65歳から初めるクラシックコンサート

65歳から初めるクラシックコンサート

クラシックコンサート初体験の65歳がレポートします❗️

生オケ・シネマ チャップリン『モダン・タイムス』その3

2025-02-16 17:01:53 | 映画

チャップリン、およびチャップリンファンにとって、この『モダン・タイムス』は特別な作品です。作品が作られた1936年。すでにテクノロジーは残酷なまでに発達し、映画はセリフ入りのトーキー、となっていました。

チャップリン自身は、トーキーが大嫌いだったようです。

『放浪者チャーリーが喋ると、映画の魔法が消えてしまう』

『英語を喋らない、世界中の子どもたちが、僕のサイレント映画を観てくれるはずだ‼️』

それでも時代の波は抗いようもありません。

サイレント喜劇のチャーリー・チャップリンはこれで最期なのだ、と覚悟していたようです。

そして、古き良きサイレント喜劇の名場面を、懐かしむように、作品の中にはめ込んでいきました。

スケートシーンもその一つですね。

この他にも、エスカレーターのシーン、などがあります。

そしてなにより、映画の終盤。

ついにチャップリンが劇中で歌を披露しました。それがなんと、全くのデタラメ語。無国籍語だったことは有名です。

やがてラストの一本道。挫けそうになるヒロインに、

さあ、元気をだしていこう! 笑顔をつくってごらん!と、勇気づける放浪紳士チャーリー。

(チャップリン作曲の『Smail』です)

チャップリンファンにとっては胸が一杯になる、ラストシーンですね。

フルオーケストラが演奏する『Smaile』の余韻がいつまでもコンサート会場に残っているかのようでした。

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生オケ・シネマ チャップリン『モダン・タイムス』その2

2025-02-08 17:09:20 | 映画

上映の前、まずは指揮者、竹本泰蔵さんから、映画『モダン・タイムス』についての簡単な紹介がありました。


本作がチャップリン最後のサイレント映画であること。
映画の終盤、チャップリンが歌うシーンがあり、世界で初めてチャップリンの肉声がここで披露されたこと。
編曲者が、チャップリンの原曲から、オーケストラ用のスコアを編み出したこと。
オリジナルの作曲者は、チャップリン本人であること、など。

そのあと、オーケストラの皆さんが現れ、観客から大きな拍手が……。
やがて、大ホールの照明が落とされ、映画が始まりました。
***
主人公チャーリーは、大企業の工場で働く、作業員の一人。
ベルトコンベアーで流れてくるのは、金属の板。
そこには、ふたつのボルトが付いています。
チャーリーの仕事は、この2つのボルトを締めること。
両手にスパナを持ったチャーリーは、一日中、この機械的な作業を繰り返します。

『いったいこの部品は何に使われるだろうか?』
そんな悠長なこと、考えるスキもありません。
ベルトコンベアーは、次から次へと、この部品を送り出してきます。
チャーリーは、ただ、一生懸命ボルトを締める。仕事はホントにそれだけ。
激しい流れ作業は、社長の指示で、更にスピードアップ。
耐えきれなくなったチャーリーは、ついに精神に異常をきたすのです……。
と、こう書くと、いかにも悲劇なんですよね。このお話って。
しかし、チャップリンは『喜劇の王様』。
『悲劇の中にこそ、笑いがある』
そのセオリーを熟知しているのです。
**以下余談
『幸せの黄色いハンカチ』は、高倉健さんと武田鉄矢さんが共演した名作ですね。

一緒にクルマで北海道を旅する、ロードムービーの形式を取ります。
その途中、武田鉄矢さん演じる欽也が、カニを食べすぎて、お腹を壊してしまいます。
近くには民家もなければ、ガソリンスタンドもありません。
たまらず、車を止めて、木陰に駆け込む欽ちゃん。
武田さんは、おしりに手を当て、内股で、木陰に駆け込む演技をします。
このシーンで山田洋次監督は武田さんを叱りつけたのです。
『ナニを笑わせようとしているんだ! いいか! 君にとってこれは、深刻な悲劇なんだ‼️』
もう、僕の解説入りませんよね。そうです。極めて厳しい、極限の悲劇的状況だからこそ、そこに笑いの要素がある。名監督、山田洋次はそのことを熟知していたのです(余談終了)
***
さて、オーケストラに着目すると、
モダン・タイムスの、工場シーンでは、打楽器が大活躍。
特にリズミカルなシーンは、マリンバが、ほとんど出ずっぱり。
いかにも、ドタバタ喜劇の安っぽい伴奏のように思うでしょう?
ところが、
今回の『生オケシネマ』の大きな特徴。
それはチャップリンの音楽ってこんなにも豊かなんだ、という再発見でした。
フルオーケストラの贅沢な演奏は、幾重にも重なった音楽の響き。
それは立体的な奥行きのある、味わい深い、上質な音楽なのでした。
(続く)

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生オケ・シネマ チャップリン『モダン・タイムス』

2025-02-04 13:20:56 | 映画
(チャップリン作曲の『Smail』です)

2月1日、僕はチャップリンの映画『モダン・タイムス』を観てきました。
しかも、なんと、生オーケストラの伴奏付き。
とっても贅沢な、上映会となりました。


場所は、兵庫県立芸術文化センター(兵庫県西宮市)大ホール(リンクあります)です。阪急電車西宮北口の南改札口をでます。
こんな時計台がありました。


そこから遊歩道を歩いて5分。段差無しで芸術文化センターに到着。

中に入ると、そこが大ホールの1階となっています。

(上の写真、建物の中。右側に大ホール入口があります)

今回僕は、2階の桟敷席とでも言いましょうか、そこに座りました。


(劇場の中は圧巻。客席は開演前には9割がた埋まっていました)

今回演奏するオーケストラは、この芸術文化センターの専属オーケストラ、
『兵庫芸術文化センター管弦楽団』
指揮は竹本泰蔵さん。
僕は案内のチラシを見てびっくりしました。
今回のコンサートマスターは、わざわざ、新日本フィルハーモニー交響楽団のコンサートマスター、西江辰郎さんを招いての演奏。
えっ、マジか?😯
口の悪い人ならば、『たかが、映画の伴奏だろ?』
と、けなされそうですが……。
これはそんな安直な上映会ではなさそうだ、と思いました。
***
僕は、チャップリン映画は大好きで、何回か、劇場の大スクリーンで鑑賞したことがあります。ご承知の通り、チャップリン映画の多くは『サイレント、無声映画』です。
映画とオーケストラのコラボ、と、簡単に言ってしまいそうですが、まてよ……
これって、各シーンの音楽を入れるタイミングって、どうするんだろう?
ましてや、チャップリン映画は、その音楽で、複数の人物の会話、抑揚を表現することすらあるのです。
スクリーン上の人物の動きや会話の様子。
それと、音楽が、ピッタリと合わないと、これはもう、大変なことになります。
映画そのものを台無しにしかねないのです。
それをわざわざ、『フルオーケストラ』『生演奏』でやろう‼️、というのです。
ステージ上には、指揮台のすぐ前に、指揮者専用のモニターがありました。

どうやら、これをチェックしながら、タイミングを取るようです。
ちなみに、こんなリンクを見つけました。

新日本フィルのチャップリン生オケシネマ紹介
このホームページを見ると、すでに、新日本フィルではチャップリン映画とオーケストラのコラボを、何回か経験しているのですね。それで、新日本フィルのコンサートマスターにゲストで来てもらったようです。さあ、拍手の中、指揮者とオーケストラが舞台へ。いよいよ上映始まります。(次回へ続く)

***

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ぼくとクラシック音楽の関わりについて

2025-01-31 14:21:11 | 日記
 
ぼくはいままで、けっしてクラシック音楽と疎遠ではありませんでした。
むしろ、日々の暮らしの中に溶け込ませるように、その音楽と付き合ってきました。

部屋の掃除をしながらモーツアルトの室内楽をYouTubeで流していたり。
小澤征爾さんのことは大好きで、ドキュメンタリーなども繰り返し見ていました。


そして新年といえば『ウィーンフィル・ニューイヤーコンサート』
これも、毎年、楽しみにテレビ中継を見ていました。
ちょうど昨年末、テレビでN響コンサートのお知らせが。
曲目には
『喜歌劇こうもり序曲』の文字が。
えっ?!
こうもり序曲やるの?!
しかも、N響が‼️ これは行きたい、聴きたい‼️


おまけに場所は西宮。時間は午後4時開演。
僕が住んでいるのは神戸の西区です。
はっきり行ってど田舎。神戸は港町のはずですが、ここからは海すら見えません。山の中。😢😢
とうぜん駅もありません。
近くのバス停まで歩いて10分
夜の8時にもなると、バスは1時間に1本。
こういう『KOBE』もあるのですよ皆さん。
フオッ、フオッ、フオッ😂😂
つまり、夜のコンサートに行こうとすると、もう、ホテルを確保する必要があるのです。
『そこまでして、コンサートに行こうとは思わないよなぁ〜』
そういうわけで今まで、65年間生きてきました。
ところが今回だけは、
『これなら行ける‼️』となったわけです。
開演が午後4時なら、終演はおそらく午後6時頃。
これなら帰りのバスだってあるでしょう。
このようにして僕は生まれて初めてのN響コンサートに向かったという訳なのです。
*****

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N響コンサートに行ってきた。その3

2025-01-28 12:25:10 | オーケストラ
今回のN響コンサート。
プログラム最後の曲は

『ウィーンかたぎ』ヨハン・シュトラウス2世作曲です。
ウィーン育ちの指揮者サッシャ・ゲッツェルさん。
そして、新年にふさわしいウィンナワルツの数々。


華やかな舞台を締めくくるに、ふさわしい曲です。
よく言われることですが、ウィーンのワルツには、独特のリズムがあります。
単なる3拍子のリズムとは若干の違いがあります。
ワルツのリズムは3拍子。
『いち・にぃ・さん』ですよね。
ところが、本場のウィンナ・ワルツでは、1拍目を気持ち短く。そこへ2拍目がツッコミ気味で入り、しかも、3拍目に寄りかかるように若干長く演奏されます。
口で言うと、
『いち・にいっ(ここで0,1秒ほどの間があります)つ・さん』
のようなニュアンスでしょうか。
この絶妙な『間』は、晩年の小澤征爾さんですら、
『これってさぁ、やっぱりウィーン育ちのやつじゃないと、わかんねぇんだよね』
とおっしゃってました。
そのウィーンの雰囲気をゲッツェルさんはN響を通して、観客へ伝えようとしているのが痛いほど伝わってきました。
***
さあ、正式のプログラムが終了。鳴り止まない拍手にアンコール曲は……
『美しく青きドナウ』

これ、素人の私達には、結構、聞き馴染みのある曲。
でも、プロの演奏家にとって、実は演奏がとっても難しい曲なのだそうです。
確かに言われてみると、冒頭のストリングスは、小さな音でのトレモロ。
そこへ、おだやかな水面に、指先をほんのちょっとさわるかのように、管楽器が入ってきます。
それをどのタイミングで入るのか?
ここで問題になるのが、
『クラシックは一拍が長ぁ〜い』ということ。
その長い一拍のどの部分で音を出すのか?
演奏者にとっては緊張する『間』なのでしょうね。
さて、アンコール二曲目。
この流れで来れば、最後の曲はもちろん、
『ラデツキー行進曲』です。

この曲は聴衆もオーケストラと一緒に拍手で『演奏に参加』します。
指揮者ゲッツェルさんは、その拍手の強弱や、拍手をしない部分を、僕たち聴衆にわかりやすく『指揮』してくれました。
このアンコール演奏は、まさに、ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートの再現そのもの。
日本の兵庫県、西宮市でウィンナ・ワルツが演奏されている。
そして、それを楽しみに聴きに来られるお客様がいる。
演奏会の余韻とともに、僕はもう、胸が一杯になりました。
感動などという、曖昧で、浮ついた言葉では言い表せない。
そして音楽という芸術は、演奏が終われば、もう、影も形もなくなり、消え去ってしまいます。
こんなにも儚く、それでいてあまりにも豊かな時間。
この体験を、何かに書き留めておきたい、素直にそう思いました。
そんな訳で、僕はこのブログを始めたのでした。

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