Smoke will be with me!

cigar, cigarette, pipe tobacco等、タバコと私の濃密な時間

グランマとの再会

2009-06-09 | Cuba
 その老婆はPunch Churchillを手に取ると、親指と人差し指で強く握った。そして私に向かって、ニタリと笑った。これはいいよ、という合図だ。ニコリでもなければニヤリでもない。ニタリという表現がぴったりだろう。蛇に睨まれたカエルの気分と言うと言い過ぎだが、二人の間には緊張した空気が流れた。このオババただ者ではない…それが顔に刻まれた皺のせいなのかはわからない。しかし、そう思わせる迫力が彼女にはあったのだ。私は迷わずそのパンチを買い、他にも数本彼女に選んでもらった。

 結局のところそのパンチはドローが悪く、100%楽しめなかった。あのオババの笑顔の解釈が間違っていたのかもしれないし、彼女もそこまで読めなかったのかもしれない。しかしその店の葉巻のコンディションは素晴らしく、きちんと巻かれてさえいれば期待を裏切らないはず。オババのせいじゃない、運が悪かったのだ。いつの日かまた、ここに戻って来よう。そう心に決めた。

 …あれから5年、私は再びHavanaを訪れた。
オババは生きているだろうか。店に行ってみた。

 店にいた女性は椅子に座ったまま接客中。客を客とも思わない態度は前と変わらない。しかし不快感よりも懐かしさを感じる。おかしなものだ。客は白人グループ。葉巻を吸うのは旅行の記念的な雰囲気で、軽めの物はどれだとか、どこでカットしてくれるのかなど、質問攻め。それほど広くない店に、オババがいないことはすぐにわかった。やっぱり死んだか…永遠に生き続けそうな雰囲気はあったが、人間は簡単に死ぬ。年齢に関係なく、誰だっていつ死んでもおかしくない。ならば弔いの意味を込めて一本灰にしようじゃないか。

 と思った時、店のドアが開き、あのオババが入って来た。どうやらランチを買って来たらしく、手には袋が下げられていた。久しぶりだね、元気そうじゃないか…と言ったところで覚えているわけがない。私は単なる旅行者の一人だ。懐かしさで一杯になりながらも言葉を飲み込み、すぐさま彼女を捕まえた。

 モンテのPetite Edomund, Juan RopezのSelection No.2... いつくかある棚、ヒュミドールを開けてもらい、自ら手に取りながら香りを確かめた。オババは時々何かを言う。すべてがスペイン語だが、何を言っているのかわかるような気がする。これは美味しい、これは強いよ。選んだ葉巻を彼女に手渡し、時々、巻きが堅いと思われる物には首を振ると、これじゃないのね、いいよ、好きなのを選んで…葉巻の前では言葉の壁なんか無い。

 調子に乗って彼女の写真を撮らせてもらった。今回は堂々正面から。

 恐ろしく歳を取っていると思っていた彼女は、なんだか若返っている気がした。
次に会えるのはいつの日か。

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3 コメント

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いいお話しですねえ。 (Pierre)
2009-06-09 10:17:51
キューバの人って長生きな印象がありますね。
気持ちの問題なのでしょうか。
仕事を持っているからなのかな。

これからもおばあちゃんが元気でいてくれますように。
確かに (taji)
2009-06-09 12:53:50
長生きの印象、大ですね。

このオババがまた、よく働くんですよ。
前回もそうでしたが、椅子に座りっぱなしなのは若い(と言っても30~40歳位)方の女性で、この人はずっと立ちっぱなしでした。
Unknown (みさき)
2010-12-11 00:34:50
すごい!と思います。