非国民通信

ノーモア・コイズミ

51番目の州から

2020-11-15 21:46:55 | 政治・国際

 とかく人に迷惑をかける側ほど「世の中が狭量になった」みたいなことを言い募るものです。そうした人は軒並み、自身の不適切な振る舞いが許容されていた過去を正当化し、自分たちは抑圧されているのだと信じています。実際には加害者でありながら、被害者意識を振りかざす――そんな人々にとってトランプは英雄であったのかも知れません。

 アメリカ大統領選もようやく全州の集計が終わり、バイデン候補の勝利が確定しました。トランプ大統領は選挙の不正を主張しますが、今に至るも根拠は一つも挙げられていません。ただトランプ支持層は専ら、根拠はなくとも不正があったと強く信じているようです。世の中には「聖書にそう書いてあるから」との理由で物事を信じる人もいるわけですが……

 トランプ大統領とその支持層は「そうであって欲しい」という単なる「願望」と「現実」を区別しません。これは新型コロナ対応でも明らかになったように現実に立ち向かう上では絶望的な姿勢でもありますが、にも関わらず内なる支持を揺らがすほどの致命傷とはなりませんでした。ただ得票数では負けても選挙人獲得数で上回った4年前と違って、今度は選挙制度の恩恵を受けられなかっただけですね。

 もし日本人にアメリカ大統領選の選挙権があったなら、どうなっていたでしょうか。トランプの先駆者とも言うべき石原慎太郎は東京都知事選で負け知らずでしたし、日本はトランプが政界を志すより遙か昔からアメリカの国益を第一に考えた外交姿勢を貫いてきたわけです。そして自分のことを他のアジア人とは別物と考える名誉白人達は何があってもトランプを支持したことでしょう。

 ヒラリー・クリントンもバイデンも至って普通の政治家であり、対するトランプは「普通ではない」政治家でした。その「普通ではない」ところに、(方向性はさておき)変革を期待した人は多かったと思います。一方でトランプのコアな支持層は、黒人が平等な扱いを求めることに被害者意識を持つ「たまたま白人に生まれただけの人」や、移民が平等な扱いを求めることに被害者意識を持つ「たまたまアメリカ人に生まれただけの人」でもありました。支持層がトランプに期待したのは変化であると同時に、田舎のアメリカ白人の既得権益を守ることでもあったわけです。

 この辺は、かつて日本で幅広い支持を集め今でも朝日新聞や民主党系の政治家から賞賛の止まない小泉純一郎を思い起こさせるものでもあります。党内の異端派として「普通ではない」ことを期待され、格差を固定化するための「改革」を推し進めた総理大臣もまたトランプの先駆者の一人と言えるでしょう。その辺を思うとトランプは――この特別な同盟国に外国人参政権でもプレゼントしておいた方が良かったかも知れませんね。

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