言霊の力~KOTODAMA POWER~

人生を豊かにするコトダマ鑑定&出版サポート

ブラジリアン柔術・格闘技-3

この「柔術と心理に関する本」企画は、若き柔術家の力によって磨かれていきました。

田村勇磨(たむらゆうま)さん、坂野開(さかのかい)さんは、打ち合わせの度に、新しい何かを与えてくれました。私の案はダメ出しをくらうことも多く、何度も企画書を書き直し、凹みながらも彼らの期待に応えたいと思う日々でした。

 

 

ポイントを言え!

鋭い指摘が持ち味の田村さん。初回の打ち合わせで最も印象に残っているのは、次のセリフです。

 

中澤さんは、僕らと柔術を、どう使おうとしていますか?

ネットで調べられるような情報を、得ようとしているわけじゃないですよね?

これが知りたい、というポイントを明確にしてもらえると、僕らの提供できるものが大きくなると思うんですよね。

 

あはは。おっしゃる通りです。今日は、とりあえずブレストってことで、雑談しながら頭の整理をさせてください…とかなんとか、お答えしたような記憶があります。

この日にできた企画案は

 

我が子の不登校、いじめ被害、学習意欲喪失などに悩む保護者向けに、ひとつの希望として柔術を紹介する本

 

というものですが、次の打ち合わせで、あっさりボツになります。その後いくつもの企画がボツになり、私は迷路に入り込んでいくのでした。

 

いじめと柔術

田村さんと坂野さんから、柔術への熱い想いを聴きながら、私の中に潜んでいた、あるテーマが浮かび上がってきました。

「いじめ」です。

正確には「いじめてしまう心」について。

 

参考までに

社会学者の内藤朝雄氏「いじめの構造~なぜ人が怪物になるのか〜」の中で「群れ」という概念を詳細に語っています。

集団の中で苦しみを感じている人には、ぜひ読んでいただきたい本です。

いじめの構造―なぜ人が怪物になるのか (講談社現代新書 1984) | 内藤 朝雄 |本 | 通販 | Amazon

 

安易に手を出してはならないテーマだと、わかっているのです。まだまだ力不足、経験不足、勉強不足だという自覚はある。

いや、もしかしたら、私なりに「いじめをやめられない人の気持ち」について、何らかのヒントを提供できるのではないか。

いじめられる側と、いじめる側の双方に、小さな希望を差し出せるのではないか。

いやいや、無理無理…と何年もグルグルしてきたことです。

あ、ちょっと待って!柔術を土台に置いたら、もしかして書ける?

そんな気持ちで、企画書を作り企画会議に持ち込んだのですが、田村さんも、坂野さんも、無言で首をかしげます。

暗い。

ピンとこない。

これを読んで柔術をやってみようと思うかな?

と、彼らの目が語っています。

そりゃそうだよね。勢いとか、ノリでつくった企画は、やっぱりダメなんです。プレゼン直後に、ボツと決めました。

 

脳内トレーニングと柔術

強い柔術家の多くは、長時間トレーニングし、それ以外の多くの時間を脳内トレーニングに費やすらしいのです。

以下、T(田村さん)、S(坂野さん)、N(私)の会話。

N:脳内で戦えるのですか?

T:戦うというより、情報ですね、迷路のゴールに至る経路を、何通りも考える。その情報をここ(眉間)にもってきて、自分の体を動かすためのイメージを作ります。

これ、難しいと思うんですけど(と私に)。

分かる人には、すごい分かるよね(と坂野さんに)?

S:うんうんうん。

T:めっちゃ、分かるでしょ?

S:分かる分かる、めっちゃ分かる。

N:分からない。

S:どう説明したら、中澤さんにも分かるかな?

N:もしかして、囲碁とか将棋に似てます?

S:ま、そうですね。戦略が大事なんですよ。ゴールまでの道筋を考えることが。

N:うーん。

T:YouTubeとかで、柔術の動画ご覧になりました?

N:見ました、見ました。かなり見ました。

T:人間と人間の動きを見ましたよね?

N:はい。

T:あ、こういうやりかたで、タップしたんだな、とか。この技は、こういう仕組みで入るんだな、とか。ゴールを考えるのが、むっちゃくちゃ楽しくて。

練習も試合も、それを試せる場なので。

N:うーん。

身体を動かさずに、脳内で身体の動きをシュミレーションする。ここまでは、分かります。

でも、それが、むっちゃくちゃ楽しい…とは、やっぱり分からないままです。柔術は、実際の動きが地味だというのに、これを脳内で楽しむのかぁ…。

働け!私の想像力!!

オタクと柔術

柔術家たちは肉体を酷使するだけでなく、脳内でも常にトレーニングしているらしい。

柔術が、好きで好きでたまらない。そのありさまは、まさに「オタク」なのです。

 

オタクとは

「オタク」または「ヲタク」「愛好家」。

熱烈なアニメファンがコミックマーケットなどで、互いに相手のことを「お宅」と呼んだのが元になり、一般に広がった言葉。

 

かつては、オシャレでない人を、軽んじるようなニュアンスがありましたが、今となっては、アニメもオタクも、格が上がりましたね。

他人がどう思うかはさておき、オタクは楽しいものです。好きなことを好きなだけやって、同じものを好きな人と、好きなことについて語り合う。

柔術は、かなり「オタク」的だと思われます。

その先頭をゆく、ある理学療法士のブログを見れば「あ~、たしかに〜」と感じていただけることでしょう。

jiu-jitsu-brasileiro-physical-therapist.com

↑↑↑このブログを見ながら、田村さんは、こう言います。

記事が、すっごくいい。

自分も理系なんで、矢印で考えるんですよ。

力の方向とか、バランス、体重、両手の位置。

自分も同じことを、脳内でやっています。

一方の坂野さんは

おれ、見れない(笑)。

難しすぎる。

これほどタイプの違う二人が、何時間も「オタク」的に柔術を語り合うのですから、ほんっとに楽しいんでしょうね。

部外者には、サッパリ分からない部分が、最も面白いところなのかもしれません。

 

男心と柔術

柔術界のヒーロー、米倉大貴(よねくらだいき)さんをご存知でしょうか?

 

米倉大貴

1996年生まれ、26歳。
高校までラグビーを続けていた。
18歳から柔術を始め、全日本柔術黒帯王者。
世界選手権、アジア大会などでも好成績。

 

たとえば、18歳からサッカーを始めた人が、日本代表になれますか?って、それは無理な話。

ところが柔術は、大人になってから始めた人にも、王者になるチャンスがあるのです。

運動能力だけでは勝てない競技だからです。精神的な成熟を必要とするからです。

やる気になれば、誰にでも、勝利の可能性がある。

そこが、男心をそそる。

という話で、田村さんと坂野さんが盛り上がっていました。

 

難産後のブルーな気分

グルグル迷ってしまい、この本は難産でした。

産後ブルーなのかどうか…その後どうも気分がスッキリしません。

先日、大好きな先輩から「あなたも、柔術を始めたの?」と聞かれたのですが。

…即答できなかった。

「この本をきっかけに、柔術を始める人が増えたら嬉しいです」っていう本なのに。書いた私が、やってないじゃん。と、一人でモヤモヤしている。

そうだよねぇ。

そうなんだけどねぇ。

心から好きなことなら、もうとっくに始めている。気が乗らないことは、やっぱり、やらない方がいい。良いことと、好きなことは、違うのだから。

ま、とにかく、我が子を世の中に送り出したので、しばらくのんびりしよっと。

 

aipub1.com

aipub1.com