七草粥と恵方巻

一月九日に、とあるPTA関係の会合にて講演をさせていただきました。愚生の如き市井の片隅で世間の動向を斜眼視し、小言と皮肉しか言わないガクシャ崩れによくもまあそんな依頼が来たものだ・・・と思いつつも、実は意外とそこここで頼まれており、それなりにご好評を頂戴しているようです。落語だろうと講演だろうと与太話だろうと、導入部分というのは大切なものですので、この時は、七草粥を話題にいたしました。「せり なずな ごぎょう はこべら ほとけのざ すずな すずしろ はるのななくさ・・・昔の人は良い覚え方をされたものです。五七五七七となっており・・・」といったいわゆる「枕」を置いたのち、本題に入っていったのですが、さて、講演後、質疑応答となったところ、「最初に仰った『なんとか粥』ってどういうものですか?」という質問が飛び出しました。

この時点で、こんな駄文をすき好んでお読みになっておられる方であれば、その質問をされた方に対して「バカ!」で片づけたい気分でありましょう。愚生も全くそんな気持ちでありましたが、そこは、一応、「講師の大先生様」としての矜持と品格を失う訳にはいかないので、いやらしく、その方を貶めてやろうと考え、「では、七草粥をご存じない方、どのくらいおられます?」と問うてみました。きっと、他にいても一人か二人であろうという愚生の想像は間違っており、約60人の聴衆の中で、多分、20人弱の挙手がありました。概ね30代〜40代の女性、そして「お母さん」の3割が七草粥をご存じない・・・なるほど、これが時代の流れなのかはたまた文化の盛衰なのか・・・いや、愚生の勝手な思い込みであろうか・・・と当惑いたしました。

気持ちを建て直し、「では、おととい、七草粥を食した方はどのくらいおられますか?」と問うたところ、挙手されたのは10人に満たず・・・そこで思い立って、「では、昨年の節分に恵方巻というものを食した方は?」と問うたところ、今度は、7割程度の挙手がありました。思わず、そこから、今度はその恵方巻きなるモノに対するウンチク*1 *2をまくしたてて、司会進行の方に、「その辺は、また今度、ご講演をお願い致しますので*3とさえぎられる始末でしたが、終了後、「女性の品格」を具えたことがありありとわかる方が愚生のところにやってきて「PTAって、こんな程度ですから・・・でも、この国の未来に不安を感じてしまいますよね。」と囁かれたのは、まあ、暗闇に一筋の光明とでも申しましょうか・・・といったところです。

七草粥そのものが「国民的行事」である必要性は感じておりません。その文化背景によってはご存じない方が多々おられても決してそれを責めるつもりもありません。ただ、平安時代からの風習であろうと思われること、そして、医食同源或いは食育という見地から実に理に叶ったものであることを考えますと、七草粥恵方巻(とやら)が同じ土俵に立つことに嫌悪感を覚えてしまうのがヘソマガリの真骨頂なのであります。コマーシャリズムのバイラル・マーケティングに踊らされ、気が付けば節分に恵方巻、バレンタインデー、全く根拠のないホワイトデー、そして、10月にはケルト人の一部の行事をゆがめたハロウィーン等々・・・このままいけば、次は、イスラム暦に従って行われるハジの儀式などが形を変えて「ず〜っと昔からやっている祭」として「今年は〇月〇日がその日です」などというキャンペーンが行われ、気が付けば毎日がお祭りになる=結果、国が亡びる・・・と危惧してしまうのは我ながら如何なものか?と思いつつも、所詮は遊びたいだけの愚民に対して相手にとってはカエルノツラニションベンであるところの冷ややかな視線を投げるしかできません。もしかしたら、平安末期くらいに、愚生の祖先が「近頃は七草粥などといういかがわしい習慣を流行らせようとする国賊がおる」などと言っていたのかもしれませんが・・・*4

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*1:一説には関西の郭の行事であり、太巻きを男根に見立てた下品なモノであるという話

*2:実は、10年少々前に、コンビニと酢メーカーが相当なキャンペーンを張って「全国区」になったという話

*3:「二度と来るな!このクソジジィ!!」と考えているのがありありとうかがえましたが・・・

*4:恵方巻に関しては、10年前の今頃にもう少しおだやかな記事を書いておりました。