恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

19.走馬灯

2022年05月15日 | せつない恋
 40年ぶりの同窓会の帰り、タクシーで急に胸が痛くなり、意識が朦朧としている中で、救急病棟についた。
 
 木漏れ日の中、教室の窓から差し込む南風が心地よい。白いカーテンが揺れている。
 黒板に何かを書いている先生。隣には、レミがいた。
 ポニーティールに髪を結び、一生懸命先生の言っている事をノートに書いている。
 そういえば、レミはこんな感じで、いつも横顔ばかり見ていた。
 ちらっと私の方を見たが、目をそらした。
 
 そういえば、同窓会には来ていなかったなとぼんやりとしていると、レミが「赤ペン貸して。」と言った。
 渡すと、「ありがとう。」と言って、またノートに書き始めた。
 書き終わると、私の手に♡を落書きしてからかったように笑った。
 笑った顔も好きだった。あの時は、先輩と付き合っていたような話を聞いたことがあって、落ち込む日も多かった。
 
 先生から、レミがあてられて、黒板に答えを書いている。制服姿が懐かしい。
 窓から差し込む光で、輝いて見える。
 すぐ隣にいるのに、好きだと告白出来ぬまま大人になっていくのだろうか。
 今まで気づかなかった後悔。
 
 教室の窓側。
 南風が心地よく、大人になっても、レミが幸せならいいかなと思って、ウトウトと目を閉じた。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿