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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

映画「トム・アット・ザ・ファーム」(監督:グザヴィエ・ドラン/2013年)

2014-11-30 | Weblog

■製作年:2013年
■監督:グザビエ・ドラン
■出演:グザビエ・ドラン、ピエール=イブ・カルディナル、リズ・ロワ、他


映画界の超新星ともいえる存在が、カナダのグザヴィエ・ドラン。この映画を作った年齢が若干25歳、ベネチア国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞しています。彼はこの映画では監督のみならず主演までを勤めています、グザヴィエ・ドランは、今世界から最も注目される若き映画人の一人なのです。おまけにこのドラン青年、才能のみならず超美形、それも並の美形ではありません、超をつけてもいいほどの美男子なのです。しかし彼はゲイであり、残念ながら女性のハートをわし掴みするというアイドル的な存在ではありません。そこがまた、おもしろいのであって、彼の作る映画に深みを与えている要素といえましょう。

この「トム・アット・ザ・ファーム」はドラン監督のオリジナル脚本ではなく戯曲を元にしているので、「私はロランス」とは雰囲気が違うテイストになっています。が、やはりそこには同性愛のテーマが盛り込まれており、彼ならではの深みというかリアルさを醸し出していると感じるのでした。映画は、車がひたすら田園地帯を走っている映像を俯瞰で捉え農場に到着するところから始まります。車から降りたのが超イケメン、ドラン監督が自ら演じたタイトルにもなっているトムという青年です。彼は不慮の事故で亡くなった恋人の家を訪問するために、この片田舎の牧場に来たのです。しかし、家には誰も居らず、この辺りからなにやら不遜な空気が流れているような雰囲気が漂いはじめます。

待ちくたびれたトムが、すかり無人の家で眠ってしまうと死んだ恋人の母親が帰ってきます。彼女は息子の死に悲嘆にくれていますが、トムが死んだ息子の恋人であったとは知りません。友人と思っています。しかし、トムはゲイであり、死んだ息子こそが最愛の恋人だったのです。そこに暴力的な兄が加わってきて、力づくでそうした息子=弟の秘密を隠させようとします。登場人物を見ていると母親は息子が死んだとはいえ、かなりクセのある女性のようだし、兄も強引かつ暴力により相手をねじ伏せ自分の考えを通そうとする、これまた、かなり危険で片寄った人物のようです。映画は基本的に不在の死んだ恋人を巡り三者のギクシャクし、揺らいでいるた関係が描がいるのですが、タッチはサスペンス風であり、どうなっていくのかが見えない状況となっていきます。

本来なら、暴力で家から出させないようにする理不尽な兄に対して、彼の意に従い家に居続けるトムはおかしいんじゃないかと思うのですが、それはストックホルム症候群という状態 ( 誘拐、監禁事件で被害者が犯人と長い時間を過ごすことにより、犯人に対して連帯感や好意的な感情を抱く現象)らしく矛盾した行動を見せます。このおかしな行動には、それ以外にもトムの中で暴力的で受け入れ難い兄に好きだった恋人の面影を見て去りがたいことともに、彼ら兄弟関係の中にも同性愛的な要素があったのではと伺わせる部分もあり、その匂いがトムを本能的に立ち止まらせているのかもしれないと思ったりします。さらには、母親を安心させるために恋人の同僚であった女性まで招き入れて死んだ息子の恋人にしたたてしまう始末。トムはどんどん深みにはまってしまううのか?「私はロランス」のようなインパクトはありませんでしたが、ドラン監督の瑞々しい感性とサスペンス・タッチは冴え、秀作の小品でした。

 

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