恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

1.祭囃子

2022年07月07日 | 夏の物語
 君に会えるのは、一年に一度の祭りの日。
 屋台が並び、焦げた香りが周りを包んでいる。中にある神社の鳥居前での待ち合わせ。
 君は先に来て、立っていた。髪は長くて、白色と水色の模様が入った浴衣を着ている。どこからか祭囃子の音色が聞こえてくると、君はそれに合わせるかのように鼻歌を歌った。
 屋台の前を一緒に通り、綿あめを買ってあげると喜んだ。
 山を少し登ったところにお参りするところがある。君は、手を合わせると、鈴を一回鳴らした。
 私は、美しい君の姿に見とれていた。
 人気がない所に進むと、君は笑って、すっといなくなってしまった。
 時間切れのようだった。最初のデートで行くはずだった祭り。
 病気で死んだ君は、毎年祭りの日に、鳥居の前にたたずんでいる。
 今年も会えて本当によかった。
 また来年も来るから。
 私が祭りに来る事で、供養になるかどうかは分からない。
 また、どこからか、祭囃子が聞こえてきた。

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