおり、子どもたちをジアースによる戦いに誘い込みます。細身の体型で、伊達眼鏡をかけているのが特徴です。子どもたちを戦いに誘った後、姿をくらませます。後に、ココペリの正体は平行世界の人間で、以前にジアースを使って戦っていた契約者の一人であることが明かされます。
平行世界
「ぼくらの」の物語では、平行世界の存在が重要な要素となっています。これは「枝状分岐宇端末点」と呼ばれ、無数に存在する地球の可能性の一つを指します。主人公たちが戦う相手は、実はこの平行世界の地球人たちです。戦いの目的は、コエムシによると「宇宙の未来の可能性の淘汰」「ただの自然現象」とされていますが、具体的に戦いを行わせている存在については明らかにされていません。この設定により、主人公たちは自分たちの地球を守るために他の地球の人々と戦わざるを得ないという、道徳的なジレンマに直面することになります。
契約
「契約」はジアースのパイロットになるための重要な手続きです。契約はコエムシが用意する板に手を触れることで完了します。契約者は戦闘時に強制的にジアースのコックピットに転送されます。しかし、操縦は選ばれた1人だけが行い、他のメンバーはそれを見守ることしかできません。契約は途中で破棄することができず、契約者が病気や事故で意識を失っても解除できません。また、妊婦が契約者となった場合、胎児も同時に母親とは別の独立した契約者となります。この「契約」システムが、物語の悲劇性を高める重要な要素となっています。
日乃レポート
物語の背景設定として重要な出来事です。物語の約25年前に実行されたクーデター計画の名称で、日米安保条約の破棄、在日・極東米軍との交戦、改憲、自主独立路線への転換などを含む内容でした。政府・自衛隊の一部により実行され成功を収めたとされています。この出来事により、物語の舞台となる日本は政策を大きく転換し、外交面では親中路線を執るようになりました。また、自衛隊は国防軍へと発展的解消を遂げ、アジア・太平洋地域の緊張状態が高まるきっかけとなりました。
天津条約
「ぼくらの」の世界設定において重要な国際条約です。この条約により、全世界的に無人兵器の所持が規制されています。そのため、作中に登場する戦闘機などの兵器はほとんど全て有人兵器となっています。この設定は、人の命の軽重を問う場面で提示され、物語の主題と深く関連しています。天津条約の存在により、ジアースと戦う国防軍は有人の兵器を使用せざるを得ず、それがさらなる人命の犠牲につながる可能性を示唆しています。
国防軍
「ぼくらの」の物語が設定された近未来の日本において、自衛隊から発展的解消を遂げた軍事組織です。陸海空三軍からなり、物語の中でジアースとの戦いをサポートする役割を担っています。国防軍の兵器の制式名称には皇紀が用いられており、例えばF-15Jが41式、F-2が60式と呼ばれています。しかし、階級名は自衛隊式のままです。物語の中で国防軍は、ジアースの力を軍事的に利用しようとしますが、人間の技術では制御できないことを知り、パイロットたちのサポートに回ることになります。
あらすじ
突然の契約と最初の犠牲
夏休みに自然学校に参加した15人の少年少女たちは、海岸の洞窟でココペリという謎の男と出会います。ココペリから「ゲーム」への参加を誘われ、14人が契約を交わします。
翌日、巨大ロボット「ジアース」が現れ、最初のパイロットとなったサッカー少年のワクが敵と戦います。しかし勝利の直後、ワクは死んでしまいます。ここで初めて、ジアースの操縦には命を代償とすることが明らかになるのです。
残酷な真実と葛藤
次のパイロットとなったコダマは、戦いの最中に自分の父親を誤って踏み潰してしまいます。その後、ジアースの操縦には必ず命を失うという残酷な真実が明かされます。
パイロットたちは絶望しますが、戦わなければ地球が消滅するという事実に直面し、葛藤しながらも戦いを続けることを決意します。家族思いのダイチや、母親を誇りに思うナカマなど、それぞれが自分なりの覚悟を持って戦いに臨んでいきます。
政府の介入と世間への公表
戦いが続く中、政府がジアースの存在を知ることになります。軍人の父を持つコモの父親の尽力で、パイロットたちは政府の保護下に置かれることになります。
しかし、軍の介入も敵を倒すには無力でした。その後、コモの戦いをきっかけに、ジアースの情報が世間に公表されます。アイドル志望のアンコは、テレビインタビューを通じて世界中にメッセージを発信します。
こうして、パイロットたちの戦いは地球全体が注目する事態となっていきます。
敵の正体と平行世界の衝撃
マキの戦いで、敵の正体が明らかになります。
敵は平行世界の地球人だったのです。ジアースとパイロットたちは、無数にある地球の未来の可能性を摘みとるために戦わされていたことが判明します。
この事実に衝撃を受けたパイロットたちは、自分たちの行動の意味を問い直すことになります。勝っても負けても、どこかの地球が消滅することになるという事実に、彼らは深い葛藤を抱えることになるのです。
ウシロの秘密とカナの決意
ウシロが契約していなかったことが明らかになります。一方、ウシロの妹カナが密かに契約していたことも判明します。カナは、ウシロの実の母親である田中一尉を探し出し、ウシロに真実を告げるよう頼みます。
カナの戦いでは、田中一尉がサポートに入りますが、敵に捕まってしまいます。カナは激昂して敵を倒しますが、同時に命を落としてしまいます。
この出来事をきっかけに、ウシロは初めてジアースと契約を交わすことになるのです。
マチの正体とコエムシの変化
終盤、マチがコエムシの妹であり、別の地球からやってきた存在だったことが明かされます。
マチはウシロへの恋心を告白しますが、直後に何者かに撃たれてしまいます。これまで冷淡な態度を取っていたコエムシも、妹マチの影響を受けて変化していきます。
最後に残されたウシロに、コエムシ自身がパイロットになることを申し出るのです。
ウシロの最後の戦い
ついに最後のパイロットとなったウシロは、アウェイ(他の地球)での戦いに挑みます。戦いの中で、敵のパイロットが逃亡してしまい、ウシロは苦渋の決断を迫られます。
敵のパイロットを見つけ出すために、その地球の人間を一人残らず殺していくという過酷な選択を迫られるのです。ウシロは深い葛藤を抱えながら、最後の戦いに臨んでいきます。
命の重さと選択の意味
『ぼくらの』は、命の重さと選択の意味を深く問いかける物語です。パイロットたちは、自分の命と引き換えに地球を守るという重責を背負います。しかし、敵もまた自分たちと同じ人間であり、同じように地球を守ろうとしていることを知ります。誰かの命を守るために誰かの命を奪わなければならないという残酷な現実に、彼らは苦悩し続けます。それでも、彼らは自分たちにできることを精一杯行動し、命の尊さを体現していくのです。
成長と覚悟の物語
中学生たちが過酷な運命に直面しながら成長していく過程も描いています。
最初は何も知らずに契約したパイロットたちですが、次第に自分たちの置かれた状況を理解し、それぞれの覚悟を持って戦いに臨むようになります。家族や友人、そして地球全体のために命を懸ける彼らの姿は、深い感動を与えます。同時に、大人たちも子供たちの戦いを通じて変化していき、命の尊さや責任の重さを再認識していくのです。
人類の未来への問いかけ
『ぼくらの』は、単なるロボット戦争物語ではありません。
人類の未来や存在意義について深く問いかけています。無数の平行世界が存在する中で、なぜ戦わなければならないのか。どの世界が生き残る価値があるのか。そもそも、誰かの犠牲の上に成り立つ平和に意味はあるのか。
こうした哲学的な問いかけが、全体を通じて投げかけられています。読者は、パイロットたちと共にこれらの問いに向き合うことになるのです。
結末
結末は、読者に深い余韻を残すものとなっています。
最後まで戦い抜いたパイロットたちの運命や、彼らの犠牲が何をもたらしたのかが明かされます。
しかし、その結末は単純な勝利や敗北ではなく、より複雑で深遠な意味を持っています。この結末を通じて、命の尊さや選択の重さ、そして人類の未来について、改めて考えさせられることでしょう。
- ぼくらのの原作とアニメの違いは何ですか?
-
『ぼくらの』は地球を守るために戦う15人の子供たちが活躍し、さまざまな敵も登場します。 そんな『ぼくらの』の原作とアニメの違いを端的に説明すると、15人の子どもたち全員が死ぬのが原作、ひとりだけ生き残るというのがアニメです。
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見どころ
子供たちの葛藤と成長
この作品の最大の見どころは、中学生たちが直面する過酷な運命と、それに立ち向かう姿です。15人の子供たちが、地球を守るために命を懸けて戦うという設定は衝撃的ですが、その中で彼らが見せる葛藤や成長には心を打たれます。例えば、ダイチが家族のために戦う決意を固める場面や、ナカマが母親の生き方を理解していく過程など、一人一人のストーリーが深く描かれています。子供たちの心の動きや成長が丁寧に描かれているので、読んでいて胸が痛くなると同時に、彼らの勇気に心を打たれます。
重厚な世界観と設定
『ぼくらの』の世界観は非常に緻密で重厚です。ジアースという巨大ロボットの存在や、平行世界との戦いという設定は、単なるSF作品を超えた深みを感じさせます。特に、ジアースの操縦に命を使うという設定は、生命の尊さや犠牲の意味を考えさせられます。また、軍事や政治の要素も織り交ぜられており、リアリティのある世界が構築されています。この世界観のおかげで、物語に引き込まれ、現実世界とのつながりを感じることができます。
生と死の哲学
この作品では、生と死について深く考えさせられます。子供たちが次々と命を落としていく展開は辛いものがありますが、それぞれの最期の場面には深い意味が込められています。例えば、チズが自分の過去と向き合いながら死んでいく場面や、カナが母親の真実を知って戦う場面など、死に直面した時の人間の本質が描かれています。また、ウシロの父親が「死について考えることが先進国の人間に与えられた最高の娯楽」と語るシーンは、私たち読者に向けられたメッセージのようで印象的でした。生きることの意味や、死と向き合うことの大切さを考えさせられる、哲学的な深みのある作品だと感じます。
複雑な人間関係と心理描写
登場人物たちの関係性や心理描写も、この作品の大きな魅力です。例えば、ウシロとカナの複雑な兄妹関係や、モジとナギ、ツバサの三角関係など、キャラクター同士の絡みが緻密に描かれています。また、チズの過去や、コモの父親との関係など、一人一人のバックグラウンドが丁寧に描かれているのも印象的です。これらの描写のおかげで、キャラクターたちがより生き生きと感じられ、彼らの行動や決断に深く共感することができます。人間関係の機微や心の動きが繊細に描かれているので、読むたびに新しい発見があります。
衝撃的な展開と伏線回収
『ぼくらの』の物語展開は、予測不可能で衝撃的です。最初は普通の中学生だった子供たちが、突然過酷な運命に直面する展開や、マチの正体が明かされる場面など、驚きの連続です。特に、ウシロが契約していなかったという事実が明かされる場面は、それまでの物語を覆すような衝撃がありました。また、細かい伏線が丁寧に回収されていくのも見どころの一つです。例えば、コエムシの正体や、カナの契約の真相など、読み返すたびに新しい発見があります。このような緻密な構成が、読者を飽きさせることなく物語に引き込んでいきます。
『ぼくらの』は、重たいテーマを扱いながらも、人間の強さや希望を感じさせる作品です。子供たちの葛藤と成長、深い哲学的テーマ、複雑な人間関係、そして予測不可能な展開が絶妙に組み合わさっており、読む価値が十分にある作品だと思います。
感想・考察
命の重さと向き合う物語
まず衝撃を受けたのは、子供たちが次々と死んでいく展開です。でも、それは単なるショッキングな展開を狙ったものではなく、命の重さを読者に突きつけるための手段だったんだと思います。
パイロットになった子供たちは、自分の命と引き換えに地球を守るという重大な責任を背負わされます。その過程で、彼らは自分の人生や家族、そして生きることの意味について深く考えざるを得なくなります。例えば、ダイチが妹や弟たちのために戦うことを決意するシーンは、家族愛と自己犠牲の美しさを感じさせてくれました。
この作品を通じて、私たちも自分の命や、周りの人々の命について考えさせられます。日常生活の中で忘れがちな「生きている」ということの尊さを、改めて感じることができたんです。結局のところ、『ぼくらの』は命の重さと向き合うことの大切さを伝える物語なのかもしれません。
成長と葛藤の物語
子供たちの成長と葛藤を描いた物語でもあります。最初は何も知らずにゲーム感覚で契約してしまった子供たちが、現実を知り、そして受け入れていく過程が印象的でした。
特に印象に残っているのは、チズのエピソードです。彼女は過去のトラウマから復讐心に燃えていましたが、最後には姉の存在によって心を動かされます。この展開は、人間の複雑さや、成長の過程で直面する葛藤を見事に表現していると思いました。
また、ウシロの変化も興味深かったです。最初は契約を避けていた彼が、最終的にパイロットになることを決意する。その過程で、彼は自分自身と向き合い、成長していきます。
このように、『ぼくらの』は子供たちの成長と葛藤を通じて、人間の複雑さや成長の痛みを描いているんです。読者である私たちも、彼らと一緒に成長していくような感覚を味わえるのが、この作品の魅力だと思います。
SF要素と人間ドラマの融合
『ぼくらの』は、一見するとSFロボット物語に見えますが、実際はそれ以上の深みがあります。確かに、巨大ロボット「ジアース」や平行世界との戦いといったSF要素は物語の軸になっています。でも、それ以上に印象的なのは、そこに織り込まれた人間ドラマなんです。
例えば、ナカマのエピソードでは、彼女と母親との関係が丁寧に描かれています。売春婦の母を持つことで差別を受けてきたナカマが、最後に母の強さを理解するシーンは胸を打ちました。
また、カコが恐怖から逃げ出そうとするシーンも印象的です。死の恐怖に直面した人間の弱さが、リアルに描かれていると感じました。
このように、『ぼくらの』はSF要素を巧みに使いながら、人間の内面や関係性を深く掘り下げています。SF好きな人はもちろん、人間ドラマを楽しみたい人にも、ぜひ読んでほしい作品だと思います。SFと人間ドラマの見事な融合が、この作品の大きな魅力なんです。
社会や倫理への問いかけ
『ぼくらの』は、単なるエンターテイメントを超えて、私たちの社会や倫理観に対する鋭い問いかけを含んでいます。特に印象的だったのは、子供たちに重大な責任を負わせる大人たちの存在です。
ココペリやコエムシは、子供たちを戦いに巻き込みますが、それは本当に正しいことなのでしょうか。確かに、地球を守るという大義名分はありますが、子供たちの人生を奪うことの是非は、読者である私たちに突きつけられる重要な問いだと感じました。
また、軍や政府の対応も興味深いポイントです。彼らは子供たちを保護しようとしますが、同時にジアースの力を利用しようともします。この矛盾した態度は、現実社会でも見られる問題を反映しているように思えます。
さらに、平行世界との戦いという設定は、「敵」の定義や戦争の意味について考えさせられます。敵も自分たちと同じ人間であり、同じように地球を守ろうとしている。この事実は、戦争の残酷さと無意味さを浮き彫りにしています。
このように、『ぼくらの』は読者に様々な問いを投げかけてきます。社会の在り方、大人の責任、戦争の意味など、深く考えさせられる要素が満載なんです。単純に「面白い」だけでなく、読後も長く心に残る作品だと感じました。
読者の声
これぞトゥルーエンド
これも鬼頭先生自身が「病んでた」と語る時期に描かれた作品
でもなるたると違って主人公、家族などの関係者、仲間達やサポートする大人たちの心情や背景が丁寧に描かれていて、どこか救いもあります
本当に胸糞だったのは例の先生くらいかな
ハッピーエンドとは程遠いですが一人一人にちゃんとしたトゥルーエンドがあり、一人一人の死を無駄にしてない
なるたるのレビューで「命の軽さ、呆気なさを描いてる」と書いたのですが、こっちはその対になってるというか
「代替がきく」という部分は同じでもなるたるが個を諦めたような結末であるのに対し、ぼくらのは個を諦めてないというか
なるたると同じように雑にまとめて人類が殺されるシーンがあって、馬鹿にしたように命を呆気なく描かれてもぼくらのの登場人物たちは「だからなんだ、俺たち私たちは自分が満足できるようにやるだけだ」という何くそ根性を見せてくれてるようなんですよね
読んだあとなんとも言えない寂しさで胸がいっぱいになります
決して鬱漫画だからじゃなく
これを鬱漫画として敬遠してはもったいない
Amazonより引用
死を意識することで世界が違って見える
少年少女ごとに主人公が変わるスタイルなので
その人物のレビューにします。
なので、全編を通じての縦軸となるネタバレはしてません。
9人目:切江洋介編
大人しくて鈍くさく思われている少年
生きることに確信を持てず、同級生にもいじめられる
こうった、物語の主人公になりにくいキャラクターで
単なる気弱にしか思えない少年が、実は深い悩みを抱え
考えながら行動していっている姿はとてもおもしろかった。
10人目:古茂田孝美編
海軍の高い地位を持つ軍人である父を持つ少女
彼女が、死を意識しそれを受け入れた時
世界が違って見え、愛おしい世界に感じる
このくだりは映画『アメリカン・ビューティ』の
風に舞うビニール袋を思い起こさせるくらい印象的で心に残った。
Amazonより引用
重いテーマを背負いつつ爽やかな読後感。コエムシについて。
↓長いです・・・すみません。。。しかも少しネタばれ気味かもです・・・。
今更ながら、全巻読みました。
この最終巻はウシロのエピソードが主です。
敵のパイロットがとった行動については、彼の姿を見れば想像に難くなく・・・。
他者を排除することの罪深さ。残酷さ。生きるものの責任や意味、生と死を考える象徴的な戦いとして
ウシロ戦は全編を代表するにふさわしく、読みごたえがありました。
けれど、わたしはそのあとの最終話が、実は一番好きです。
この短い一章がなかったとしたら、子供たちを偲びながらも、テーマの重さと喪失感の波に見舞われつつ、読了したことでしょう。
ですが、最後のコエムシのエピソード。これがあったために読者としては、気持ちが大変救われました。
マチの件は自分の責任・・・つらい後悔の果てにコエムシも成長します。彼もまた命のはかなさを最も近いところで体感しました。
「傍にいるうちにもっと喜ぶことをしてあげたかった」という辛くもやさしい、今はもういない人への思いやりの心。
これは、近しい人・大切な人がいなくなって、はじめて身にしみる想いです。コエムシもおそらく感じたに違いありません。
彼は最愛の妹が感じていた罪の意識も自らが引き受けることを選び、
ウシロをはじめとする他者に対して、素直なやさしさを持って努めるようになります。
けれども、彼がそれまでマチ以外の他者に対して、本当に残酷で無関心な性格であったかというと、
決してそうではなかったことが、前巻のウシロと同様に、最終巻にしてささやかに、しかし随所で伝えられています。
過去の自分たちの戦い。「コエムシ」に対する認識の程度。彼の素顔など・・・
思えば前巻でも他者を恨むことはしなかった彼に、理知と潔さを感じたものでした。
どうしようもなく持て余す心を暴力で解消しようとするウシロ。憎まれ口でそれを隠そうとするコエムシ。
ウシロが「ぼくら」を代表する存在なら、コエムシもまた影の主役であったように思います。
彼は、誰もが口をつぐみたい真実を伝えることで、死のバトンを渡す責任を果たします。
それは人として素直に「かっこいい」と思える姿でした。
その時の彼の言葉と表情には、どこかはかなさと無常感が伴い、読者としては切なくなる瞬間もありましたが、
同時に覚悟を決めた潔さにも満ち、同じ言葉を発した登場時とは印象がまったく異なっています。
かつてササミ氏がつぶやいた言葉を受けて「ココペリ」が照れながら発する最後の言葉と、最後の章のタイトル。
それはこの物語の重いテーマをも突き破り、未来に向けて命を継いでゆくことへの希望を感じさせるものでした。
爽快感をもって物語は終了します。
読み終えた後は、全編を通して、コエムシの言葉と行動、表情ともつかない表情を、
もう一度「ぼくらの」仲間として、追ってみたい気になりました。
このような爽やかな結末が、最後にやって来るとはうれしい驚きで、
作者さまには、僭越ではありますが感謝と拍手をさしあげたい気持ちでございます・・・。
余談・・というか、ほとんど蛇足ですが、アニメではコエムシの設定が激しく違うようですね。
動く「ぼくらの」を観たい気持ちはありますが、
わたしにとっては、まったく違う話になっていそうで、なかなか観ることができません。
一ファンからの声としては、再度、原作同様の結末で創作し直してほしいなぁ・・。そうしたらぜひ観てみたいですね。
Amazonより引用
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作者について
鬼頭 莫宏
きとう もひろ
日本の漫画家。男性。愛知県出身。
名古屋工業大学在学中の1987年、『残暑』が小学館新人コミック大賞に入選。同作が「週刊少年サンデー」に掲載され、漫画家デビュー。大学卒業後は、サラリーマンやきくち正太のアシスタントなどを経験。1995年、『ヴァンデミエールの右手』でアフタヌーン四季賞・秋のコンテストで準入選を受賞。同作が「アフタヌーン」にて『ヴァンデミエールの翼』のタイトルで不定期連載化され、連載デビューする。1998年より、「アフタヌーン」で本格連載を開始した『なるたる』で人気を博し、2003年にはテレビアニメ化もされた。2011年、『ぼくらの』で第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。その他の代表作に『終わりと始まりのマイルス』『なにかもちがってますか』『のりりん』などがある。
作者のSNSリンク
「ぼくらの」まとめ
- 連載状況:月刊IKKI(小学館)で2004年1月号から2009年8月号まで連載。
- 作者:鬼頭莫宏(きとう もひろ)
- コミックス情報:全11巻で完結
- 受賞歴:第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。
- 関連情報:2007年にテレビアニメ化。原作では全員が死亡するが、アニメでは1人が生き残るという違いがある。
- 読むには:割引クーポンを使えば、eBookJapanでお得に読める
- 作品の魅力:巨大ロボットを操縦する代償として命を失う子供たちの過酷な戦いを描き、生と死、犠牲と救済といった深いテーマに挑む哲学的SF作品。SFロボットものとしての魅力と、深い人間ドラマが融合している。
- キャラクター:15人の子供たちはそれぞれ個性豊かなバックグラウンドを持ち、死に直面しながらも成長し、葛藤する姿が描かれている。特に、サッカー好きの和久や、トラウマを抱える本田など、キャラクターの内面描写が秀逸。
- テーマ性:物語を通して、生きる意味や命の尊さ、個人と社会の関係を深く問いかける。命を犠牲にして戦うという極端な設定が、現実社会へのメタファーとして機能している。
- ジャンルの新規性:SFロボット漫画でありながら、単なるアクションではなく、哲学的要素や人間ドラマに重きを置いており、青年層や成熟した読者に向いている作品。
- 読者の感想:重いテーマにもかかわらず、読後に爽やかな余韻を残すとの評価が多い。過酷な設定や残酷な描写に対して、命の尊さやキャラクターの成長を感じるという声が強い一方、描写の過激さに対しては賛否もある。
- 今後の展望:既に完結しているため、続編の可能性は低いが、アニメ再制作を望む声もある。