郎女迷々日録 幕末東西

薩摩、長州、幕府、新撰組などなど。仏英を主に幕末の欧州にも話は及びます。たまには観劇、映画、読書、旅行の感想も。

宝塚キキ沼に落ちて vol13

2020年12月14日 | 宝塚

宝塚キキ沼に落ちて vol12 - 郎女迷々日録 幕末東西

上の続きです。

 去年(2019年)のタカラヅカスペシャルが、専門チャンネルで放送されたみたいです。
 私は、今年のはじめにキキちゃんにはまってから、検索をかけていましたら、「キキちゃん スカーレット」といいますワードが、けっこう上に出てくるのに気づきました。
 さっそく見てみましたら、タカスペの宙組コーナーで、えー、簡単に言ってしまえば、キキちゃんがスカーレット・オハラの扮装で「ソーラン宙組」を歌って踊って、全部もっていった!!! ということでして、どーしても、どーしても、どーしても見たくなり、私は円盤を買いました。

 いや、もう、すばらしくデコルテがきれいだし、真風バトラーと芝居をしている間は、見事に女声で、スカーレット・オハラなキキちゃん。
 「風と共に去りぬ」のいわゆる階段落ちの場面です。スカーレットはバトラー船長と言い争って階段から落ち、暗転。バトラー船長が一人で「愛のフェニックス」を熱唱し終わったところで、階段の上に元気なキキちゃんスカーレットが姿を現し、ドスのきいた男の声で「あー、どっこいしょ、どっこいしょ」。ソーラン節の前奏に乗って、クリノリンの輪っかドレスにはっぴを羽織って、肩をいからせ、勇ましい表情で下りてきます。
 真風バトラーの「スカー、レッ、ト???」というつぶやきの中、センターでソーラン節を歌い出すスカーレットを、やがてはっぴを着終えた真風バトラーが押しのけ、はじき出されたキキ・スカーレットは、2番手の位置にいる小公子・和希そらを押しのけ、輪っかドレスで踊りぬくんです。

 実際、ほかのすべての場面がかすんでしまうほど面白く、私は円盤を買った当初、何十回も、この場面だけ見返していました。
 しかし、少し落ち着いてみますと、望海さんと真彩ちゃんのお歌はすばらしいの一言で、星組さんは「桜華に舞え」の主題歌を歌ってくれてますし、見所は他にもたくさん、ありました。

 それはそうと、ですね。今回この話を出してきましたのは、この宙組コーナー、演出がウエクミ先生、だったんですが、他の組コーナーとは、雰囲気もちがえば、組み合わせもちがいました。
 雪組は、男役二番手さん以下多数、次いでトップ同士・望海さんと真彩さんがからんで、最後は全員。
 花組さんは、最初に二番手の瀬戸さん以下男役3人、次いでトップ同士・柚香さんと華ちゃん、柚香さんとマイティ、そして全員。
 星組はちょっと変則的で、まず二番手愛ちゃんとトップ娘役の瞳ちゃんがデュエット、男役娘役数人が歌って、トップの礼真琴さん独唱、しめは全員、です。

 で、宙組なんですが、まずは「ベルばら」の小公子・小公女を男役娘役3人ずつ、次いで3番手のずんちゃん(桜木みなと)とトップ娘役のまどかちゃんが「王家に捧ぐ歌」より「月の満ちるころ」。そして、キキ&真風の「風と共に去りぬ」です。

 えーと、なにが言いたいかと言いますと、ですね、トップ娘役がトップとも二番手とも組まないで三番手と組み、トップと二番手、男役同士が組んだのは、宙組だけだったんです。
 キキちゃんと真風さんは、もちろんお似合いでした。もしかすると、ほんとに風共ができるかもしれないくらいに、です。
 それは意外でもなんでもなかったんですが、私が驚いたのは、ずんちゃんとまどかちゃんが、びっくりするするほどお似合いだったことです。
 「王家に捧ぐ歌」の新人公演主演コンビだったそうですし、驚くようなことではないのかもしれないのですが、声の質もよく合って、すばらしいデュエットでしたし、「まどかちゃん、真風さんと組むより似合ってない?」と、つい思ってしまったんですね。

 前回お話ししました「神々の土地」は、朝夏まなとさんの退団公演でしたし、真風さんとまどかちゃんは次期トップコンビと決まっていたのですが、役柄としては、まったく交わりようもない役でした。
 真風さんは、ニヒルで、大人で、しかしけっして醒めきってしまっているわけではなく、熱いものをうちに抱いている感じが、素敵でした。
 まどかちゃんは、前回も書きましたが、一見無邪気で、しかし無意識のうちに激しく嫉妬心を燃やし、無鉄砲に突っ走って愛する男を窮地に陥れるという、子供ゆえの怖さを持った少女を、的確に演じていました。

 その「神々の土地」があった上での、「フライングサパ」です。

 "FLYING SAPA" at Umeda Arts Theater – Main Hall in JAPAN <For J-LODlive>

 宝塚では珍しいSFだというので、楽しみにしていたのですが、チケットは手に入らないないだろうし、とあきらめていました。
 ところが、舞台よりも現実の方がSFじみてきまして、思いもかけないコロナ蔓延。コンサートも観劇もスポーツ観戦も、すべてが中止にいたるという悪夢が続き、ようやく8月になって、梅田芸術劇場で上演となりました。
 花組さんも星組さんも、感染が出てなかなか再開できませんでした中、小公演だったことなどもあったんでしょうか、「フライングサパ」は無事開幕。初日、流れてきたツイッターで、キキちゃんと真風さんが、ぼろぼろ泣いていた情景が忘れられません。

 で、地方在住者にとって、これはむしろありがたことなのですが、楽天テレビでの千秋楽ライブ配信があって、見ることができました!
 なにしろコロナ禍の異常な状況でしたので、最初は、華やかなフィナーレやパレードがなく、歌もほとんどないことが、さみしいような気がしました。
 歌は、松風輝さんが歌う子守歌と、キキちゃんが口ずさむ歌と、どちらもつぶやくような歌が流れるだけですし、踊りもまた、アンニュイな雰囲気のもので、宝塚らしく、パッと思いを発散できる感じからは遠かったんです。
 しかし慣れてくれば、スタイリッシュな雰囲気を楽しむのもいいか、とも思い直したんですが、おそらく、生で見ていればもっと、雰囲気にひたりやすかったかと思います。

 SFとしてどうか、と言えば、そうですねえ。現実の方がシュールです。
 独裁的な管理社会って、ソ連が長らくそうでしたし、中国はいま、それが極端にIT化され、ネットで監視の目が張り巡らされ、電子マネーが普及していますから、反体制分子は下手をすると買い物もできなくなってきた、ともいわれます。しかしもちろん、一方で物々交換の世界も残っていたりします。物語のように、アウトサイダーだって生存はできるわけです。
 そんな恐ろしい監視社会で、当初、コロナ感染を隠蔽しようとして、結局は、世界中に散らばってしまっちゃったあげくに、人間のコミニュケーションが普通にできず、楽しみはすべて御法度、というような、異常な社会が出現したわけですよねえ。なんてシュールなんでしょ!!!

 だから、まあ、別に、なんの違和感もなく、「フライングサパ」の世界には、すっと入っていけました。
 宝塚の定番ならば過去のファンタジーなのが、未来を想定したファンタジーになっただけでして、人間関係はいつものウエクミ節。しっかり描けてます。
 ニヒルで大人な真風さんは素敵でしたし、まどかちゃんは体当たりの演技。私は、この作品ではじめて、二人はお似合いだな、と感じました。
 キキちゃんは、精神安定剤のようなお役で、素敵は素敵なんですが、うん、ウエクミ先生、キキちゃん主役だと、どんな感じに描いてくれるんだろうなあ、と、つい、考えてしまいました。

 この「フライングサパ」は、未来の水星を舞台にしていますけれども、萩尾望都のSF作品で、火星を舞台にしたものがあります。
 
 

 この「スター・レッド」、「ポーの一族」と同じくらい好きでした。
 火星を愛してやまない火星生まれの少女、レッド星(セイ)。
 数千年の孤独を生きた異星人・エルグは、レッド星に出会い、最後の最後に、「狂うことにする」と、自分の精神を封じ込めていたいましめをときます。
「存在していれば、なにかが見つかるかもしれないと思った。そしてきみに出会った。一つの星、一つの運命に、恋している少女。きみを独りじめし、数千年の孤独をすべてうめたかった。……星、心からきみを大切に思う」

 惑星の盛衰がからむ遠大な物語で、エルグと星のはるか時空を越えた愛は、忘れがたく胸にしみます。
 私の夢は、このエルグをキキちゃんに演じてもらえたらなあ、ということです。
 しかし、レッド星をやれるようなトップ娘役さんなんて、いますかね? うーん。ぴったりなのはSU-METALですけれども(笑)


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