先週の読書:「カナリアはさえずる(上)(下)」「55」「救急患者X」 | 勝手に映画紹介!?

先週の読書:「カナリアはさえずる(上)(下)」「55」「救急患者X」

先週の読書:「カナリアはさえずる(上)(下)」「55」「救急患者X」

 

半年間のブランクを経て、本格的に読書を再開して約1ヶ月(再開を機に、別途ある読書ブログにアップした内容を再構成して、こちらの映画ブログにもアップするようにした)…今年は1月から5月の間に16冊しか読んでなくて、その後、半年近くはほぼほぼ小説の類を読んでなかったんだけど、11月は本日28日現在で15冊(上下巻ものとかもあったので作品数で換算すると、もう少し少なくなるけど)、1ヶ月で半年分とほぼ同じ冊数を読んでるという。また夢中になり過ぎると、急に気力がなくなったりするから気をつけなきゃな。今は無理せず程よいペースを保ってる。

 

ということで、先週は上下巻もの1作品を含む、3作品、計4冊の小説を読む。この間までは週ごとに、なんとなく“外国人作家”、“日本人作家”と別けて読んだりもしてて…また“外国人作家、海外ミステリーで攻める週”にしようかななんて、思ってたんだけど、結局、週の最後は“サクっと読めそうなものがいいな”と、読みやすそうな日本人作家を1冊混ぜてしまった。すべていつものようにブックオフの古本である…文庫は110円、単行本は220円のもの。ちなみに麻生幾の「救急患者X」は今年の3月に出たのに、もう220円だったよ。先週見つけて購入したばかり。

 

いつもは一度積読にした中から、その日の気分でチョイスして選ぶことが多いんだけど、新し目のものを古本で安く見つけた時は、新鮮なうちに“お得感を味わおう”と、優先して選ぶ傾向がオイラにはある。まぁ、だからこういうチョイスになったのかなと…。1冊目、2冊目は上下巻ものの「カナリアはさえずる」というアメリカのミステリー…真面目な女子大生が麻薬取引に巻き込まれ、そのまま警察の情報提供者(スパイ、密告屋)に仕立てられてしまうという話。優等生ゆえに、警察も悪党も手玉に取ろうとして、なかなか思い通りにいかないという感じの内容でした。

 

3冊目の「55」は…西オーストラリアの田舎町を舞台にしたミステリー。殺人鬼に拉致監禁され、殺されそうだと訴える男が警察に助けを求めてきて、その後…容疑者が捕まるんだけど、その容疑者も、“自分は被害者だ”と訴え…先に警察に逃げ込んだ男こそ、殺人鬼だという。どちらが真実を話してるのか?実際に事件を捜査する巡査部長と上司の間にも遺恨があり…物語の行方を左右。4冊目の「救急患者X」は大学病院の救急センターを舞台にしたミステリーで、ホラー要素もある。落としどころはどっちなのかも読みどころ。“推し”の1冊は「救急患者X」。

 

 

 

 

2019年1月発行のドウェイン・スウィアジンスキー著「カナリアはさえずる(上)(下)」…優等生の女子大学生が、たまたまパーティーで知り合ったイケメンのドラッグディーラー(大学の先輩)を、車に乗せて目的地まで連れて行ったら、麻薬課の刑事に目をつけられてしまい、彼女だけが逮捕されてしまう。刑事はその地区で幅を利かせている“元締め”をターゲットにしており、その下っ端のディーラーを足掛かりにしようとしていた。そしてそのディーラーを捕まえるために、女子大生がまんまと網に引っ掛かった。助けてほしければ、ディーラーの名前を吐け…。

 

刑事は簡単に情報が得られると思っていたが、女子大生は“無関係”を主張し、決してディーラーの名前を吐こうとしない。仕方がなく刑事は迫った…名前を言わないなら、情報提供者となって取り締まりに協力しろ(すなわち、そう言っておけば、根を挙げてディーラーの名前を白状すると思った)と…彼女はディーラーを差し出す代わりに、身代わりになる別の売人を自力で探し始める。中途半端に頭が良いので…なんとかなると思ったのだろう。ディーラーの名前を、密告するだけでよかったのに…意固地になって、それを拒み続けた結果、ドツボにはまっていく。

 

そもそも彼氏でもなんでもないんですよ…作中でも本人が何度もそこは“強調”してたし…なのに、なんでそこまでディーラーに肩入れするのかというのが疑問。とっとと名前を刑事にチクって、自分は無罪放免になりゃいいだけじゃないかって思うのだが、とりあえず上巻に関しては、なんかスッキリしない気持ちで、読み進めた。刑事から“優等生”という愛称で呼び続けられるくらい、確かに“頭の回転が速い少女”なので、凡人とは思考が違うんだろうなと漠然と納得して…。下巻はドツボから抜け出すための一発逆転を狙った主人公の行動が開始される。

 

上巻時点では、主人公の視点に関しては、“死んだ母親に語り掛ける体の一人称”で、ほかの視点が三人称というのが、作品の特徴でもあったんだけど…下巻の途中で、主人公の視点も三人称になると。しかも、名前ではなく…あえて情報提供者のコードネームで描写されるなど意味深で思わせぶりな部分もあったんだけど、特に叙述的な驚きがあるわけでもなく、肩透かしに終わる。下巻に入った途端、麻薬取引関係の裏社会の人間が急に色々と出てきたりして作風も若干、変わったようにもオイラは思ったし、なんだったら全編このテイストで読みたかった。

 

上巻を読んでる時は、若干、コミカルな印象も抱いていたし、ぶっちゃけ、この女子大生視点の文章を読むのが、けっこう辛かった…話もなかなか進まないし。原文が悪いのか、翻訳が悪いのかなんてぶータレながら読んでたんだけど、上巻を読み終わる頃には、文章にも慣れ、楽しめる余裕は出てきたかな?そこまで劇的に描かれてないものの、“病気で死んだ母親”に壮絶な過去があったり、なるほど…この変な正義感からくる主人公の巻き込まれ体質も遺伝なのかなと、下巻でだいぶキャラに対しての印象も変わった。結末は想像以上にハードだった。

 

 

 

2019年12月発行のジェイムズ・デラーギー著「55」…西オーストラリアの田舎の警察署に、男が助けを求めてやって来る。拉致監禁された挙句に殺されかかったところを、間一髪で逃げ出してきたと。男は、犯人の容姿や名前を克明に説明、さらには自分が“55番目”だという奇妙な宣告を受けたらしい。署内で一番偉い巡査部長は連続殺人の可能性も視野に入れ、男から事情を聴くのだが…しばらくして、犯人と目される男にソックリな人物が、別件で捕まる。そしてその捕まった男は、先の男が供述した内容を、人物を入れ替え、自分こそ被害者だとして訴える。

 

いったいどちらが真実を述べているのか?巡査部長は本部へ事件の詳細を報せ、巡査部長よりも階級が上の上司が…都会からやって来るんだけど、実はその上司も同じ田舎町の出身。かつては友人であり、同僚だったこともあって、“ある出来事”をきっかけに、仲違いし、犬猿の仲になっていた。現代の“奇妙な事件”を追いつつ、過去にあった巡査部長と上司の遺恨の原因も紐解かれていく…。2人の男、どちらが本当のことを言っているのか?作中では共犯説、はたまた別人説、別の共犯がいる説など様々な可能性も指摘され、いったい何が正しいのか?

 

そして“55番”が意味するものとは?容疑者の1人が名乗る名前で…“こういう方向のネタじゃないかな?”と薄々と感じてはいて、直観だけど、“こっちの男”が怪しいなって推測はできたよ。クソ野郎なかつての親友であり上司の思わせぶりな言動で、彼が隠している事柄なんかもなんとなく想像できた。後半は、枝葉に見えた伏線がしっかり一つにまとまって…2人の関係にも色々と変化が訪れたりする。最後のまとめが“かなり強引”な感じがしないでもないが、想像してたよりも後味の悪い結末でビックリした。映画で喩えると「セブン」みたいなどよ~ん感だな。

 

 

 

2021年3月発行の麻生幾著「救急患者X」…書籍化は今年になってだが、もともと2004年から2011年にかけて幻冬舎の月刊小説誌に連載されていた作品だそうで、それに加筆修正を加えたもの。ということは、連載開始から17年、連載終了からでも10年掛かって1冊の本にまとまったものだと考えると、なんか色々と感慨深いものがある。麻生幾は、過去に電子書籍で出ていた短編を読んだことがあり、あとは「宣戦布告」「外事警察 その男に騙されるな」といった映像作品の鑑賞経験があるんだけど、ちゃんと単行本で向き合うのは初めてかもしれないなぁ。

 

この書籍自体は190ページしかないので、麻生幾という作家の入門編としてちょうど良かったかも。大学病院の救急センターが舞台、度重なる身元不明患者、通称“X”の搬送と、院内で続発する怪談めいた不可思議な事件。ナースたちの噂話に耳を傾けながらも、自分は“科学者だ”と自負するクールなチームリーダーの男性医師が、緊急性の高い過酷な治療に挑みながら、“事件”の真相に迫っていく。基本は病院外のことが描かれるわけでもなく、専門用語が飛び交い…海外ドラマの「ER 緊急救命室」でも見ているような、わりとリアルな描写が多い。

 

読んでるだけで、消毒液の匂いがしてきそうな錯覚…大怪我して、こういうところにお世話になりたくないななんて想像しながら読み進めるんだけど、その一方で…トイレの鏡に現れ、消滅する“血文字”など非現実的な展開もあり、最終的な落としどころはどっちなのだろうか?となる。サクっと読めちゃうボリュームではあるが、書籍化まで時間が掛かっている著者渾身の作品だけあり、読後の満足感は高め。ホラーっぽい不気味さ、真相が解る爽快感、大学病院の内情を描いた社会派っぽい雰囲気もありつつ…最後にはホッコリした感動も。けっこう面白かったよ。






 

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