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ブラジリアン柔術・格闘技-1

私は柔術家ではありません。やったこともないし、そもそも格闘技に興味がなかった。

色々あって、柔術の心理的側面に関する本をつくることになり、ブラジリアン柔術について、ちょっぴり詳しくなりました。

 

やったこともないくせに

柔術をやったこともないくせに、心理カウンセリングのおまけとして、ブラジリアン柔術をおすすめすることがあります。

 

相談内容は色々

対人関係のトラブル。
うつ状態。
引きこもり。
お子さんの不登校。

 

すると…

 

こんなことが起きました

・ブラジル的個人主義や明るさ、ゆるさが肌に合うから、道場に通うことにした。

・概念・哲学として柔術に興味を抱いた。

・ヒクソン・グレイシーの著書を愛読している。

・もともと自分が格闘技ファンだったこと若い頃のことを思い出した。

 

縁あって20代の男性柔術家2人に出会い、柔術と心理に関する本を作ることになりました。

彼らと、知識ゼロの私との間には、深い谷間がある。試合を見にいったり、道場を見学したり、技の解説書を読んだり…少しずつ近づいていきました。

企画会議を重ねるたびに新たな指摘を受け、その度に企画書は大きく変化する。

これで行けそうだね、ということで半ば書き上げた原稿も、やっぱりボツにしました。

26歳S氏(写真:左)は、とりあえず「いいと思います」と受け止めたあと、「ちょっと思ったんですけど」と自説を述べる。

29歳T氏(写真:右)は「これもアリだと思いますけど」から始まり、即座に「ご自身が納得してないですよね」などと突いてくる。

T氏の指摘通り、「ま、そこそこ面白そう」レベルで妥協しかけていました。

「もっと伝えたいこと、ありますよね?丸く収めようとしませんか?攻めが甘いですよね?」と追い打ちをかけるT氏。横でS氏も、軽く頷いている。

柔術に詳しくないことを言い訳にして、本気じゃなかったかも。これじゃ、ダメだ。

そして、やっと、これで行こう、という枠組みができました。

彼らの柔術的な誘導に、まんまとのせられた私です。

 

プレッシャーは反応

格闘技に興味のある人なら、「ヒクソン・グレイシー」の名を知っていますよね。

ところが私は、この名を知らず、「グレイシー柔術」という言葉も知りませんでした。

ボキャブラリーがアレですが、すっごい人なんですねぇ。

めちゃくちゃ強い。

ヒクソン・グレイシーは著書の中で、「肉体的な強さを高めるには、精神の強さが必要だ」と何度も語っています。当たり前といってしまえば、それまでなんですけど。

心も体も弱った人に、いきなり格闘技をやってみたら?というのは、あまりに乱暴です。

しかし、ヒクソン哲学ともいえるシンプルな考え方を、柔らかくほぐして、そぉっと伝えたい気持ちが湧き上がります。

たとえば「プレッシャー」について。プレッシャーを苦しいと感じるものですが、ヒクソンは、「プレッシャーとは感じるものではない」と言います。

プレッシャーとは、未知なるものごとへの反応である。

未知なるものごとを、よく知り、味わい、消化せよ。

消化しても「プレッシャー」は消えないけれど、恐怖にはならないだろう。

 

日々、様々なプレッシャーに苦しむ人に、このことを伝えたいなぁ、と思っています。

 

アレとコレ

柔術の本作成が、なかなか進みません。

柔術の世界が、あまりに広く深いから。自分が体験していないから。他の仕事が立て込んでいるから。…などと理由をつけてみたりして。

これは、どうやら、まだ「アレ」が来ないんですね。

「アレ」とは「コレ!」という感覚。考えなくても、どんどん文章があふれ出る感覚。

何か、どこか迷っているのだと思います。

というわけで、この本を作る「きっかけ」に立ち戻ってみます。

以前「メンタル強化3分間こころ筋トレ」という本を出版して、Instagramで紹介したときのこと。

よく考えもせずハッシュタグ「#筋トレ」をつけました。すると、筋トレ男子から「いいね」をもらい驚いた。彼らの投稿を見るうちに、自撮り写真とコメントをまとめた本を、作ろうと思ったわけです。彼らに、そして彼らの周りの人に喜んでもらえるかなぁ、と。

で、Instagramで募集してみたのですが、反応はいまひとつ。「誰か、筋トレ男子の知り合いいない?」と友人知人に声をかけたところ、ある人の紹介で現れたのがS氏です。

 

筋トレより柔術

S氏は、「トライフォース」というブラジリアン柔術アカデミーのインストラクターです。

初対面で「こんなにスリムな印象の人が、格闘技のインストラクターなのね」と驚きました。高校まではサッカーを続けていたそうで、なるほどサッカータイプよね、と思いました。

別の仕事で収入を得ながら、柔術道場に通っていた彼ですが。「やりたいこと、やろう!」と決意したのは、交通事故で重傷を負ったからです。

警察の人に「よく生きてたね」と言われた大事故でした。そのとき彼は「人間、こうやって死ぬんだな」と思ったそうです。あっという間に、突然、死んじゃうんだな。だったら、今やりたいことやらなきゃ。生きてる意味がない。

体の回復を待つ間、もどかしい日々を過ごしたことでしょう。

彼の柔術への思いを聴きながら、もう、これは「筋トレ」後回し、「柔術」いってみよう!と、その場で私も決意したのです。

 

道着さえ着ていれば仲間

S氏の本名は「坂野(さかの)開(かい)」さん。


奇跡的に死を免れた彼は、自分が本当にやりたいことをやって生きよう!と決意し、怪の回復を待って、単身ブラジルへ向かいました。

ブラジリアン柔術の本場です。

S氏は英語、よく分かりません。

ポルトガル語(ブラジル公用語)、まったく分かりません。

えっ?不安はなかったの?

全く問題なかったそうです。

彼は「人間だから、その気になればコミュニケーションとれますから」と軽やかに話してくれました。

言語以上に、体が語り合ってくれるのでしょう。

また柔術界では、道着を着ていれば仲間、というのが常識のようです。

道着は世界共通言語なんですねぇ。

 

ブラジルのスラム街

交通事故をきっかけに「本当にやりたいことをやって生きる」と決意をした開(かい)さんは、ブラジルへと旅立ちます。「本当にやりたいこと」が、ブラジリアン柔術だから。

アパートメントを借りてスタートしたブラジル暮らし。というより、柔術暮らし。ただただ、柔術道場で練習する日々です。

言葉なんて、いらなかった。そのうち友人ができ、彼が自宅に泊めてくれた。ビザが切れるまで、彼の家に居候。

その家はスラム街にあったそうです。開さんは、スラム街の暮らしについて「こんな暮らしがあるんだ、と思いました」と一言触れただけでした。

何となく、聞かない方がいいんだな、と思った私も、この話を追いかけませんでした。

貧困。暴力。薬物。誘拐。強盗。強姦。殺人…。多分、映画でしか見たことのないような暮らし。

それでも彼は、開さんを家に泊めてくれるわけです。仲間だから。

 

心の声に従う

毎日が柔術のブラジル暮らしは、ビザが切れて終了。心を残しながら帰国し、新しい職につきました。が、やはり、何か違う。

今の生活は、人生を無駄にしているような気がする。心の声を、開さんは、しっかり聴き取ったのですね。ある柔術道場に飛び込んで、そのまま住み込んでしまいます。

師匠は「掃除と洗濯だけ頼む」と仰って、すんなり受け入れてくださったそうです。家賃も光熱費もフリーですから、少しアルバイトをすれば暮らしには困らない。

いつでも、何時間でも練習できる。まさに「生きている」感じ。本当に好きなことをして生きるって、最高。

 

つづく

 

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