『因業探偵リターンズ 新藤礼都の冒険』小林泰三著を読む。
推理力とルックスは最高、でも性格は最低。腕利きの探偵・新藤礼都は探偵事務所の開業資金を貯めるために、今日もまたアルバイトへ。そのアルバイトが『因業探偵 新藤礼都の事件簿』より、えぐくなっている。彼女は事件を求めて自ら飛び込む。
『ユーチューバー』
近所に警察関係者が張り込んでいることを知った、フリーのジャーナリスト、忠城勝(ただしろまさる)。撮影してその映像をテレビ局に売れば金になる。しかし、どうやって撮影すればインパクトのある映像が撮れるだろう。
思案しているところへ礼都、参上。ユーチューバーと名乗る。名乗るだけに本格的な撮影ができるカメラを持っている。二人の駆け引きが始まる。秘密裡にすすめたはずが、犯人に隠し撮りがばれる。襲われる忠城。その模様をライブ配信する礼都。抜け目ない。視聴回数は、うなぎのぼり。
『メイド喫茶店員』
メイド喫茶で働いている笹林恭子。彼女には子どもがいた。いわばヤンママメイド。彼女が新人を指導することになっていた。その新人こそ礼都だった。恭子は礼都を一目見るなりメイドではなく女王様タイプだと見極める。「ご主人様」があらわれた。
恭子のおともで礼都も施術室に入る。若い男はハグではなくビンタをリクエストした。店を間違えている。容赦なく礼都が殴る。男は顎を骨折した。秘密にしていた子どものことが客にバレている。とあるブログにそのことが書かれていた。誰が。さらに自宅に
帰っていない恭子。子どもの消息を案じた礼都は。
『マルチ商法会員』
「ダイナミックスタディ」教材説明会で講師をする河津桜。そこへ彼女の下位会員である礼都が新たな会員候補を連れてくる。礼都は成績優秀なのだが、何か違和感を覚える。礼都が子ども連れの女性といた。子どもを預けないと「プログラムに参加できない」。耕治という男児は問題児でどの保育園でも預かってくれない。唯一、礼都には従順なのだ。猛獣使いか。行きがかり上、河津桜が耕治を預かることに。子どもなのにとんでもない暴力をふるう。我慢の限界を越えた河津桜の逆襲。外に助けを求める耕治。実はマルチ商法にダマされた家族からの依頼だったという。
『ナンパ教室講師』
浪人中の「僕」。成績は優秀。東大の法学部と医学部、どちらに進学するかで悩んでいる。ある日、電車から「ナンパ大学」という看板を見る。勉強ばっかしていた僕。女性と付き合うことなんですっかり忘れていた。受講料を支払う。生徒は「サラリーマンとホストとチンピラと教師と浪人生」。三十代の美人が教室に。講師は、新藤礼都と名乗る。教えはシンプル。「ナンパされたい女性を狙え」。早速、僕は礼都を追う。僕に興味があるようだし。なぜか彼女は僕の両親に会いたがって自宅へ。父も母もずっと寝たきりだった。本当は若くなかった僕。寒くなる結末。
『鶯嬢』
市会議員選挙で川里候補者の鶯嬢のアルバイトを始めた新藤礼都。事務局長の山代が彼女にお熱で「ブランドもののハンドバッグ」をプレゼントする。選挙カーを運転中に事故に遭う。「事故の衝撃」で礼都は幽体離脱、ドッペルゲンガーする。彼女は川里の肉体に幽閉されてしまった。選挙で交通事故は完全にアウト。不死身の礼都。賄賂の件も明るみに。
『探偵補佐』
探偵事務所を開いている「俺」は、礼都を時給のアシスタントで雇っている。同業だけに彼女の優秀さは認める。なぜ、補佐役をしている。「医療過誤の調査」の仕事を依頼される。依頼人の娘がケガをした。医師は「切り傷に消毒処置をして、抗生剤を処方した」。まもなく「娘の体に異変」が。依頼人が懇意にしている医師によると消毒液や抗生剤によりそうなったと。いきり立つ依頼人。しかし礼都が調べると懇意にしている人は正式な医師ではなかった。怪しげな民間療法。礼都は「呪術師」と。呪術師と闘う探偵。で、意外な結末。ああそうきたかと。
