晩景(ばんげ) 水上不二
うつくしい晩景、
青う湧(わ)きな、お星や。
芹(せり)の花ゆする、
下(しも)ん田の鰌(どじよ)つ子。
髪毛(かんげ)まで、泥(どろ)が、
はねかつたな、母さや。
よう乾(ほ)した木叢(ぼくさ)で、
鰮(いわし)でも焼(や)くべよ。
うつくしい晩景、
青う湧(わ)きな、お星や。
いま植(う)えた苗(なえ)に、
田の風が吹いてる。
【感想】
「ばんげ」に「晩景」という字を充てている。「デジタル大辞泉」では、「ばんけい」と読んでいる。とすると、「ばんげ」は「夕方の景色」「夕景」という意味になる。「仙台弁」(名取市近辺)という説明もある。
ともかく、ここでは「夕景」が自然だろう。日が落ちるまで、田植えをしている夫婦の様子が見える。苗を持つ手を泥の中に入れると「ドジョウがはねて」その跳ね上がる泥が奥さんの髪や顔にかかる。
そろそろしまいにして夕飯にしようか。干し草で、イワシでも焼こうか。と声をかける。薄暗くなった空には、星の瞬きが増えてきた。心地良い風がつかれた体をなでている。という情景だろうか。
「セリ」や「ドジョウ」は水が綺麗でなければ生育しない。美しい自然の中の農作業だ。「ドジョウ」が害虫を駆除しているのかも知れない。人が、自然の力を借りて恵(作物)を育てているように感じる。
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